FOCUS

2018.05

送電線の有効活用と再生可能エネルギー導入に向けた取り組み

発電所で作られた電気は、送電線を通って各地へ送られます。この送電線には電気を流せる容量に制限があり、空きがなければ電気を送ることができません。最近では、再生可能エネルギーの急増に伴い、送電線の空き容量が不足するケースが各地で出始めています。
こうした課題を解決するため既存の送電線を有効活用して、再生可能エネルギーの導入促進に向けた検討が進められています。

「日本版コネクト&マネージ」で送電線空き容量不足を緩和

送電線は、万一故障が発生した場合でも、お客さまの停電を防ぐために緊急時用の容量を確保しておく仕組み、いわゆる「N-1(エヌ・マイナス・イチ)基準」という考え方が日本や欧州などで広く採用されています。例えば、ある地点を結ぶ送電線が2回線の場合、原則1回線分(50%)を緊急時のために空けておく必要があることから、実際に使える容量(運用容量)は1回線分となります。
また、送電線への接続は、公平性・透明性の観点から、発電事業者が接続契約を申し込んだ順に容量を割り当てる「先着優先」の考え方がとられています。原子力発電だけが優先されるのではなく、太陽光や風力などの再生可能エネルギーも含めてすべての電源でこの考え方が適用されます。そして、申し込みが運用容量に達すれば「空き容量ゼロ」となります。以上のような考え方は、いずれも電力広域的運営推進機関(広域機関)の定めるルールに基づくものです。

出典:資源エネルギー庁HPより作成

近年、再生可能エネルギーの接続希望が急増し、送電線の容量に余裕がなくなってきています。このため国は「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」を設置し、既存の送電線を最大限有効活用することで、送電線の増強に伴う国民負担を抑えつつ、接続量を増やす手法として、日本版コネクト&マネージ「想定潮流の合理化」、「N-1電源制御」、「ノンファーム型接続」の導入を検討しています。

既存の送電線を最大限有効活用する
「想定潮流の合理化」「N-1電源制御」「ノンファーム型接続」

「想定潮流の合理化」とは、すべての電源がフル稼働した前提ではなく実際の利用に近い想定で空き容量を算定する方法です。
また、「N-1電源制御」と「ノンファーム型接続」は、一定の条件を付けた上で電源の接続を認める制度であり、高速道路や列車の座席指定などに例えると次のようになります。

進む「日本版コネクト&マネージ」の導入

2018年2月、広域機関は、「想定潮流の合理化」について、2018年4月1日以降の契約に対し適用を始め、「N-1電源制御」については、2018年度上期末を目途に一定条件のもと、先行的に適用していく方針をとりまとめました。そして「ノンファーム型接続」についても、実際のオペレーション方法など様々な課題について、検討されています。

出典:第2回再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会資料より作成

電力各社も積極的に対応

「日本版コネクト&マネージ」の議論と並行して、電力各社も再生可能エネルギーの導入拡大に向けて積極的に対応しています。
本年4月以前から、東北電力では東北北部地域で再生可能エネルギーの接続希望が集中していることを受け、最大潮流の想定を精査し、接続量を拡大する検討を始めています。
また、九州電力でも、再生可能エネルギーの接続抑制量減少に向け、中国電力と結ぶ関門連系線の送電可能量を拡大するための技術開発事業を開始しています。
電気事業者としては、再生可能エネルギーの導入拡大に向け、既存の送電線の有効活用を前提に効率的な設備形成を図っていくことは重要だと考えており、引き続き国や広域機関が進める検討に積極的に協力してまいります。

自律的かつ継続的な原子力の安全性向上へ原子力産業界の新組織が設立されます

原子力産業界は、安全性向上への取り組みをさらに高い水準へと引き上げることを目的として、原子力事業者やプラントメーカー、関係団体が参画する新組織を2018年夏頃に設立する検討を進めています。

安全性に関する共通の課題抽出
効果的な安全対策を決定

この4月、原子力事業者とメーカーおよび関係団体は「原子力新組織設立準備室」を立ち上げ、原子力産業界が参画する新たな組織の設立に向けた具体的な検討を開始しました。新組織は、
・国内外の最新知見などをもとに、安全性に関し、原子力産業界として取り組むべき課題を特定
・課題検討に向けた活動のコーディネート
・原子力産業界を代表する専門家による課題の検討
・課題の検討結果を技術レポートにとりまとめ公表
などの役割を担います。
また、安全対策の立案にあたっては、独自のガバナンスの下、原子力事業者のみならず、メーカーや原子力安全推進協会(JANSI)、電力中央研究所・原子力リスク研究センター(NRRC)など原子力産業界全体の知見・リソースを活用するほか、規制当局との対話も行いながら進めてまいります。
これらの活動を通じて、自主的に安全対策を決定し、現場への導入を促すことで、専門性・透明性および客観性を持って、原子力事業者の安全性向上の取り組みをさらに高い水準へ引き上げていきます。
原子力事業者としては、規制の枠にとどまらず、自律的かつ継続的に安全性向上の取り組みを進め、定着させていくことが重要と考えています。新規制基準への適合はもとより、新組織が決定した安全対策を実行して、現場における継続的なリスク低減を図ってまいります。