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2016.11

巨大津波に備える

原子力発電所の重要な安全対策として、津波への備えがあります。その代表例が、発電所敷地内への津波の浸入を食い止める防波壁です。
太平洋に面した中部電力浜岡原子力発電所の前面には、海抜12~15mの天然の砂丘堤防が存在していますが、福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえ、さらなる安全性の向上のため、敷地内に海抜22m、総延長約1.6kmの長大な防波壁が建設されました(上写真、図2-①)。
この防波壁は、深さ10~30mの岩盤中から立ち上げられた基礎部分の上に、鋼構造と鉄骨・鉄筋コンクリートで築かれた堅固な構造で、内閣府が想定する最大クラスの巨大津波に対しても、発電所を浸水から守ることができます。また、防波壁の両端に整備された改良盛土(海抜22~24m)は、まわり込む津波をせき止めます。

図1:防波壁および改良盛土(イメージ)

さらに、浜岡原子力発電所では、敷地内への浸水防止対策として、冷却水を海から取り入れる取水槽の周囲に、高さ4mの「溢水防止壁」(写真①、図2-②)が設置されました。
冷却水を取り入れる取水路はトンネルで海とつながっており、津波の際には圧力により敷地内の取水槽の水位が上昇してあふれ出る可能性があります。これをせき止める役割を果たすのが溢水防止壁です。壁面には、取水槽側にだけ開く可動式の「フラップゲート」(写真②)が設けられており、仮に防波壁を越えて発電所敷地内に津波が浸入した場合でも、海水を取水槽側に速やかに逃がす工夫が施されています。

  • 写真①:取水槽および溢水防止壁

  • 写真②:フラップゲート

一方で、浜岡原子力発電所では、万一、津波が防波壁を越えて敷地内へ浸入した場合でも、建物内への浸水を防ぐための対策として、防水機能を持つ水密扉(図2-③)とその外側を覆う厚さ約1m、重さ約40tの強化扉(写真③、図2-④)が設置されました。
また、津波による浸水によって屋外の海水取水ポンプの機能が失われた場合においても、原子炉を安定して冷却することができるよう、防水構造の建屋内に同様の機能を持つポンプを収納した「緊急時海水取水設備」(写真④、図2-⑤)を設置しました。

  • 写真③:強化扉

  • 写真④:緊急時海水取水設備

このように、原子力発電所では巨大津波による設備への浸水を防ぐため、様々な角度から何重にも対策を施しています。

図2:浜岡原子力発電所の津波対策(イメージ)