FOCUS

2018.03

自主的な安全性向上を目指した原子力事業者の取り組み

私ども原子力事業者は、東京電力福島第一原子力発電所の事故を教訓として、原子力発電所における安全対策の強化に取り組んできました。今後も、すでに実施した安全対策にとどまることなく、自主的な安全性向上を目指した取り組みを継続していきます。

適切なリスク管理の重要性

原子力発電所の安全性向上のためには、「リスクはゼロにならない」という考えに基づき、規制基準へ対応することにとどまらず、事業者の一義的責任のもとで、自ら安全性向上や防災対策を充実させ、適切にリスクを管理(リスクマネジメント)し、低減に努めることが重要となります。

リスク情報を活用した意思決定「RIDM」

今後も原子力発電所の安全性向上に継続して取り組んでいくためには、発電所の運営にかかわる全員が、リスクを共通の尺度として課題を正しく把握し、優先順位をつけて、リスク低減に効果の高い改善に、速やかに取り組むことが必要となります。

そのための枠組みとして、原子力事業者は、「リスク情報を活用した意思決定(RIDM=Risk-Informed Decision-Making)」を発電所のマネジメントに導入することとしました。これは、安全対策に関する意思決定を、規制基準への対応といった従来の観点に加えて、確率論的リスク評価(PRA)から得られる知見を組み合わせた評価に基づき行うものです。

人間がダイエットする場合に例えると、まず自分の体重を日々把握するとともに、増加要因を分析して課題を抽出(パフォーマンス監視・評価)します。さらに課題を解決するための食事や運動のカロリー計算情報、体験談や最新の情報等、実施すべきダイエット方法(対策)に関する必要な情報を評価します(リスク評価)。そして、これらの情報を整理し、実施すべき最良のダイエットを決定して実施していきます(意思決定・実施)。これらプロセスを回していくことで、効果的なダイエットを速やかに実施していくことがねらいです。

リスク情報の活用においては、PRAによるリスクの定量化が重要な役割を果たします。そこで原子力事業者は、2014年10月に「原子力リスク研究センター(NRRC)」を電力中央研究所に設立し、リスク評価手法に関する研究開発を一元的に進めています。

リスク情報活用に向けた取り組み

原子力事業者は、「リスク情報活用の実現に向けた戦略プラン及びアクションプラン」をとりまとめ、2月8日に開催された電力中央研究所の「原子力リスク研究センターシンポジウム2018」にて公表しました。

シンポジウムでは、原子力事業者がリスク情報活用の意義や、発電所の現場におけるリスク情報の活用事例を説明しました。また、リスク情報の活用に向けて、原子力以外の業界からの有識者も交えた活発な議論が行われました。
一方、原子力規制委員会では、2020年度からの新しい検査制度の実施に向けた検討が進められています。新しい制度では、安全上の重要度に応じて発電所の規制・運用を行う仕組みへと見直しが行われる見通しで、これに対して事業者は安全や品質上の課題を自主的に見つけ、改善することが必要となります。

私ども原子力事業者は、こうした取り組みを着実に遂行し、規制の枠にとどまらない、自主的で自律的な発電所の安全性向上を実現してまいります。