太田電事連会長定例記者会見発言要旨
(2000年1月21日)


◎ 今年になって初めての会見。
エネルギー記者会の皆さま方には、新年早々からY2K問題で大変お世話になった。 
今年も1年、よろしくご指導をお願いしたい。

◎ 国をあげて取り組んだY2K問題については、大晦日から元旦にかけてY2Kに起因した停電や発電所の停止等もなく、お客さまにご迷惑をおかけするような事態は一切なかった。電力としての使命を全うすることができて、正直ほっとしている。

○ ただ、お手許の資料-1にまとめてあるとおり、一部の原子力発電所等の監視、記録系のシステムなどでY2Kによるトラブルが発生した。いずれのトラブルも、発電所の運転に支障をきたすことなく速やかに復旧できたが、事前の準備や対策に万全を期してきただけに残念である。また、情報連絡・提供の面で反省すべき点もあった。
○ 現在、トラブルが発生した会社において、メーカー等も含めた徹底的な原因究明や再発防止を行っているが、今後も「うるう日」である2月29日など要注意日が残っていることでもあり、こうした各社の検討結果や教訓等も踏まえて、さらに安全確保や情報連絡等に万全を期してまいりたいと考えている。

◎ 年末の会見でも申し上げたが、今年も電力業界は課題が山積している。3月からは、いよいよ特別高圧のお客さまを巡って小売りの自由化がスタートする。また、原子力の分野でも、JCOの事故等によって失われた信頼の回復をはじめ、高レベル放射性廃棄物処分についての新法制定や事業主体の設立、あるいは使用済み燃料の中間貯蔵の立地や六ヶ所再処理工場に関する安全協定の締結など、原子燃料サイクルやバックエンド対策などでいろいろ動きが考えられる。
○ さらに、今後のわが国の原子力推進にとって大きな意味を持つ原子力長計の審議も一層の進展が予想される。とくに、今回の長計策定にあたっては、新エネに関する議論が行われており、昨年12月に総合エネルギー調査会に新たに設置された「新エネルギー部会」での議論や、自然エネルギー買い取り義務に関する議論など、今後、新エネがクローズアップされる可能性が大きい。(資料-2参照
○ 本格的な検討はこれからだが、私ども事業者としては、ぜひ、つぎのような点を踏まえて議論を進めていただきたいと考えている。
○ まず、今後の新エネの導入については、原子力や他のエネルギーを含めたわが国のエネルギー政策の全体の中できちんと位置づけ、国民的なコンセンサスを得ていただきたいと思う。
○ どこの国でも、それぞれのエネルギー事情をもとにエネルギー政策を立てており、新エネの導入についても例外ではない。資源が乏しいわが国では、今後の主要なエネルギー源を何に頼るかについて、あれもこれもではなく、あれかこれかの選択を常に迫られており、選択を過った際の影響も大きい。  わが国のエネルギーを将来どういう形にもっていくのか、ぜひ、原子力や新エネの位置づけをバラバラにではなく、エネルギー政策全体のなかで議論していただきたい。
○ もう1点は、当たり前だが、議論・検討にあたっては、事実や現状に基づいた冷静な議論が大切である。
○ 新エネ、とりわけ自然エネルギーの導入について、電力業界が消極的であるという方が意外と多い。しかし私どもは、貴重な国内資源である太陽や風力をできる限り活用するという方向性については全く異論はない。事実、これまで、太陽光発電等について全量を電気料金と同額で引き取ったり、事業目的の風力からの購入についても、火力燃料費の2倍以上の価格で15年以上の長期にわたって買い取るメニューを用意するなど、新エネの導入を自主的に支援してきた。
○ また、わが国では、欧米に比べて新エネ導入が遅れていると思われている方も多い。しかし、実際には、国の支援に加えて、私ども電力各社が私企業としては精一杯の範囲で協力してきた結果、わが国の太陽光発電の導入量(13.3万kW,98年度末)はアメリカ(10.0万kW,98年度末)と並んで世界一の水準であり、風力の導入量もここ数年急速に伸びている。こうした事実や現状、あるいは電力自由化との整合性等も十分に踏またうえで、今後の方向性について議論をしていただきたいと思う。
○ 新エネについては、期待の大きさから、とかくバランスを欠いた議論となりがちである。例えば、太陽光や風力は、再生可能で自然環境に優しいといったメリットがあり、期待が大きいが、
@太陽光で100万kWの原子力発電所1基分に相当する電気を作るには、原子力発電所の約360倍、山手線内の約2倍 に相当する面積(約130平方キロメートル)が必要だということや、
Aあるいは、風力は、出力が不安定であるため、周波数維持などの技術的な理由から導入可能量に限界があったり、バックアップ電源が必要だということ、
Bさらに、エネ庁の試算にあるように原子力発電の発電量を太陽光や風力でまかなうとすると、3倍(風力)〜30倍(太陽光)の投資コストが必要になるということなど、こうしたディメリットをどう評価し、解決するのか、事実や数字に基づいた具体的な議論を掘り下げることが重要だと思う。
○ 現在行われている原子力長計や新エネに関する議論は、これから始まる電力市場の自由化と並んで21世紀のわが国のエネルギー、さらには経済・社会に大きな影響を与えるものである。先ほど申し上げたとおり、議論が進められるなかで、わが国のエネルギー政策全体の中での原子力や新エネの位置づけが明確になり、国民全体のコンセンサスが形作られていくことを期待している。
○ ぜひ、エネルギー記者会の皆さまからも、いろいろなご意見やご感想をお聞かせいただければと考えている。
○ 私からは以上。