FOCUS

2017.07

この夏の電力需給対策について

家庭やオフィスでの冷房使用などにより、夏季は電力需要が大幅に増加する季節です。今夏(7~9月)の電力需給見通しについては、10年に1回程度の猛暑になった場合でも、各エリアとも安定供給に最低限必要な供給予備率3%以上を確保できる見込みです。政府による特別な節電要請も見送られましたが、私ども電気事業者としては引き続き、電力の安定供給に向けて、省エネ情報の提供や火力発電所をはじめとした設備全般の保守の強化など、需給両面において最大限の取り組みを行ってまいります。

供給予備率3%以上を確保

政府の「電力需給に関する検討会合」は5月、2017年夏季の電力需給対策を決定しました。その結果、各エリアとも安定供給に最低限必要な3%以上の供給予備率を確保できる見通しです。
供給面において、電力各社では、発電機の補修工事を比較的需給に余裕がある春や秋に集中して実施することで、計画的に夏季・冬季の補修量を抑え、高需要期の供給力確保に努めています(下図参照)。
また、今回の電力需給見通しには、引き続きお客さまの節電へのご協力を織り込んでいますが、これに加えて、ピーク時間帯の需要抑制に効果が期待されるデマンドレスポンス※など需要面での対策にも取り組むことで、電力の安定供給に努めてまいります。

※デマンドレスポンス:需給ひっ迫時などにお客さまに電気の使用を抑制していただき、電力需給を調整する仕組み

出典:総合資源エネルギー調査会電力・ガス基本政策小委員会「電力需給検証報告書」(2017年4月)

火力発電の比率は81%に

東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、原子力発電所の停止が長期化していることにより、電力供給は運転開始から長い年月が経った火力発電設備も活用せざるを得ない状況が続いています。この結果、電源構成における火力発電の比率は2016年度(推計値)で81%を占めており、第一次石油ショック時の比率に匹敵する値となっています(下図参照)。
エネルギー自給率が7%(2015年度推計値)※と極めて低く、ほとんどの化石燃料を海外からの輸入に頼る日本のエネルギー供給構造は、中東における政情不安などの国際情勢の影響を受けやすい状況にあります。
また、2015年度の1kWhあたりのCO2排出量は、再生可能エネルギーによる発電電力量の増加や一部の原子力発電所の再稼働により、前年度より改善したものの、震災前の2010年度との比較では、依然として約5割増の水準となっており、地球温暖化問題への対応も課題となっています。
エネルギー資源に乏しいわが国においては、エネルギーセキュリティの確保や地球温暖化対策、さらには安価で安定した電気をお届けするという観点からも、安全の確保を前提に、準国産エネルギーである原子力発電の果たす役割は大きいものと考えています。

※エネルギー白書 2017(6月2日閣議決定)

出典:1973年度・2010年度は総合資源エネルギー調査会電力・ガス基本政策小委員会「電力需給検証報告書」(2017年4月)、
2016年度は電力広域的運営推進機関「平成29年度供給計画のとりまとめ」(2017年3月)をもとに作成

サイバーセキュリティ強化へ「電力ISAC」が設立されました

社会全体においてサイバー攻撃の脅威が高まる中、今後さらに高度化・巧妙化する攻撃に対処していくため、電気事業連合会加盟各社は、発電事業者有志および電力広域的運営推進機関などを加えた計27団体の参加のもと、3月28日、電気事業者間のサイバーセキュリティに関する情報共有と分析を行う組織として「電力ISAC(JE-ISAC:Japan Electricity Information Sharing and Analysis Center)」を設立しました。

サイバー攻撃へ適切に対処
情報共有・事例分析を推進

ISAC(アイザック)とは、サイバーセキュリティに関する情報の収集・分析などを行う組織で、電力のほか、通信、金融分野でも設立され活動しています。
電力ISACでは、複数のワーキンググループを立ち上げ、定期的に会合を開いて、サイバーセキュリティに関する課題の検討や対策事例の情報交換などに取り組みます。また、海外の電力関係のISACとも連携して情報の収集などにあたり、国内への影響分析や対策強化につなげていきます。
今後も、電力ISACを通じて速やかな情報共有・分析などを行い、会員間の緊密な連携を図るとともに、各社においてもサイバーセキュリティの確保・強化に取り組むことで、電力の安定供給に努めてまいります。

※2017年7月7日現在

原子力発電所の放射線管理に徹底して取り組んでいます

原子力発電所の安全を確保するためには、放射線や放射性物質を適切に管理することが大切です。原子力発電事業者は、施設周辺の環境や施設内で働く人の健康を守るため、日々厳重な放射線管理に取り組んでいます。

放射線管理を徹底し周辺環境や作業者の健康を守る

原子力発電所で働く人が作業時に受ける放射線の量は、法令で定められた限度以下(5年間で100ミリシーベルト以下、年間上限は50ミリシーベルト以下)に抑えるよう、厳しく管理されています。実際、作業者が受ける放射線量は平均で年間1ミリシーベルト程度と、法令で定められた線量限度をはるかに下回る水準です。
原子力発電所の点検・補修作業では、作業前に放射線源を除去した上で、「放射線防護の3原則」(遮へい、距離、時間)を基本に、図(放射線防護の3原則)のような対策を組み合わせて被ばく線量を低減しているほか、原子力発電所の設計段階でも、この3原則の考え方が生かされています。
また、原子力発電所の周辺では、大気中の放射線量を24時間監視し、ホームページなどでリアルタイムに公開しています。法令では、原子力発電所の敷地境界の放射線量は年間1ミリシーベルト以下になるよう定められていますが、原子力発電所ではより厳しく、年間0.05ミリシーベルトと目標を定めた上で、実際にはさらに低くなるよう管理を徹底し、周辺環境を守るよう努めています。