7. 電力自由化動向

自由化は段階的に実施

フランスでは「電力自由化法」が2000年2月に制定されたものの、「EU電力自由化」指令では1999年2月から小売電力市場の自由化が規定されていたため、実質的には1999年2月からフランスでも自由化が開始された。
自由化は段階的に実施され、市場開放率は1999年2月以降約20%(年間消費電力量1億kWh以上の需要家約200軒が自由化対象)、2000年5月以降約30%(1,600万kWh以上の需要家約1,600軒が自由化対象)、2003年2月以降約37%(700万kWh以上の需要家約3,300軒が自由化対象)と拡大された。2004年7月以降は、家庭用需要家を除く産業用・業務用需要家が自由化され、2007年7月以降は全面自由化が実施された。

小売電気料金の水準は微増するも安定的

フランスの小売電気料金は、産業用、家庭用とも1990年代中頃から低下した後、2000年頃から横ばいの状態となっている。ただし、2002年以降、「電力公共サービス拠出制度(CSPE)」の課徴金に含まれる再エネ補助費用などが増加傾向にあることから、CSPEなど公租公課を含んだ小売電気料金は若干上昇する傾向にある。

しかし、フランスは原子力発電比率が高いことから、他の欧州諸国と比較して2000年代前半以降の燃料費高騰の影響は受けてはいない。欧州委員会統計局(Eurostat)のデータによると、2017年上半期におけるフランスの家庭用電気料金は税込みで16.90ユーロ・セント(22.0円)/kWh、また産業用電気料金は税込みで11.98ユーロ・セント(15.6円)/kWhと、EUで最も安い部類に入る。

大口需要家への規制料金の廃止、EDFによる原子力発電を部分開放

フランスでは全面自由化がすでに実施されているものの、供給先変更など自由化の権利を行使していない需要家については、政府が認可する「規制料金」が適用されている。一方で自由化の権利を行使した需要家(新規参入者に変更した需要家、既存事業者と交渉により再契約した需要家)は、卸電力市場価格の変動等が反映された「市場料金」が適用されている。しかし、「市場料金」よりも「規制料金」が割安であったため、EDFから新規参入者に乗り換える需要家は限定的な状況が続いていた。そのため欧州委員会は、大口需要家に対する規制料金によって小売市場での競争が歪められているとして、再三フランス政府に規制料金の廃止を求めてきた。

これを受けて、2009年、フランス政府は36kVA超過の大口需要家への規制料金を2016年以降に廃止(家庭用および契約容量36kVA以下の業務用は継続)するとともに、新規参入事業者にEDFの原子力発電電力量の一部を売却する新しい卸電力制度を開始した。2010年の「電力市場新組織法」では、2025年まで年間1,000億kWh(EDF発電電力量の25%に相当)を上限としてEDFの原子力発電電力量を発電原価に基づく価格で小売供給事業者(フランス国内の需要家への供給分に限定)に卸販売することが規定された(ARENH制度)。原子力発電電力の売電価格については、現在は4.2ユーロ・セント(5.5円)/kWhが適用されている。2015年以降、卸電力市場価格がARENH価格を下回ったため、2016年のARENH制度への申込みはゼロとなったが、その後の卸市場価格の上昇に伴い、最近は再びARENHへの需要が増加しており、2017年の申込みは822億kWh、2018年は946億kWhとなっている。

一方、家庭用および業務用に残っている規制料金については、欧州委員会や新規参入者から廃止を求める動きが続いている。また、家庭用部門を巡っては大手石油会社や大手スーパーに続いて、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンなどの参入も取沙汰されており、今後はフランスにおいても家庭用部門での競争激化も予想される。
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