5.原子力開発の動向

電力需要の20%を賄う重要な電源

スペインでは2012年1月現在、8基778.5万kWの原子力発電設備が運転中で、電力需要の約20%を賄う重要な電源となっている。これらの発電設備はスペイン大手電気事業者であるイベルドローラ、ENDESAなどが出資した合弁会社が運転しているが、運転状況は良好であり、近年の設備利用率は常に80%を超えている。

スペインの原子力開発政策は海外での事故や政権交代で紆余曲折はあったが、現在は今後も原子力発電を維持してゆくこととなっている。

石油危機で開発促進、TMI、チェルノブイリで開発ストップ

石油など化石燃料資源に乏しいスペインは、早い時期から原子力開発を進めてきた。60年代後半から70年代初めにかけて、米国からは軽水炉を導入、またフランスからはガス炉を導入した。さらに、1973年の石油危機後は、「国家エネルギー計画」(PEN)が策定され、12基の原子力発電プラントを建設する計画が打ち出された。この計画に従い、80年代に7基運転を開始した。

しかし、1982年に誕生した社会労働党(PSOE)政権は、米国スリーマイル島(TMI)発電所事故を受け開発計画を大幅に縮小し、1983年のPENでは、建設中の5基の工事が中断あるいは凍結され、さらに1994年には法律によって5基の建設計画は最終的に中止された。また、運転中の発電所も1990年に1基閉鎖された。

さらに2004年に政権に就いたザパテーロ社会労働党政権は、既設の原子力発電所の段階的閉鎖を掲げ脱原子力に踏み出した。2005年には、政府は原子力比率(設備容量)を2011年までに23%から10~16.5%にまで低減する計画を発表し、電力会社が求めていたホセカブレラ発電所の2009年以降の運転延長申請を却下した。

地球温暖化対策で運転期間延長、政権交代で原子力維持に転換

続く2008年3月の総選挙でも、ザパテーロ首相は、再度、脱原子力を掲げて首相に再選されたが、原子力なしではCO2削減目標が到底達成できないため、当選後、原子力発電所の運転期間延長には柔軟な姿勢に転じた。2009年には40年の運転期限を迎えたサンタ・マリア・デ・ガローニャ発電所について、2013年7月まで4年間の運転延長を認めた。さらに政府は2011年、原子力発電比率とプラントの運転年限は、安全規制当局の意見、CO2削減やエネルギー面でのニーズを考慮して適宜決めるとの方針を明らかにした。

続く2012年1月に発足したラホイ国民党保守政権は、前政権の消極的な運転期間延長容認の姿勢から、積極的な原子力維持に政策転換した。政府は2012年7月、規制当局の結論に従いサンタ・マリア・デ・ガローニャ発電所について、2013年までとする前政権下での決定を取り消し、運転延長可能とした。ただし、同政権は折からの財政危機を受け、原子力発電にも発電税と核燃料税の導入を決めたことから、同発電所の運転延長は微妙な情勢となっている。課税と運転延長に必要な改修費用で運転コストが増大し、運転延長が経済的に見合わない恐れがあるため、発電会社は延長の可否について判断を保留している。

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