COVER
PHOTO

2018.03

3号機のオペレーティングフロア※1
写真提供:東京電力HD

福島第一原子力発電所の現状

福島第一原子力発電所の事故により、広く社会の皆さまに、今なお、多大なご迷惑とご負担、ご心配をおかけしておりますことを、心よりお詫び申し上げます。2018年3月11日で東日本大震災から7年を迎える現地の状況をお伝えいたします。

中長期ロードマップを改訂

2017年9月、「東京電力ホールディングス(HD)福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」が、約2年ぶりに改訂されました。目標工程全体の枠組みは維持しつつ、廃炉作業の進展によって明らかになった現場の状況などを踏まえ、初号機の燃料デブリ※2取り出し方法の確定時期などを変更。同発電所では、放射性物質によるリスクから、人と環境を守るため、このロードマップに沿って、安全確保を大前提に廃炉作業に取り組んでいます。

出典:廃炉・汚染水対策チーム会合事務局会議資料より作成

※1 定期検査時に、原子炉上蓋を開け、炉内燃料取替や炉内構造物の点検等を行うフロア
※2 原子燃料や燃料被覆管、原子炉構造物などが溶け落ち冷えて固まったもの

燃料取り出し作業の進捗

1~4号の各号機とも、放射性物質の飛散は抑制されており、安定冷却を継続。使用済燃料プールからの燃料取り出し作業が着実に前進しています。

1号機

2023年度の燃料取り出し開始に向けて、建屋最上階のオペレーティングフロアのガレキ撤去を2018年1月に開始。引き続き、放射性物質の飛散抑制対策を行いながら撤去作業を進め、2021年度末までに完了する予定です。

2号機

2017年2月に、オペレーティングフロアへアクセスする作業用構台が設置されるなど、2023年度の燃料の取り出し開始に向けて、建屋上部の解体準備が進められています。

3号機

2018年度中頃の燃料取り出し開始に向け、準備が本格化しています。オペレーティングフロアでは、水素爆発により崩落した屋根や壁などのガレキの撤去、床面の除染や遮へい体設置により、短時間での有人作業ができる状態まで放射線量が下がりました。2017年11月には、使用済燃料プール内のガレキ撤去や燃料取り出し作業を行う燃料取扱機とクレーンを設置。放射性物質飛散を防ぐための燃料取り出し用カバーの設置工事も、2018年2月に完了しています。

4号機

全ての燃料の取り出しが2014年12月に完了したことから、燃料によるリスクはなくなりました。

燃料デブリの取り出し

2021年内の初号機の燃料デブリの取り出し開始に向けて、原子炉格納容器内の状況把握が行われています。2018年1月には、2号機の原子炉格納容器にカメラを挿入し、内部調査を実施。容器底部に燃料デブリと思われる小石状の堆積物が確認されており、撮影した画像の分析を進めています。

放射線量の低減と労働環境の改善

30~40年に及ぶ廃炉事業の完遂に不可欠な、作業員の安全確保と労働環境の改善にも取り組んでいます。

ガレキ処理や土が露出した部分を舗装するフェーシング工事などにより放射線量の低減を図った結果、簡易マスクと一般作業服での作業が可能なエリアが構内面積の約95%まで拡大。放射線量に応じて作業時の防護装備を適正化することで、作業時の負荷軽減による安全性と作業性の向上を図っています。

一般作業服エリアが構内の95%に拡大

出典:東京電力HDホームページより作成

また、2015年5月には、約1200人収容できる大型休憩所が開設され、その後、コンビニエンスストアやシャワールームも利用可能になるなど、労働環境は大きく改善。休憩所では、大熊町の「福島給食センター」で作られた、福島県産の食材を使用した温かい食事が提供されています。

さらに、2017年5月には敷地内でドクターヘリが離発着するためのヘリポートの運用を開始し、万一の場合の救急搬送体制を強化しました。

汚染水対策

3つの方針に従って、重層的な汚染水対策が進められています。

方針1 汚染源を取り除く

タンクに一時保管していた高濃度汚染水については、多核種除去設備(ALPS)などを使ってほとんどの放射性物質を除去し、2015年5月に浄化処理を完了しました。

方針2 汚染源に水を近づけない

原子炉建屋等への地下水流入による新たな汚染水の発生を抑制するため、地下水バイパスや建屋周辺の井戸(サブドレン)からの地下水の汲み上げなどを実施しています。
加えて、1~4号機の周囲に凍土方式の遮水壁を設置し、2016年3月より順次凍結を進め、2017年8月には最後に残った部分の凍結を開始しました。現在は、ほぼ全ての範囲で地中温度が0℃を下回っています。
これらの対策により、建屋への地下水流入量は、対策前の400㎥/日程度から100㎥/日以下(2018年1月時点)と大幅に減少しています。

方針3 汚染水を漏らさない

汚染水を海に流出させないための海側遮水壁が、2015年10月に完成。港湾内の海水中の放射性物質の濃度が低下しました。

出典:東京電力HDホームページより作成

福島復興への取り組み

2017年春までに帰還困難区域を除く多くの区域で避難指示が解除され、避難指示区域は、県全体面積の約2.7%まで縮小しています。帰還困難区域についても、政府が復興・再生に向けた環境整備を重点的に取り組むとして、双葉町、大熊町、浪江町で「特定復興再生拠点区域復興再生計画」の認定を受けており(2018年2月22日時点)、道路や上下水道などインフラ復旧、除染などが一体的に進められる見通しです。

2017年10月には、JR常磐線の運休区間のうち竜田駅(楢葉町)~富岡駅(富岡町)が運転を再開、2019年度末までの全線開通を予定するなど、交通インフラの復旧も進展しています。

「Jヴィレッジ」再開へ

震災以降、福島第一原子力発電所の事故対応拠点となり営業を休止していた「Jヴィレッジ」(楢葉町、広野町)は、2018年7月28日に、一部再開することが発表されました。2019年4月には、日本最大規模の全天候型練習場など、世界トップクラスの施設を有するナショナルトレーニングセンターとして、全面再開することを目指し、引き続き整備が進められます。2020年に開催される東京2020オリンピック・パラリンピックのサッカー男女日本代表の合宿地に決定し、2019年のラグビーワールドカップの合宿誘致も進められています。
施設の全面再開に合わせて、Jヴィレッジ近くにJR常磐線の新駅を設置する構想も検討されており、新生Jヴィレッジには、地域の復興・再生を牽引する役割も期待されています。

官民で風評対策を強化

このように復興に向けて着実に歩みを進める一方、科学的根拠に基づかない風評が根強く残っていることから、政府は2017年12月、「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」を策定し、国民に広く福島県の現状を伝え、放射線への正しい理解を促すための対策に乗り出しました。
東京電力HDも2018年1月末に「風評被害に対する行動計画」を策定するとともに、2月1日付で福島復興本社に「ふくしま流通促進室」を設置し、風評払拭に向けた取り組みを強化しています。

東京電力HDでは、これまでも、企業内マルシェや首都圏小売業者とのタイアップイベントの開催、風評払拭の志を持った企業で構成する「ふくしま応援企業ネットワーク」(会員101社、2018年2月1日時点)などの活動を通じて、風評被害の払拭と県産品の利用拡大に取り組んできました。引き続き、国・県とも連携しながら、これらの活動を拡充するとともに、福島第一原子力発電所に関する情報発信や放射線に関する理解活動の推進、農業・水産業関係者との協業などにも取り組んでいくこととしています。

新生Jヴィレッジ(施設再整備後のイメージ)
画像提供:福島県エネルギー課