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[オーストラリア] 豪州の鉱業評議会、政府に原子力の禁止条項撤廃を改めて勧告

2018年1月30日

オーストラリア(豪州)で鉱物資源の探鉱・採掘、製錬関係企業を代表する鉱業評議会(MCA)は1月10日、連邦政府による2018~2019年の予算編成に先立ち、同国の原子力発電開発に対する禁止条項の撤廃を改めて勧告する文書を提出した。
豪州はウラン資源の埋蔵量が世界最大であるにもかかわらず、連邦法の禁止条項により商業用原子力発電所が存在しない。
MCAは2017年9月、「原子力発電の禁止条項撤廃」と題する分析報告書のなかで、「約20年前の時代錯誤な法律により原子力発電開発が禁じられ、新たな原子力技術の開発に対する国際的な協力や投資で大きな損害を被っている」と連邦政府に提言していた。
今回の提出文書でMCAは、豪州が将来的に経済成長を遂げていくには、税制や労使関係に加えて環境・エネルギー政策も改革しなくてはならないと指摘。
そのためには、「原子力を含む低炭素な技術オプションすべてが、連邦政府のエネルギー政策において平等に扱われるべきだ」と述べており、連邦政府は原子力発電禁止条項を撤廃すべきだと主張している。
同文書のエネルギー・地球温暖化に関する項目で、MCAは「高効率、低炭素(HELE)」な石炭火力と原子力こそ、豪州で重要なベースロード電源たり得るとの認識を示した。
それによると、原子力発電所は、稼働期間全般においてCO₂の排出量が非常に少なく、ベースロード電力の供給能力という点で有利。
近代的な小型モジュール炉(SMR)は特に、各家庭や採鉱産業およびその他の遠隔地域への安定した電力供給を長期的に可能にする。
また、原子力発電の禁止条項は、将来エネルギーや地球温暖化対策について豪州で開かれた議論が交わされるのを阻んでいるだけでなく、国内採鉱産業によるウラン輸出にも相反しているとした。
原子力発電についてMCAは、アジア地域や東欧を中心に開発規模が拡大しているとした上で、これら諸国が確実かつ信頼性のある適正価格の低炭素エネルギーを求めていること、原子力は確証済みの技術でありながら、今後も技術革新の進む余地が大いにあることを理由として挙げた。
国際エネルギー機関(IEA)が、将来の開発規模に関する3種類のシナリオすべてにおいて原子力発電は拡大すると予測している事実にもMCAは言及。
基本となる「新政策シナリオ(NPS)」では、原子力設備容量は2016年以降、2040年まで年率1.6%で成長していくが、「持続可能な開発シナリオ(SDS)」における原子力の役割は一層重要になる。
SDSでは、2040年までに原子力は年率3%で拡大する必要があり、その結果として総発電量におけるシェアも、2016年実績の11%が15%まで増えることになると強調した。
また、MCAが委託した数学的モデルによると、豪州におけるウラン産業関連の雇用は、2014年から2015年にかけて約3,000名だったのが2040年までに2万2,600名まで拡大する。
これにより、同産業による豪州経済への貢献は、年間6億豪州ドル(約529億円)から95億豪州ドル(約8,386億円)に成長するとMCAは指摘。
環境面の審査や核不拡散の保障措置レベルを下げることなく、ウラン採鉱の規制枠組を効率化することは可能だとした上で、連邦政府は以下のような改革を優先的に行うべきだと訴えている。
すなわち、

・「環境保護・生物多様性保全(EPBC)法1999年」で規制対象となっている原子力活動の定義から、ウラン採鉱や製錬などをはずす。
・ウラン採鉱に関する法制と規制を国内で標準化し、その中でウランの輸送と輸出に関する規則を制定する。
・EPBC法と「放射線防護・原子力安全法1998年」に基づく連邦政府の原子力産業への禁止条項を撤廃し、豪州のウラン採鉱に対する外国投資家の信頼を獲得する。

 

【情報提供:一般社団法人日本原子力産業協会】 

 <参考>[豪州]鉱業評議会、原子力禁止条項の撤廃を政府に提言(2017年9月22日)

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