7. 電力自由化動向

電力市場再編:多くの州で卸市場を自由化

カナダの電気事業者は古くから米国との間で電力の輸出入を積極的に行ってきた。そうした中、電力自由化が先行する米国側からの要請に応じて、カナダでも送電線を開放し非差別的に送電サービスを提供するなど、卸電力市場の自由化が実施されてきた。
 
2017年末現在、10州のうちニューファンドランド州およびプリンスエドワード・アイランド州を除く8州(ノバスコシア、ニューブランズウィック、ケベック、オンタリオ、マニトバ、サスカチュワン、アルバータ、ブリティッシュ・コロンビア)で卸電力市場の自由化(送電線の開放)が実施されている。

また、発送分離(アンバンドリング)については、大規模な州有電気事業者の大半は、発電・送電・配電の事業部門制を採用したり、会計上の分離を実施したりしている。なお、カナダにはこれら大手の州有電気事業者の他に、垂直統合型の私営電力会社、さらには自治体営の配電会社、独立系発電事業者(IPP)など多数の小規模電気事業者が存在する。

小売市場の自由化は依然限定的

小売市場の全面自由化は2017年末現在、アルバータ州およびオンタリオ州の2州のみに留まっている。大口産業需要家のみにオープンアクセスを認める部分自由化は、ニューブランズウィック州、ブリティッシュ・コロンビア州、ケベック州の3州で実施されている。

自由化州のアルバータ州では、「1996年電気事業法」(EUA)により卸市場・パワープールが創設され、発電部門の自由化、送電線の開放、機能分離など一連の組織再編が実施された。1998年に卸市場での競争の更なる促進や小売市場自由化を規定した「改正電気事業法」(EUAA)が施行され、2001年からは小口需要家を含め全面自由化へ移行した。さらに2003年には独立系統運用者とパワープール運用者の機能がアルバータ・システムオペレーター(AESO)の下に統合された。

同じく自由化州のオンタリオ州では、1998年に「エネルギー競争法」が制定された。続いて1999年には州営オンタリオ・ハイドロ社がオンタリオ発電会社とハイドロ・ワン社(送配電等、持株会社)に分割され、独立電力市場運用機関(IMO)が設立された。2002年5月からは卸電力市場と小売電力市場が同時に全面自由化された。

その後、同州では2003年の北米大停電を受け、2004年12月には長期需給・系統信頼度の確保を目的とした「電力再編法」が制定され、それまでの電力再編の方向修正が図られた。同法に基づきオンタリオ州電力公社(OPA)が設立されるとともに、自由化時に設立された独立市場運用機関(IMO)は独立系統運用機関(IESO)に改称されるなど、規制と競争を組み合わせたハイブリッド市場が採用されている。2015年1月、オンタリオ州はIESOとOPAを効率向上と費用抑制のため、合併した。

なお、カナダの電気料金は、各州によって大きく異なるが、ケベック、マニトバ、アルバータなど水力電源の多い州が安くなっている。
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