• 気象予報士・キャスター
  • 井田 寛子Hiroko Ida
VOICE

2019.01

地球温暖化と身近な気象変化
実はつながっています

近年、強い台風や局地的な豪雨などによる自然災害が頻発しています。こうした極端な気象と地球温暖化の関連を指摘する声もあります。気象キャスターとして温暖化問題にも熱心に取り組む井田寛子さんにお話を聞きました。

気象予報士として身近な気象情報やお天気の話をすると、皆さん関心を持って耳を傾けていただけます。一方で、大雨が降って自宅の裏山が崩れるかもしれないというような自然災害が、実は地球温暖化の影響もあるとはなかなか関連づけられないようです。地球温暖化は、どこか遠いところで起きている出来事だと考えてしまうかもしれません。

環境省の地球温暖化防止コミュニケーターの活動では、小学校の出前授業で地球温暖化についてお話をする機会があります。子どもたちに温暖化が自分たちにも関係する問題だと考えてもらうため、対話形式で温暖化と身近に迫る自然災害との関連などを分かりやすく伝えるように工夫しています。

これまでも、日本の気候が変わってきているということは漠然と言われてきました。実際、気象予報をする中で、局地的で極端な雨の降り方や気温の上昇などといった気候の変化が、私たちの予想を上回ってくるケースを何度も経験しています。温暖化問題は解明されていない部分も多く、疑う人も多いようです。だからこそ科学的なデータの裏づけが重要です。

一方で、こうした科学的データや温暖化の話題が専門的で難しいことも、温暖化問題に距離を感じてしまう理由の一つかもしれません。私は温暖化の専門家ではありませんが、気象の専門家として、また情報を伝える側の人間として、専門家と一般の皆さんをつなぐ役割を果たしていきたいと考えています。

昨年12月には、ポーランドでCOP24(気候変動枠組み条約第24回締約国会議)が開催されました。温暖化防止と聞くと、個人の取り組みは微々たるもので、大きな影響はないと考えてしまいがちです。日本を代表するような大企業が本気で取り組む姿を見せたり、呼びかけをすれば多くの方々が関心を持つのではないでしょうか。私自身は毎日の生活を送る中で、例えばエネルギーを無駄に使わないためにはどうしたらいいか、一つひとつの行動について考えてみることを心がけています。

昨年は各地で甚大な自然災害が発生しました。災害で電気や水道などのライフラインが途絶え、何もできなくなったときに、私たちはあらためて資源の大切さを実感します。日々の暮らしで使うエネルギーについても、当たり前にあるものではないと考えて生活することが大切ではないでしょうか。

PROFILE

埼玉県生まれ。筑波大学第一学群自然学類化学科卒。2002年日本放送協会(NHK)静岡放送局入局。2007年に気象予報士の資格を取得。2011年4月から5年間、NHKニュースウオッチ9で気象キャスターを務めた。TBS「あさチャン!」の気象キャスターなどを経て、現在、NHKラジオ第一「石丸謙二郎の山カフェ」に出演中。NPO(特定非営利活動法人)気象キャスターネットワーク所属。地球温暖化防止コミュニケーターとして、次世代層への温暖化問題の理解活動にも取り組む。