8.電力自由化の動向

全面自由化で競争激化

電力の自由化は1990年から段階的に進められ、1999年以降、家庭用を含めたすべての需要家が電力の購入先を自由に選択できるようになっている。小売供給事業者は、価格の割引競争のほか、産業用需要家に対してはオーダーメードサービス、また家庭用需要家に対しては、ガスと電力の抱き合わせ供給、最近では使用量を減らした需要家に対するポイント還元など、様々なサービスを用意し需要家獲得競争を展開している。この結果、全ての産業用需要家は供給事業者の変更や契約の見直しを行っている。また、家庭用需要家も、半数以上が供給事業者を変更している。

しかし、このような競争激化の中、料金メニューの数が増大するとともに、内容も複雑化し、需要家が供給事業者を選択するに際して、どのメニューを選択すればいいのか困惑する事態も発生している。そのため、規制当局は、料金の比較が容易となるよう、各社が提示する料金メニュー数の制限、料金メニューの定型化、その需要家に最も適した料金の推奨義務化などを検討している。

電気料金は上昇

電気・ガス料金は、2003年以降の世界的なエネルギー価格の高騰や国産ガス(北海ガス)の生産量の減少などを背景に急騰し、2013年現在、電気料金は2004年比で約2倍、ガス料金は2.5倍に上昇している。また、自由化の進展とともに、発電会社が燃料のスポット調達の割合を増加させていることも電気料金の上昇に拍車をかけている。その結果、近年、英国は欧州諸国の中で最も電気料金が高い国の一つとなっている。

そのため、冬季に十分な暖房を確保することができない世帯(エネルギー貧困世帯)が急増し、その数は2004年の120万世帯から2011年には400~500万世帯に達している。さらに今後は再エネ開発コストなどが電気料金に転嫁されるものと予想される。このような情勢の中、政府は弱者対策の一環として、25万軒以上の需要家を持つ電気・ガス事業者に対して、低所得者層への料金割引制度を導入している。

電力市場改革で再エネ、原子力開発を支援

「エネルギー政策の動向」の項で述べたように、英国政府は、近年、再エネ、原子力、CCS付火力など低炭素電源へシフトするエネルギー政策を掲げている。

しかし、現行の卸電力取引制度(BETTA)は、1990年代以降の自由化万能主義を反映したもので、近年のこのような政策変更を前提に策定されたものではない。そのため、強力な奨励施策が導入されない限り、開発コストが高いこれら低炭素電源は、市場から締め出されることになる。

このような中、政府は2011年7月、これらの電源の開発支援を目的とした「電力市場改革」(EMR: Electricity Market Reform)を打ち出した。EMRは、現行の卸電力取引制度の枠組みはそのまま残しながら、卸市場に低炭素電源を導入する強いインセンティブを組み込むべく、以下の4つの施策の導入を掲げている。

  • CO2排出量価格の下限値(CPF)の設定:火力発電事業者が購入しなければならない排出権の価格を一定以上の高さに保つことで、低炭素電源を相対的に優位に立たせる制度(実務的には排出権価格が基準を下回る場合に課税)。
  • 低炭素電源からの固定価格買取制度(FIT-CFD)の導入:再エネのほか、原子力やCCS付火力なども対象とする方針。CFDは変動するスポット価格のリスクをヘッジするために使われる金融派生商品。FIT-CFDはこの手法を用いて買取価格を固定化する仕組み。
  • 新設火力のCO2排出基準の設定:石炭火力に対するCCS設置を実質的に義務付け。
  • キャパシティーマーケット制度(CM)の導入:再エネ電源の大量導入によって、ガス火力など一般電源の設備利用率が低下し、それらの電源への設備投資が不足することが懸念される。これを回避するために導入が検討されているのがCMである。CMは設置した容量に対して一定の報酬を支払うもので、これにより設備利用率が低くても一定の利益が確保できる。

2012年11月にはEMRの実施を規定した法案が議会に提出されており、2013年中には制定される見込みである。

電力供給体制(北アイルランドを除く)

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