資料1−2
福島県の核燃料税について
2002年7月19日
電気事業連合会
1.納税者への説明責任が果たされていない
〇今回の福島県の重量を併用した課税内容は、実質的に新税であるにもかかわらず、本年4月25日に突然提案され、その根拠となる財政需要の説明を受けたのは5月9日からであり、財政需要の具体的内容について十分な説明も尽くされないまま県議会に上程され、さらに納税者としての発言機会を求めたにも拘わらず、その機会すら与えられず、7月5日に一方的に可決されたもの。
〇このように福島県が説明責任を果たしていないため、核燃料税で担うべきものとされている対象事業と負担の考え方については、福島県と東京電力との間で未だに相当の認識の乖離がある。
2.課税自主権の趣旨や憲法上の諸原則からも問題
〇今回の増税構想は、その地方の自治に関して意思表明することが難しい唯一かつ特定の企業に対して行われるものであり、納税者への説明責任と財政需要の合理性の立証が果たされない場合は、租税制定権の濫用または租税制定手続上の瑕疵があるとして、憲法違反(憲法第14条:平等原則、第29条:財産権の侵害、及び第31条:適正手続の保障)の疑いが生じ、極めて慎重な取り扱いが必要と考えられる。
〇また、法定外税の新設・変更については、総務大臣との協議を除いては、第三者によるチェックが働かないうえ、制度上、納税者の弁明の機会が保障されておらず、今回のように課税側が一方的に手続きを進めてしまうと、特に納税者が選挙権がなく、議会における発言や投票行動による意思表示の方法が与えられていない企業の場合には、その意思を条例制定過程に反映させる機会が全くないことから、憲法第84条に定める課税の趣旨に根本的に反する状態が生じることになる。
3.過重な負担であり、かつ実質的な二重課税である
〇実質的な税率を7%から16.5%に引き上げることは、既に税率を改定した福井県・新潟県、並びに本年6月議会で可決された石川県の税率 (10%)と比べ、極めて突出している上、現行税率に対して2倍を超える大増税であり、過去に例を見ないもの。
〇さらに、これまでの従価課税に対して、新たに従量課税を加えることは、同一対象に二重に課税しようとする不合理なもの。
4.核燃料税収で賄おうとする財政需要のうち合理性に欠けるものが多い
〇地方自治体の運営において、自主財源で歳入基盤を確立する際は、行財政の効率化を前提としなければならない。
(注)経済財政諮問会議による「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」でも明示(閣議決定済)
〇また、法定外税の増税に際しては、税目と合理的な関連性のある財政需要が実際に存在することが不可欠の前提である。
〇にもかかわらず、福島県が列挙する財政需要の中には、原子力発電所が存在しなくても必要となる経常的な経費であるなど、核燃料税で担うべきかどうかに大いに疑問がある項目が数多く含まれている。
(例)福島空港の管理費の二分の一を特別の財政需要として見積もられているが、その内容は、空港の土木施設・航空灯火施設等の維持管理費や、空港事務所の警備・消防委託等の管理経費など
〇合理的に負担割合を算出すべき需要であるにもかかわらず、全てを核燃料税の負担としているものや、負担割合が合理的でない財政需要が数多く含まれている。
5.原子力立地地域振興特別措置法の活用が先決
〇財政需要については、立地町を中心とした道路整備などが大半を占めることから、昨年4月に施行された「原子力発電施設等立地地域振興特別措置法」に基づく支援措置を積極的に活用していただくことにより、かなりの財政需要を吸収できるのではないか。・「振興計画」の決定を受け、実施段階の県 福井県,島根県・「原子力発電施設等立地地域」の指定を受け、「振興計画」を作成中の県 青森県,宮城県,茨城県,新潟県,愛媛県,鹿児島県
〇福島県においても、同法に基づく「原子力発電施設等立地地域」の指定を早急に受け、「振興計画」の作成、実施に向かうことが重要と考える。
6.国の経済施策との整合性を欠く
〇原子力発電は、「電源開発促進法」、「電源三法」、「原子力基本法」、「原子力立地地域振興特別措置法」などにおいて国の基幹エネルギーとして位置づけられ、さらに、温室効果ガス排出抑制の重要な手段として、「地球温暖化対策推進大綱」にも盛り込まれている。
今回のような他の道県では見られない突出した増税が行われれば、原子力発電に関する税負担を大幅に増加するものであることから、原子力発電所の新・増設に向けた事業意欲を損なわせるばかりか、全国の立地地域における課税競争を誘発する可能性が高まる。
〇このような増税競争が起きれば、エネルギーの長期的安定供給と地球温暖化への対応のための原子力発電の推進に大きな障害が生じることになり、国の重要なエネルギー政策が大きく阻害されることになり、所管官庁である経済産業省も懸念を表明している。
〇また、本年6月14日に公布・施行された「エネルギー政策基本法」第6条では、「地方公共団体は、(エネルギーの需給に関する施策についての)基本方針にのっとり、エネルギーの需給に関し、国の施策に準じて施策を講ずるとともに、その区域の実情に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」とされている。
〇さらに、平成9年に閣議決定された「経済構造の変革と創造のための行動計画」では、電力コスト低減による産業の活性化は、重要な経済施策と位置づけられている。この増税構想は、大幅な負担増を課すことになるが、これは、安易に料金へ転嫁できる状況にはないどころか、一層の料金低減を求められている中で大きな足かせとなり、国の施策を大きく阻害する。つまり、国の重要な経済施策やエネルギー政策に反することは明らか。
以 上