6. 電気事業体制

電気事業の中心は州営:発電では国有企業も

広大な国土を持つインドの電気事業は、基本的に都市や州単位で供給体制が構築されてきた。デリー、ムンバイ、コルカタなどのインドの主要都市は歴史的に財閥を中心に発展してきたため、独立以前から財閥系の電力会社が電気を供給してきた。1950年の独立後は、これらの都市部以外の地域もカバーするため、州営の電力会社として垂直統合型の州電力局(SEB)が設立され、州全体の電力供給を担ってきた。

1970年代には、電源不足を解消する目的で、中央政府によって電力会社(火力公社、水力公社、原子力公社)が設立され、発電所が建設された。これに併せて、電源が不足する州に電気を送るため、州を跨ぐ送電線の建設や運用を行う送電会社(PGCIL)も設立され、電力供給において重要な役割を担ってきた。1990年代以降の電力改革によって、発電部門へのIPPの参入、州営電気事業の分割などが実施されている。

エネルギー政策を管轄する監督官庁は、部門ごとに電力省、新・再生可能エネルギー省(Ministry of New and Renewable Energy)、石炭省、石油省に分かれている。電力部門の監督官庁は電力省であり、「2003年電気法」の下、全国大の電気事業に関する政策立案を担当している。電力省の下部組織の中央電力庁(CEA)は長期需給想定などを担当している。原子力分野は、同じく電力省の下部組織の原子力庁が担当している。それぞれの州の電気事業に関する事項については州政府が管轄し、州の規制機関が事業認可や料金規制を担当している。

系統運用

インドでは、基本的に州をまたぐ送電線は国営送電会社(PGCIL)が所有し、州内の送電および配電設備は州電力会社が所有している。インドの主要系統は、5つの地域系統(北部、西部、東部、北東部、南部)に分かれている。5つの地域系統は、かつては異なる周波数で運用されていたが、1990年代より地域間連系を進めてきた。2013年12月31日より南部系統と残り4地域で構成される中央系統が同期連系し、1国1系統1周波数のナショナルグリッドが形成された。

系統運用は、3階層になっており、中央給電指令所の下に5つの地域給電指令所、その下に33カ所の州給電指令所が組織されている。系統運用事業者は、PGCILから分離して設立された「電力系統運用会社(POSOCO:Power System Operation Corporation Ltd.)」が中央給電指令所と地域給電指令所を管轄し、州給電指令所は各州の事業者が運用している。なお、POSOCOの役割は中央給電指令所の運用(地域系統間の調整)が主であり、各地域給電指令所の運用はそれぞれの地域給電指令所で行われている。

電力不足が改善

2014年度(2014年4月~2015年3月)の電気事業者による発電電力量は1兆1,168億kWhであった。内訳は、石炭75%、水力12%、再エネ7%、原子力3%である。

インドでは長らく電力不足による停電が頻発していたため、商業・産業用需要家は発電機を備えて対策を取っており、自家発による発電は総発電電力量の1割以上を占めている。また、隣国のブータンからもデリー向けに電力輸入している。

消費電力量の部門別内訳は、2014年度で、産業用44%、家庭用23%、農業(灌漑ポンプ)用18%、商業用8%となり、GDPの2割を占める農業用の比率が大きいのが特徴である。また、総合損失率(AT&Cロス:料金未回収分等も含む配電ロス)は全国平均で23%である。これは、技術的損失に加え、盗電の影響が大きく、配電会社の財務状況を悪化させる原因となっている。インド政府は、特に都市部での配電ロスを低下させるため、2015年以降、「総合電力開発計画(IPDS:Integrated Power Development Scheme)」というプログラムを実施している(予算規模6,542.4億ルピー、約1兆円)。IPDSは、主に都市部の配電部門の設備投資を進めるもので、メーターの不正改竄を防止するためスマートメータへの切り替えや、配電システムのIT化、盗電を防ぐため人口密集地域における配電線の地中化などが行われている。

電力不足は近年改善傾向にある。2017年度の電力不足率は全国平均で2%程度である。一部の州の電力不足率の高さが平均値を引き上げているが、多くの州では年間を通じて供給力に余裕がある状態であった。

政府は、2015年に策定した「地方電化プログラム(DDUGJY)」により、7,589.3億ルピー(約1.2兆円)を投じて、未電化村でのメーターや変圧器等の設備の設置を進め、地方電化を行ってきた。これにより村落電化率は2018年4月末に100%に達し、世帯電化率についても2018年12月末までに100%を達成する見込みである。
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