7.電気事業体制

電気事業の中心は州営:発電では国有企業も

広大な国土を持つインドの電気事業は、基本的に都市や州単位で供給体制が構築されてきた。デリー、ムンバイ、コルカタなどのインドの主要都市は歴史的に財閥を中心に発展してきたため、独立以前から財閥系の電力会社が電気を供給してきた。1950年の独立後は、これらの都市部以外の地域もカバーするため、州の機関として垂直一貫型の州電力局(SEB)が設立され、州全体の電力供給を担ってきた。

1970年代には、電源不足を解消する目的で、中央政府によって電力会社(火力公社、水力公社、原子力公社)が設立され、発電所が建設された。これに併せて、発電所周辺の州に電気を送るため、州を跨ぐ送電線の建設や運用を行う送電会社(PGCIL)も設立され、重要な役割を担ってきた。

「電力自由化動向」の項で述べるように、現在は1990年代以降の電力改革によって、発電部門へのIPPの参入、州営電気事業の分割などが実施されている。

電力部門の監督官庁は電力省であり、「2003年電気法」の下、全国大の電気事業に関する政策立案を担当している。電力省の下部組織の中央電力庁(CEA)は長期需給想定などを担当している。この他、新・再生可能エネルギー省、石炭省、石油省などがある。それぞれの州の電気事業に関する事項については州政府が管轄し、州の規制機関が事業認可や料金規制を担当している。監督官庁が多数にわたり許認可手続きが非常に煩雑なことが、インドで新規参入(特に外資)が進まない要因のひとつと言われている。

系統運用

インドでは、基本的に州をまたぐ送電線は国営送電会社(PGCIL)が所有し、州内の送電および配電部門は各州の州電力局(SEB)、または旧SEBから分割された配電会社が所有している。インドの主要系統は、5つの地域系統(北部、西部、東部、北東部、南部)に分かれており、南部を除く4つの地域は「中央系統」として常時連系している。この「中央系統」と「南部系統」も将来的に統合される計画である。

系統運用は、3階層になっており、中央給電指令所の下に5つの地域給電指令所、その下に33カ所の州給電指令所が組織されている。系統運用事業者は、PGCILの子会社で2010年に設立されたPOSOCOが中央給電指令所と地域給電指令所を管轄し、州給電指令所は各州の事業者が運用している。なお、POSOCOの役割は中央給電指令所の運用(地域系統間の調整)が主であり、各地域給電指令所の運用はそれぞれの地域給電指令所で行われている。

電力供給:慢性的な電力不足

2012年度の事業者の発電電力量は9,117億kWhであった。電源別内訳は、火力(主に石炭)が大半の83%を占め、次いで水力13%、原子力4%である。電力不足により停電が頻発しているインドでは、商業・産業用需要家は発電機を備えて自衛しており、これらの自家発による発電電力量は1,209億kWh(2010年度)と、総発電電力量の1割以上を占めている。また、隣国のブータンからも首都のデリー向けに電気を輸入している。

インドでは、盗電等も含めた送配電ロス率が30%弱と高く、消費電力量は発電電力量の7割程度である(6,170億kWh、2010年度)。用途別内訳は産業用36%、家庭用25%、農業(灌漑ポンプ)用20%、商業用10%で、GDPの2割を占める主要産業の農業の比率が大きい。地域別では、経済の中心で工業・農業地域のある西部、首都デリーのある北部、農業地域で近年IT産業の盛んな南部で需要の約9割を占め、開発の遅れている東部と北東部はわずかである。

インドでは、電力需要に対して常に10%程度電力が不足しているとされ、不足分は輪番停電を行うことで対応している。デリーなどの都市部でも停電が常態化している状況である。また、国際エネルギー機関(IEA)の統計によると、依然として4人に1人が電気を使用できない状態であるとされる。これは貧しい地域などで電化していない世帯が残っているためで、人口一人当たりの年間の消費電力量は、全国平均879kWh(2011年度暫定値)と、日本の約10分の1に過ぎない。インド国内でも、経済的に豊かな州と東部、北東部州とでは一人当たりの消費電力量に10倍以上の差があり、地域間の格差が大きいことも特徴である。

中央電力庁による長期需要想定(2007年公表)では、2021年度の電力需要は1兆9,145億kWhと2007年度実績の3倍以上増加し、最大電力は2007年度実績の1億887万kWから2倍以上の2億9,825万kWまで増加すると予測している。

2012年7月の大停電事故

2012年7月30日、31日と二日間連続で発生した停電は、6億人に影響を与える史上最大規模のものとして、日本でも大きく報じられた。2日間とも同じ要因で停電が起こったが、特に31日は、発生時刻が平日の午後13時と昼間であったため、冷房が止まり、交通網が遮断されるなど、国民生活に多大な影響を与えた。

前述の通りインドでは、慢性的な電力不足から常に需要が供給力を上回り、輪番で負荷遮断することで対応している。このような厳しい状況の中、系統運用者や発電所が、周波数に連動する卸電気料金の仕組みを悪用して、事前に割り当てられた電力量を超過して電気を使用したり、反対に過剰に発電したりするなど、ルールの逸脱が常態化していた。今回、北部地域と西部地域で需給バランスが著しく崩れた背景には、このようなルールの逸脱に加えて、2つの地域系統をつなぐ連系線の大半が電圧維持や工事のために停止していたことがある。唯一運用していた連系線が過負荷状態となって停止し、常時連系していない南部を除くインド全体に停電が及ぶ結果となった。今回の停電によって、電源設備の不足といったハード面だけでなく、需給調整など運用面での様々な課題が浮き彫りになった。インド電力省は、地域電力委員会とともに対策を協議し、取り組みを進めている。

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