原子力発電所の放射線安全を支える 謙虚かつ厳格な姿勢で

vol.11

日本原子力発電 東海発電所・東海第二発電所
安全管理室 放射線・化学管理グループ 主任

藤井 裕さん

原子力発電所の放射線管理は、現場作業を支える重要な仕事だ。発電所で働く作業員が受ける放射線量をできる限り低減させるため、プラントの放射線環境を正確に把握し、作業に応じた防護措置や防護装備を指示する役割がある。

また、放射線管理区域のエリア設定をはじめ、発電所で働く作業員ごとの線量管理、放射性廃棄物の管理、発電所周辺の環境試料のサンプリング・測定、放射線計測器のメンテナンスのほか、放射線管理区域で使用する防護服の提供・洗濯など、放射線管理の業務範囲は驚くほど幅広い。

長年、放射線管理業務に携わる藤井は、「作業員に過剰な被ばくをさせないこと」を使命として自らに課す。「やむを得ないとは思わず、いかに線量を低減できるか。満足することなく、日々継続して取り組まなくてはならない」と心がける。

五感では感じることができない放射線を正確に測るスペシャリストとして、単なる測定結果の伝達にとどまるのではなく、結果から得られる放射線情報を適切に伝えるスキルにも磨きをかける。

そして、放射線管理を切り口にしたプラント情報を発電所で働く作業員に提供し、発電所の円滑な運営をサポートする「サービス業」に徹する。一方、発電所の放射線管理手順の遵守を厳しく律する「マネジメント業」の役割も担う。謙虚かつ厳格な姿勢で発電所の放射線安全を支え続けている。

東日本大震災の当日、約400人の作業員が放射線管理区域で作業中だったが、停電で真っ暗になった所内に閉じ込められないよう、人波に逆らって仲間とともに発電所に乗り込んだ。「安全に、しかも放射性物質を発電所の外に持ち出さないよう、なんとか早く退域させなければ」との一心だった。作業員の落ち着いた行動もあって、津波の到来までに無事退避を完了させることができた。豊富な放射線管理の経験に基づき、冷静に対処し発電所を支え続ける藤井の姿がそこにはあった。

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