SPECIAL
ISSUE

2017.03

原子力の安全性向上に向けた取り組み

原子力事業者(電力9社、日本原子力発電、電源開発、日本原燃)は、福島第一原子力発電所の事故を教訓として、原子力発電所などにおける安全対策の強化に取り組んでいます。事故を契機に強化された新しい規制基準をクリアすることはもとより、原子力事業に関わるハード・ソフト両面で自主的な安全対策の充実を図り、リスクの低減と安全性向上へ不断の取り組みを進めています。

原子力発電所の安全性向上対策

地震と津波に備える

大地震からの安全を確保するため各発電所では、ボーリング調査や敷地内の断層の活動性を調べるトレンチ調査など、詳細な地質・地下構造の調査を実施。調査結果で得られたデータや最新の知見を活用し、想定される最大級の地震動を再確認するとともに、必要に応じて施設や配管など設備の耐震補強工事に取り組んできました。
津波対策については、最新の科学的知見、各種のデータを用いて、想定される最大級の津波の高さを割り出し、最大津波を超える高さの防波壁などを建設。さらに、万一、発電所の敷地内に津波が浸入した場合にも、原子炉建屋に防水機能に優れた水密扉を設置するなど、重要な設備が浸水しない対策を施しています。

重大事故を防ぐ

過酷事故(シビアアクシデント)への対応策として、非常用電源や冷却機能の多重化などを進めています。電源対策としては、高圧発電機車の複数台配備や送電ルートの多重化。冷却機能の確保としては、可搬型の給水ポンプなどの配備や水源の多様化を図っています。
また、原子炉格納容器の破損・水素爆発を防止する対策として、原子炉格納容器内に水素を処理する「水素再結合装置」を設置するとともに、放射性物質を捕捉した上で圧力を外部に逃がす「フィルタ付ベント設備」などを導入していきます。

自主的・継続的な取り組み

緊急事態への対応能力の向上

原子力事業者は、原子力発電所などで重大な事故が発生した場合に備え、緊急事態支援体制を整備しています。その活動拠点として、 2016 年12月に「美浜原子力緊急事態支援センター」を福井県美浜町に開設しました。

経営トップによるリスクガバナンスを強化

また、原子力事業者は、経営トップが強い決意のもと、自ら原子力のリスクと向き合って対処する、リスクガバナンスを強化しています。
原子力産業界全体の取り組みとしては、「確率論的リスク評価(PRA)」の考え方や、電力中央研究所原子力リスク研究センター(NRRC)が保有する安全対策上の知見などを活用し、安全性の一層の向上に取り組んでいます。さらに、社内の原子力安全監視機能の充実を図ることはもとより、原子力安全推進協会(JANSI)によるピアレビュー(相互評価)なども取り入れ、原子力発電所の実態を外部からの視点で評価してもらい、提言・勧告を取り入れていきます。