FOCUS

2016.11

原子力緊急事態の対応を支援する新たな拠点施設が運用開始へ

私ども原子力事業者(電力9社、日本原子力発電、電源開発、日本原燃)は、万一、原子力災害が発生した場合でも、迅速に対応できるよう支援体制を整備しています。

要員の養成や資機材の充実を進めています

私ども原子力事業者は、東京電力福島第一原子力発電所の事故対応を教訓として、2012年に「原子力緊急事態支援組織」の設置を決定し、日本原子力発電を実施主体として原子力災害への支援体制の整備を進めてきました。
2013 年には、日本原子力発電敦賀総合研修センター内に遠隔操作ロボットなどを配備した「原子力緊急事態支援センター」を開設。高い放射線量のもとでも復旧作業に取り組むことができる体制を構築するため、これまでに延べ約530名の原子力事業者の担当者に対して、障害物除去などのロボット操作訓練を行うとともに、17発電所に出向き、延べ約50回の防災訓練にも参加して、要員の養成を進めてきました。
緊急時には、資機材や要員を派遣するとともに、発災事業者と協力し、ロボットを使って現場の対応を支援します。
原子力緊急事態支援センターでは、365日24時間の連絡体制や緊急出動体制を整備したほか、必要な資機材の調達・維持管理も進め、万一の事故発生に備えています。

  • 遠隔操作ロボットの操作訓練の様子

  • ロボットには各種計測器(放射線、温度など)を搭載することができる

新しい拠点施設「美浜原子力緊急事態支援センター」の本格運用を12月17日に開始します

こうした支援内容をさらに充実させるため、12月17日、福井県美浜町において新たな拠点施設「美浜原子力緊急事態支援センター」の本格運用を開始します。
約26,000㎡の敷地内にはヘリポートのほか、事務所棟や資機材保管庫・車庫棟、屋外訓練フィールドを設置。遠隔操作により屋内外の情報収集や屋内障害物の除去などが可能なロボット8台(小型6台、中型2台)に加え、放射線防護用資機材や除染用資機材、資機材搬送用の大型トラックなどを整備します。さらに、高所からの放射線量の測定を含めた情報収集を行う無線ヘリコプターや、障害物の除去を行う無線重機なども新たに配備するとともに、要員を増強し、業界一丸となった、ハード面・要員面での緊急事態支援体制・機能を強化します。
私ども原子力事業者は本センターを緊急事態支援の新たな拠点として、原子力災害時の対応力の一層の向上を図るとともに、引き続き、対策の充実に向けた取り組みを行ってまいります。

「美浜原子力緊急事態支援センター」完成予想図 (2016 年12月17日 運用開始)

着実な事業の実施に向けて「使用済燃料再処理機構」が発足しました。

原子燃料サイクルの要となる再処理など※の業務を行う国の認可法人「使用済燃料再処理機構(再処理機構)」が、10月3日に新たに発足しました。再処理機構では、外部有識者が多数を占める「運営委員会」が設置され、様々な知見を取り入れながら再処理などの業務を進めていくことになります。

※再処理、MOX燃料加工、再処理に伴い発生する放射性廃棄物の貯蔵・管理

新たな環境下でも事業が着実に実施される仕組みが整備されました

国のエネルギー基本計画では、エネルギー資源に乏しい日本におけるウラン資源の有効活用や、放射性廃棄物の減容化・有害度低減のため、使用済燃料の再処理を推進していく方針が明記されています。再処理などの事業は従来、こうした国の方針のもと、原子力事業者が出資する民間企業の日本原燃が実施してきました。
一方で、電力小売全面自由化など電力システム改革の進展により、事業者の経営環境は大きく変化しています。このため、新たな事業環境下でも再処理などの事業が着実かつ効率的に実施されるよう、国の認可法人である再処理機構が設立されました。再処理機構の意思決定主体として、外部有識者が多数を占める「運営委員会」が設置されるとともに、認可・承認などを通じて国が業務運営に対して一定の関与を行うことにより、事業全体のガバナンスが強化されます。
なお、再処理工場などの建設や運転・保守に関するノウハウ・人材が日本原燃に蓄積されていることから、再処理機構は、再処理などの事業を日本原燃に委託することとします。(図1参照)

出典:資源エネルギー庁資料をもとに作成

また、事業に必要となる資金について、これまでは原子力事業者が外部の資金管理法人に積み立ててきましたが、今回これが廃止され、原子力事業者が再処理機構に必要な資金を納付する「拠出金制度」が新たに創設されました。
拠出金制度では、再処理機構が事業全体の費用を精査するなどして毎年度の拠出金単価を決め、原子力事業者に通知し、納付を受けます。原子力事業者には拠出金の納付が義務付けられていることから、再処理機構は電力市場での競争進展など事業者の経営環境の変化に左右されることなく、必要な資金を着実に確保することができます。(図2参照)

出典:資源エネルギー庁資料をもとに作成

地域との信頼関係を大切に事業に取り組みます

日本原燃は、30年以上の長きにわたって、原子燃料サイクル施設が立地する青森県、六ヶ所村のご理解とご協力をいただきながら、事業を推進してきました。私ども原子力事業者としては、再処理機構の発足後も、地域の皆さまとともに築き上げてきた信頼関係を大切にしていく考えに変わりはなく、引き続き安全確保を大前提としながら、再処理をはじめとする原子燃料サイクル事業に取り組んでまいります。

使用済燃料再処理機構のホームページ