◎ 本日、私からは、電気事業の税制、ならびにJCO東海事 業所の事故に関わる最近の動きの2点について申し上げたい。
◎ 東京都の石原知事が打ち出した銀行に対する外形標準課税 案が波紋を広げているが、この機会に電気事業の税制につい て若干申し上げたい。
○ 電力会社は、一般税制にもとづく国税や地方税のほか、電源開発促進税や核燃料税といった事業特有の税などもあり、毎年巨額な税金を負担している。 お手許のパンフレット(「電気事業と税金」)をご覧いただきたいが、平成10年度に電力会社が支払った税金(水利使用料、道路占用料を含む)は、総額で約1兆4,000億円にものぼっており、売上高に占める割合も9.2%と、全産業平均の1.4%に比べて大変な高水準となっている。 ちなみに、これをご家庭1軒あたりの電気料金に置き換えてみると、月平均7,300円の電気料金のうち、消費税を含めて約900円、1割以上が税金である。
○ このうち、話題となっている事業税については、一般の方々にはあまり知られていないが、電力、ガス、生保、損保の4業種だけが収入金課税、すなわち外形標準課税となっている。 このため、所得課税になっている他の業種に比べて負担が重くなっており、その額は、一般業種と同じ所得課税方式で計算した場合と比べて約2倍にもなっている。
○ このように事業税の課税方式が業種間で異なっていることは、「租税負担の公平の原則」の観点からも問題であり、私どもは、課税標準および税率について、その他の事業と同一の扱いに改めていただくよう、従来からお願いをしてきている。
○ こうした私どもの考え方からすると、今回の東京都の提案については、事業税の外形標準課税そのものに対する議論もあるが、とくに一部の銀行業のみに外形標準課税を導入することで、業種間における課税方式の違いが拡大することに問題があるのではないかと考えている。
○ なお、外形標準課税の全産業への導入については、法人の事業活動に対する税として、道路や橋、警察などといった行政サービスの提供を受けている法人の全てが、薄く広く税を負担すべきという意見がある一方で、景気や経済の活性化への影響を懸念する声などもあり、導入にあたっては十分な検討が必要であると考えている。
○ 東京都の外形標準課税案をきっかけに事業税のあり方についての関心が高まっているが、この機会に、電気事業の事業税の実態等も踏まえていただき、税の公平な負担のあり方について議論が行われることを期待している。
◎ つぎに、JCO東海事業所の事故に関わる最近の動きにつ いて申し上げたい。
◎ JCOの事故から、はや4か月半が経過した。 わが国で例のない深刻な事故であっただけに、国では昨年の暮れ、極めて短期間のうちに原子炉等規制法の改正や原子力防災法の制定が行われ、現在、6月からの施行に向け基準や規則の検討が進んでいる。
○ また、既にご案内のとおり、私ども電気事業者も、原子力産業界全体の安全性向上を図るため、昨年の12月に、原子燃料サイクルに関わる35の企業・研究機関が集まり「NSネット」を設立させた。○ 今月の4日には、初めての理事会が開かれ、組織や会計規則などを決めたほか、・会員事業所を相互に評価する「ピアレビュー」を来年度初 めより燃料加工メーカーからスタートすることや、・会員企業の役員や事業所長級を対象にしたトップセミナー の開催、・各事業所を訪問し、安全に関する講演を行ったり、安全教 育や研修に使う教材を周知ならびに収集する「安全キャラバン」の実施、・ホームページの開設など、今後の活動方針が承認された。
○ また、1月にロンドンで開催された「世界原子力発電事業者協会=WANO」の全体理事会において、NSネットの活動の意義が認められ、WANOの経験や手法の提供を含めて全面的な協力を行う旨の決議が採択された。
○ NSネットの今後の具体的な活動計画については、詳細が固まり次第、事務局から公表されると思うが、私ども電気事業者としても「仏作って魂入れず」と言われることのないよう、これからの活動を全面的に協力・支援してまいりたいと考えている。
○ 今週、住友金属鉱山の青柳社長が辞任を表明された。 科技庁が、JCOに対して原子炉等規制法に基づく処分としては最も重い事業許可取り消しの処分を固めたこともあり、親会社としての責任を重く受け止めるられた結果だと思う。
○ 事故発生から、4か月以上が経過し、地元にも次第に落ち着きが戻りつつあるようだが、原子力の平和利用について理解と協力の手をさしのべてこられた東海村をはじめとする地元の方々の、今回の事故によって生じた不信感や不安感は今も変わってはいない。
○ 住友金属鉱山ならびにJCOにとって、今後の道程は大変厳しいものがあると思うが、今回の事故によって失われた地元の方々、さらには国民からの信頼を回復するためにも、原子力産業に携わる者として、両社一体となり地元への補償やケアの問題に、さらに全力で取り組んでいただきたいと思う。 それが、信頼回復の第一歩でもあり、また、それなくしては原子力産業界全体に対する本当の信頼回復は望めないと考えている。
○ 私からは以上