FOCUS2

2018.11

九州エリアにおける再生可能エネルギーの
出力制御に関する対応について

再生可能エネルギーの普及が進む九州地域で10月より、太陽光発電設備などによる発電を一時停止する「出力制御」が実施されています。電気を安定して供給するには、常に需要(使用量)と供給(発電量)を一致させる必要があり、このバランスを欠くと大規模停電が発生するおそれがあります。今回、九州電力は火力発電所を抑制し、揚水発電所の水を汲み上げるなどして昼間の太陽光増加分の大部分を吸収しましたが、それでも全体の発電量が需要量を上回る見通しとなり、出力制御を実施しました。その仕組みについて説明します。

需要と供給のバランス維持
再生可能エネ増加で厳しく

九州地域での出力制御は、事業用(出力10kW以上)の太陽光発電設備を対象に、10月13日に最大38万kWの規模で実施されました。離島を除いて、再生可能エネルギー発電の出力制御が行われたのは国内では初めてのケースです。その後も14日に最大54万kW、翌週20日に52万kW、21日に93万kWの出力制御が実施されています。

貯蔵が難しい電気は、需要と供給を常に一致させる「同時同量」原則の下でやり取りされています。需要・供給のバランスが崩れて電気の周波数が大きく上下すると、同じ電力系統につながる他の発電設備は故障を避けるため自動的に系統から切り離され、広域的な停電へと波及するおそれがあります。

近年、再生可能エネルギーの急速な拡大に伴い、春・秋の休日や年末年始など需要の少ない季節に、この需要と供給のバランスを保つのが難しいケースが増えています。

特に九州地域では、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)の下で太陽光発電設備の設置が盛んに進められ、太陽光導入量はFITが開始された2012年7月の111万kWから、2018年8月末時点で807万kWまで増加。需要と供給のバランス維持に関わる課題に早くから直面してきました。

対策総動員も余剰吸収困難
優先給電ルールで出力制御

出力制御(発電量の抑制)の順序は、広域機関の「優先給電ルール」(図1)に定められています。今回九州でも、このルールに従って出力制御が行われました。13日のケースでは、余剰電力が最も発生すると予測された午後0時~0時30分の予想需要は828万kW。これに対して、太陽光出力(594万kW)を含む供給力は1293万kWでした。

九州電力では系統全体の需給バランスを保つことを目的に余剰分の465万を調整するため、ルールに従い、①火力発電の運転を抑制・停止するとともに②揚水発電所の活用(上部ダムへの水の汲み上げ)、九州と本州を結ぶ関門連系線を活用した他エリアへの送電などの対策を総動員しました。

右図にあるとおり、昼間の太陽光出力の大半は揚水発電所および関門連系線を最大限活用して電力を域外に流し、その上で43万kW程度の供給力オーバーが避けられない見通しとなったことから、一部の太陽光発電の出力制御に踏み切りました。

出力制御は、すでに再生可能エネルギーが発電の多くを占めるアイルランドのほか、スペイン、イギリスなどでも実施されています。各国とも、発電量の適切な制御を前提とすることにより、全体での再生可能エネルギーの導入量(電力系統への接続量)を増やす方策と位置づけています。

国民負担やCO2排出の抑制と安定供給の確保を両立させながら、出力の調整が難しい再生可能エネルギーを最大限導入していくためには、水力や原子力などの「長期固定電源」をベースロードで活用しつつ、再生可能エネルギーの出力制御を行う必要があります。

私ども電気事業者としましては、引き続き再生可能エネルギー導入量の拡大に取り組んでいくとともに、電力の安定供給に努めてまいります。

  • 図1:優先給電ルールに基づく対応

    (図1)優先給電ルールに基づく対応

  • 出力制御のイメージ

    出力制御のイメージ 平常時

  • 出力制御のイメージ 需要が低く、晴天の時(1)

    需要が低く、晴天の時(1)

  • 需要が低く、晴天の時(2)

    需要が低く、晴天の時(2)

  • 需要調整後(3)

    需要調整後(3)