海外電力関連 解説情報

「2011年におけるEU域内の太陽光・風力発電の導入実績」

2012年8月8日

 EurObserv’ERは2011年のEU域内における太陽光発電、風力発電の導入実績および各国の動向をまとめた2012年版報告書を公表した。今回は、この報告書をもとにEU域内の実績、各国の動向を紹介する。

□世界の太陽光発電の74%を占めたEUの導入実績

 EU域内における2011年の太陽光発電の導入実績は2153万kWとなり、世界全体の導入量の約74%を占めた。2010年の導入量が1375万kWであったことから、前年比約57%増という大幅な増加を記録した。拡大をけん引したのはイタリアとドイツで、イタリアが928万kW、ドイツが751万kW。次いでフランスの163万kW、英国の94万kW、ベルギーの78万kWなど。EU域内ではスペインやチェコ、ポルトガルなどが前年の新規導入量を下回ったものの、それ以外の国では前年を上回る実績を残した。

 この結果、EU域内の2011年時点での累積設備容量は前年比約72%増加して5136万kWとなった。国別内訳では、ドイツが2488万kW、イタリアが1276万kWで、この2国だけでEU全体の73%を占めた。続いてスペインが421万kW、フランスが283万kW、チェコが196万kW、ベルギーが181万kW、英国101万kWなどとなっている。また、EU域内における2011年の太陽光発電による発電電力量は、前年比98%増の約448億kWhに達した。主な内訳では、ドイツが約190億kWh、イタリア約107億kWh、スペイン約79億kWhとなり、3カ国でEU全体の約84%を占めた。

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□イタリアがスペインを抜いて累積設備容量でEU2位に浮上

 イタリアの2011年の新規導入量は前年比約4倍となる928万kWで、EU域内最大の導入量を記録、2011年末の累積設備容量が1276万kWでスペインを超えてEU内2位となった。また、太陽光発電による発電電力量が風力の発電電力量(約96億kWh)を初めて上回った。これには、太陽光発電による買取価格を引き下げる第4次買取価格が2011年6月から適用されたため、改正前の駆け込み需要が影響しているとみられている。イタリアでは2012年1月から半期ごとに支援費用に基づいて導入量が制限され、2016年末時点で設備容量2300万kW、年間支援費用は60億~70億ユーロ(約5700億~約6700億円)が目標値として設定されている。このため、2016年頃には買取価格が電気料金と同水準となることが期待されている。

 ドイツの2011年の新規導入量751万kWは前年比1.3%の微増であったが、2011年末時点の累積設備容量2488万kWは世界1位であり、同年の発電電力量190億kWhは国内電力消費量の約3%にあたる。ドイツ太陽光産業協会による太陽光ロードマップでは、2020年までにさらに5270万kWを導入する目標となっており、国内電力需要の約10%を賄うことを見込んでいる。連邦政府による2012年までの太陽光発電累積設備容量の導入目標3500万kWは2012年上期中にも達成できる見通しである。連邦政府は買取費用の負担が大きくなっていることから、2009年から過去の導入実績に応じて買取価格を調整する制度を開始、2011年7月には買取価格の改正と至近の導入量に応じて調整を行うように見直し。2012年5月時点で検討されている買取価格は最大で20~29%引き下げとなっており、こうした制度改正はドイツの太陽光発電導入量にも影響が生じる可能性があるとの見方もある。

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□EU域内の風力発電の新規導入実績は前年をわずかに上回る2.4%増

 EU域内における2011年の風力発電の新規導入実績は、前年比2.4%増の937万kWであった。国別では、トップのドイツが201万kW、次いで英国が116万kW、イタリアが93万kW、スペインが91万kW、スウェーデンが90万kWなどとなった。2010年には新規導入量が前年を下回ったが、2011年は前年実績をわずかに上回るだけの結果に終わった。この要因としては欧州における経済状況の悪化によって、プロジェクトの遅延などが報告されている。各国ベースでは、ドイツ、イタリア、英国、スウェーデン、ルーマニアなどは前年比増となったが、スペイン、フランス、ポルトガル、デンマークなどは前年を下回った。

 また、EU域内における2011年末時点での累積設備容量は前年比約11%増の9410万kWとなった。国別内訳では、首位のドイツが2908万kW、2位のスペインが2167万kWであり、両国でEU域内の約54%を占め、次いでイタリアが674万kW、フランスが668万kW、英国が654万kWなど。一方、洋上風力の2011年の新規導入量は前年比31%減の79万kWにとどまり、累積設備容量は382万kWとなった。英国、デンマークがこの分野をリードしているが、ドイツも実績を積み上げてきている。

 なお、EU域内における2011年の風力発電の発電電力量は、前年比約15%増の約1721億kWh。主な内訳は、ドイツが465億kWh、スペインが約421億kWh、英国が141億kWh、フランスが約122億kWh、デンマークが98億kWh、スウェーデンが61億kWhなどだった。なお、2011年の発電実績はEU域内消費電力量の約5%に相当した。

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□ドイツの全電源に占める風力発電量は8%

 ドイツにおける2011年の新規導入量は前年比29%増の201万kWで、累積設備容量は2908万kWとなり、EU域内では最大の増加となった。また、風力発電による発電電力量は465億kWhで、国内全電源の発電電力量のうち約8%を占めた。連邦政府が2011年に脱原子力政策の決定をしたことによって、風力発電は今後の重要な再生可能エネルギー電源と認識されている。ただし、風力発電所の立地地点に偏りがあり、国内の送電系統整備が緊急の課題となっており、送電線建設の遅れが開発のボトルネックになる可能性が危惧されている。

 一方、洋上風力の2011年実績は前年までの累積導入量を上回る21万5300kWとなった。連邦政府は2020年までに1000万kW、2030年までに2500万kWを導入するという野心的な目標を掲げ、既にドイツ復興金融公庫などによる支援策も決定している。なお、2012年再生可能エネルギー法では、陸上風力に関しては大きな政策変更がなかったものの、今後の導入拡大が期待される洋上風力に関しては、買取価格を従来よりも15%引き上げるほか、早期設置ボーナスもこれまでより25%引き上げることとしている。

 英国も風力発電導入には積極的に取り組んでおり、2011年の新規導入量は前年比49%増となる116万kWとなり、累積設備容量は654万kWとなった。特に洋上風力導入が進められており、EU域内で最も大きな導入量(約200万kW)であり、2012年には14カ所の洋上風力発電所(154万kW)が運転開始する予定となっている。英国政府は2020年までに1300万~1800万kWを増強する目標を掲げており、2020年時点で風力発電が国内供給電力の17~18%を賄う見通しを立てている。

 また、フランスの2011年導入量は前年比41%減となる60万kWであり、累積導入量は668万kWとなった。フランス政府は、2020年までの陸上風力導入目標を1900万kWとしている。一方、洋上風力は2011年時点で実績はないが、2012年4月に国内初となる入札(2015年までの第1期に300万kW)が行われ、2012年下期には2020年までの第2期(300万kW)の入札が実施される予定。政府は2020年までに合計600万kWの洋上風力導入を目標に掲げている。

 このほか、ルーマニアが2011年の新規導入量で52万kWの実績をあげ、大きく躍進した。同国南東部のドブロジ地方に欧州最大級の風力発電所の建設が進められており、2017年までに50プロジェクトで150万kW相当の設備導入を目指しているのが注目される。

 

 

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