FOCUS

2017.05

新しい固定価格買取制度(FIT)がスタート
~再エネ普及と国民負担抑制へ~

太陽光発電や風力発電などの普及を目的とした「再生可能エネルギー特別措置法(FIT法)」が改正され、4月から新しい「固定価格買取制度(FIT)」がスタートしました。

FIT開始以降再エネ導入量2.6倍に

FITは、太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスで発電した電気を、電力会社が一定期間、一定価格で買い取ることを国が約束する制度です。2012年7月の制度開始以降、再生可能エネルギー(再エネ)設備の導入量は、大幅に拡大しており、累計の設備容量でみると制度開始時点と比べ約2.6倍となりました。(図1)

FITでは、再エネ電気の買い取りに要する費用を、電気のご利用者から広く集めた「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」でまかなっています。コストが高い再エネの普及を国民全体で支える仕組みです。再エネ賦課金は、全国の再エネ発電設備導入量や販売電力量見通しなどから国が毎年決定する単価をもとに算定され、毎月の電気料金と合わせて電気のご利用者から集められています。(図2)

FIT開始後は、開発期間が比較的短い太陽光発電設備の建設が盛んになり、再エネ発電設備の導入が一気に進みましたが、その一方で国から事業認可を受けた後も計画どおり発電を開始できないプロジェクト(未稼働案件)が出てきたり、再エネ賦課金が急増したりといった課題も指摘されるようになりました。

特に、全国の再エネ賦課金の総額は17年度に約2兆1400億円に達する見通しで、制度が開始された12年度と比べておよそ16倍の水準まで増加しています。これを、標準家庭の負担額でみると、1か月の電気の使用量を260kWhとした場合、 17年度は月額686円となり、12年度の月額57円から大幅に増加しています。なお、2030年度の買取費用は、3.7兆円~4.0兆円に増加すると試算されています。(図3)

出典:資源エネルギー庁資料より作成

出典:資源エネルギー庁資料より作成

制度改正でバランスのとれた普及へ

今回の法改正は、こうした状況を踏まえ、「再エネ発電事業者の計画を国が認可する事業認定制度の導入」「電源ごとの中長期的な価格目標の設定」「入札制度の導入」などにより、未稼働案件への対応や賦課金の急増といった課題の解決を目指すものとなります。
再エネは、環境性に優れた国産エネルギー源の一つであり、エネルギー自給率の向上にも寄与することから、今後の最大限の導入と国民負担の抑制の両立を目指す新たなFIT法は重要な施策であると考えています。
一方で、太陽光や風力などは出力が一定ではなく、立地地域が偏在しているといった課題もあります。
このため、私ども電気事業者は安定供給面への影響などを含め、導入拡大に伴う様々な課題に関わる技術的な検証や対応策の検討などに引き続き取り組んでまいります。

ガス小売全面自由化がスタート

都市ガス販売の全面自由化が4月にスタートしました。全国の都市ガスのお客さま数は約2658万件で、このうち2537万件以上を家庭用が占めます。都市ガス販売は、すでに年間10万m3 以上のガスを使用する工場などの大口分野(市場全体の約6割)が自由化されていましたが、4月からは家庭などでも、都市ガス会社以外の事業者からガスを購入することができるようになりました。
3月末までに電力会社やLPガス(液化石油ガス)会社など45事業者がガス小売事業者に登録しており、このうち12事業者が新たに一般家庭へガス販売を行うことを表明しています。
新規参入企業は、主に都市ガス会社の導管を使ってガス販売を行います。安全面に配慮して、ガス管の点検や緊急対応といった保安・管理はこれまでどおり都市ガス会社が行います。
私ども電気事業者は、都市ガスの原料となるLNG(液化天然ガス)を取り扱う事業者として、今回のガス小売全面自由化を「総合エネルギー企業」に発展していくための重要な起点になると捉えております。

出典:ガスシステム改革小委員会資料より作成

高レベル放射性廃棄物 地層処分の理解促進へ

国は、高レベル放射性廃棄物の地層処分について、全国の皆さまに関心や理解を深めていただけるよう、地域の地下環境などの科学的特性を「科学的特性マップ」として、全国地図の形で客観的に示す方針です。
この科学的特性マップについては、総合資源エネルギー調査会に設置された「放射性廃棄物ワーキンググループ」、「地層処分技術ワーキンググループ」で、専門家による議論が重ねられ、マップを提示するための要件・基準が4月にとりまとめられました。
科学的特性マップでは、火山活動や断層活動といった自然現象の影響や、将来掘削の可能性がある地域は「好ましくない特性があると推定される」と整理。こうした要件・基準に一つも該当しない地域は「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い」、その中でも海岸から近い地域は「輸送面でも好ましい」と区分されます。
科学的特性マップの提示は、今後地層処分を進めていく上で重要な一歩であることから、マップ提示前に、国と原子力発電環境整備機構(NUMO)は、全国で国民、自治体向け説明会を開催し、マップが処分場所の候補地を示すものではないといったことなどを丁寧に説明していく予定です。

出典:放射性廃棄物ワーキンググループ資料などを参考に作成

杤山 修(とちやま おさむ)・地層処分技術ワーキンググループ委員長のコメント

科学的特性マップの提示は、これを使って処分地を決めるものでも、廃棄物を押し付けるものでもありません。地層処分が可能な条件、ふさわしくない条件を示し、理解を深めてもらうのが目的です。対話を重ねて、処分に協力いただけるパートナーを求めていくことなど、地層処分への理解が進むことを期待しています。