4. 原子力開発動向

化石燃料枯渇問題で原子力開発が再始動

英国は原子力開発をその黎明期から手がけてきた。1950~60年代には国産技術によるマグノックス炉(ガス冷却炉)、1960~70年代にはAGR(改良型ガス冷却炉)を開発、1970年代終わりには軽水炉開発に着手し、1994年にはサイズウエルB発電所(PWR1基、125万kW)を完成させた。また、原子燃料サイクル開発も行ってきており、濃縮、再処理、MOX製造等の施設も建設してきた。2017年12月現在、運転中の原子力発電ユニットは15基合計1,036万kWで、国内総発電量の約2割を占める。

1990年の電力自由化・民営化後、新規建設は滞ってきたが、2000年以降、石油、天然ガス資源の枯渇問題が顕在化し、政府は、原子力開発の再始動を打ち出した。また、運転中の既設原子力発電所は、2020年代にPWRを除きほとんどが閉鎖されると予想されたため、政府は2008年に原子力白書を発表し、新規建設の推進を決定した。2011年には、原子力開発に関する国家政策声明が議会で承認され、既設の8つのサイトが新規建設の候補サイトとして選定された。さらに2012年には、原子力も含めた低炭素電源への投資促進を目的とした電力市場改革を内容としたエネルギー法案(「電力自由化動向」の項参照)が議会に提出され、2013年12月の議会承認によりエネルギー法として制定された。

福島事故後も原子力推進政策は変わらず

政府の原子力推進の方針は、福島事故後も変わっていない。事故後、既設炉の安全確認や追加対策の検討が安全規制当局によって実施されたが、既設炉の運転を制限する必要のないことが確認された。また、新規建設についても、エネルギー大臣が「英国の繁栄は原子力発電なくしては困難」とし、原子力推進の方針を再確認した。

英国の世論調査では、2000年代以降、温暖化問題や燃料価格の高騰を背景に原子力発電への支持率が増加する傾向を見せており、福島事故直後には一時的に反対が増加したものの、近年では賛成が反対を大きく上回っている。

1,600万kWの新規建設計画

電気事業者もこの政府方針に呼応し、具体的な開発計画を打ち出している。フランスEDFの子会社であるEDFエナジー社は、2地点で4基(652万kW)の建設計画を打ち出す一方、日立傘下のホライズン社は、2地点4基(552万kW)、また東芝の100%子会社であるニュージェン社は、1地点3基(341万kW)の建設計画を発表している。しかし、東芝の海外事業撤退表明を受け、現在韓国電力公社がニュージェン社の買収に向けて交渉している。

この内、EDFエナジーが進めるヒンクリーポイントC原子力発電所(163万kW×2基)の建設計画が先行している。2013年3月に政府から計画許可を取得するとともに、10月には政府との間で発電電力の買取条件(35年にわたる固定買取価格の設定等)について合意に達した。欧州委員会は2014年10月、同建設計画における支援策は国家補助に該当しないとして承認した。ただし、EDFエナジーの利益率が高くなった際、需要家へ利益を還元するメカニズムを適用させるという条件が付加されている。EDFは2015年10月、中国の原子力発電会社CGNと戦略的投資協定(Strategic Investment Agreement)を締結し、EDF 66.5%、CGN 33.5%の出資で合意。2016年9月、政府とEDFの間で最終投資決定(Final Investment Decision)がなされた。
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