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[ウクライナ] 米ホルテック社製SMRの建設と国産化で協力覚書

2018年3月23日

ウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社は3月2日、米ホルテック・インターナショナル社が開発した電気出力16万kWの小型モジュール炉(SMR)の国内建設、および同技術の国産化を目指し、協力覚書を2月28日にホルテック社と締結したと発表した。
受動的安全性を有すると言われる同社製「SMR-160」について、国内の許認可手続と既存原子力発電所内での建設を進めるのみならず、国内サプライヤーの能力を活用して機器製造の一部を国産化する計画。
いずれはSMRのシステムや機器、構造物の輸出でウクライナが世界でも主導的立場を獲得するとともに、欧州やアジア、アフリカ地域に「SMR-160」技術をプロモーションするための製造拠点をウクライナに築きたいとしている。
ウクライナでは1986年のチェルノブイリ事故を受けて、ウクライナ最高会議が1990年8月に原子力発電所の建設凍結を決議したが、国内のエネルギー不足を解消するには原子力が不可欠との政府認識を反映し、1993年10月に同決議は撤廃された。
事故後約30年を経て、同国では国内の商業炉15基が総発電量の50%以上を発電。
エネルゴアトム社は経年化が進んだ11基について運転期間の延長手続を進める一方、昨年7月にホルテック社とSMRの導入可能性に関する協議を実施しており、ウクライナが近代的なエネルギー技術の開発国として仲間入りを果たし、将来的に機器製造で主要国となるための道を模索していた。
エネルゴアトム社によると、SMR技術は原子力発電所の新設で最も有望な分野の1つと認識されており、世界市場は2025年以降、約1兆ドルの規模に成長する見通し。
外部電力に依存する機器の不使用や固有の安全性能など、従来型原子力発電所と比べてはるかに高いレベルの安全性を有しているほか、ホルテック社製「SMR-160」であれば負荷追従運転が可能であり、高圧送電網も必要ないとした。
このため、同社は今回の協力覚書を通じて、ホルテック社と共同調整委員会を設置する方針である。
同委は「SMR-160」の規制審査について準備することを最優先の目的としており、国際原子力機関(IAEA)が革新的原子炉の導入環境整備を支援するために設置した国際フォーラム「INPRO」の方式に基づいて包括的な設計評価を行うほか、西欧原子力規制者協会の安全要件や欧州電気事業者要件に対する適合性を評価。
その際は、カナダの規制要件に対する同設計の適合性について、カナダ原子力安全委員会が実施する「許認可申請前審査」の結果も考慮される。
また、これらに続くステップとして、同委はウクライナ国内の原子力産業インフラを評価するとともに、国内で「SMR-160」の一部機器製造を国産化するための共同提案を策定するとしている。
ウクライナを「SMR-160」機器の製造拠点とするための具体策としては、ニュージャージー州カムデンにあるホルテック社の「先進的製造プラント」と同等の能力を備えたプラントをウクライナに設置する計画。
同プラントは、ホルテック社が2020年代半ばまでに世界の4地点で設置するプラントの1つになる予定で、ホルテック社では現在、タービン発電機など「SMR-160」に組み込める機械を専門的に製造しているウクライナの主要サプライヤーと協議を行っているところである。
ホルテック社によると、エネルゴアトム社はすでに2016年末からホルテックSMR諮問委員会の一員であり、半年毎の同委の席でエネルゴアトム社のY.ネダシコフスキー総裁は、試験プロジェクトとして、ロブノ原子力発電所で稼働する40万kW級のロシア型PWRを2基、「SMR-160」と取り替える考えを表明したという。
ウクライナの老朽化した石炭火力発電所が、今後数年間で閉鎖される予定であるため、不足分を「SMR-160」のクリーン・エネルギーで賄う方針。
さらに、「SMR-160」で国内の産業施設に熱電併給を行う可能性があることも明らかにしたとしている。

 

 【情報提供:一般社団法人日本原子力産業協会

<参考> [ウクライナ] 新エネルギー戦略を閣議決定、原子力シェアは2035年で50%(2017年9月12日掲載)

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