• 原子力安全研究協会
    技術顧問
  • 杤山 修氏Osamu Tochiyama
SPECIAL
ISSUE

2017.08

『科学的特性マップ』に関する疑問・質問 -専門家に聞きました

『科学的特性マップ』は、どのような目的で作成され、今後どう活用されるのでしょうか。地層処分技術の専門家の杤山修さん(原子力安全研究協会技術顧問)に解説をお願いしました。

Q1マップ作成の目的と活用方法について教えてください。

A1地層処分を具体的にイメージしてもらい、対話を進めるためのツールです。

高レベル放射性廃棄物については、地層処分が科学的・技術的に成立することが認められ、2000年に最終処分に関する法律もできましたが、処分地選定のプロセスは進んでいません。
地層処分を実現するには、国や専門家だけでなく、国民の皆さんに地層処分の安全確保の仕組みや、日本の地質環境についてもっと知っていただく必要があります。そのコミュニケーションのためのツールとして作成されたのが『科学的特性マップ』です。

Q2「グリーン(好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域)」に色分けされると現地調査などが始まるのですか。

A2そうではありません。まずはマップを活用した全国各地での説明会などが行われます。

マップで科学的に「グリーン(好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域)」に色分けされたからといって、その地域が即、処分地に選ばれるとか、そのための現地調査を押し付けられるといったものではありません。
まずは、十分安全に地層処分が成立する要件・基準があり、それが日本全国にどのように分布しているのかを、マップを通して知っていただきたいと思います。
廃棄物を持ち込むことがリスクと受け止められるイメージのままでは、対話も進みません。マップの提示をきっかけとして、全国で説明会などの対話を丁寧に積み重ね、「火山国・地震国の日本で地層処分はできるのか」といった不安を解消し、理解を深めていくことが重要です。

Q3そもそもマップの色分けはどのように決めたのですか。

A3様々な要因を考慮し、廃棄物を安定して閉じ込めるという観点から区分しています。

処分場は操業を終えると埋め戻され、人間の手で管理しなくてもよい形にします。「グリーン(好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域)」とは、処分した廃棄物を長い期間、安定して閉じ込めておくことができる条件を備えている可能性が高い地域ということです。
一方、火山の周囲や活断層の影響が大きいところ、著しい地盤の隆起・侵食が想定される地域など、地下深部の安定した状態が壊されてしまうような外的要因があると考えられる地域は「好ましくない特性があると推定される地域」と区分されます。なお、鉱物資源がある場所についても、将来人の手で掘削されてしまう可能性があるため好ましくないと言えます。

Q4最終処分を身近な問題として考えるにはどうすればいいでしょうか。

A4「だれかがやってくれる」ではなく、現世代が責任を持って社会全体で解決すべき課題と考えることが大切です。

地層処分で先行するフィンランドやスウェーデンをはじめ、どの国も処分場の選定には長い時間をかけ、苦労しています。特に廃棄物の問題は、過去に受けた便益の後始末といった印象があり、これだけ社会の分業化が進むと「だれかがやってくれるもの」と考えてしまうのも無理はありません。
しかし放射性廃棄物はすでに発生しており、現世代が責任を持って、社会全体で協力して解決していくべき課題です。
国や私たち専門家も地層処分事業を担当する原子力発電環境整備機構(NUMO)や電気事業者などとともに、誠意を持って、“Face to Face”で対話・説明を重ねていきたいと考えています。地層処分に関する科学的知識は決して特異なものではありません。次の世代に負担を残さないためにも、ぜひ関心を持って、地層処分について考えていただければと思います。

PROFILE

京都府生まれ。京都大学大学院理学研究科修士課程修了。東北大学教授を経て、原子力安全研究協会処分システム安全研究所所長、2015年から同研究所技術顧問。専門はアクチノイドの溶液化学、原子力バックエンド工学。総合資源エネルギー調査会の地層処分技術ワーキンググループ委員長、放射性廃棄物ワーキンググループ委員を務めた。