荒木電事連会長定例記者会見発言要旨




(1998年9月11日)




◎  8月が夏休みということで、2か月ぶりの定例会見。よろしくお願いしたい。
◎ 本日、私から申し上げるのは、2点。
  一つは、電事審の基本政策部会について。もう1つは 石炭ガス化複合発電、いわゆるIGCCの実証プラントの開発について。
◎ まず、最初に基本政策部会について。
  今月3日に基本政策部会が開かれ、5月にまとめられた「中間的整理」の方向にしたがって、部分自由化の具体的な制度設計を検討するため、専門委員会の設置と今後のスケジュールがほぼ固まった。
○ 来週14日から専門委員会が始まる。具体的な私どもの考えは、その場で申し述べさせていただくことになるが、これまでの議論の蒸し返しにならぬよう、また実態を踏まえた率直な議論が行われるよう、期待している。
  そこで本日は、わが国にふさわしい部分自由化の枠組みの構築にあたって、専門委員会の議論でぜひ踏まえていただきたい点を、これまで申し上げたことの繰り返しになる点もあるが、いくつか申し上げたい。
◎ 第1点目は、送電線の利用拡大の考え方について。
  送電線の利用を新規参入者とそのお客さまに拡げる場合、従来からのお客さまと同じ設備を使うことになるため、新規参入によってシステム全体の効率性や供給信頼度が低下しないようにすることが、何よりも重要。
  このため、新規参入者やそのお客さまには、ネットワーク全体の健全性を保つための技術的な要件や、電力会社の給電指令を守っていただくことが、ぜひとも必要であり、送電線の利用拡大の範囲は、系統運用やネットワーク監視が行える「特高送電線」に限定されるものと考えている。
○ なお、送電線利用のルールについては、日ごろ、電源・流通設備の一体的、効率的な計画・建設・運用を行っている電力会社が示していくことが、最も合理的だし、効率的だと思うが、電力会社は送電線利用者の一方の競争者でもある。
  このため、送電線の利用拡大にあたっては、公平・公正な扱いのもとで対等な競争が行われるよう、ルール等について、十分な透明性を確保していきたいと考えている。
◎ 2点目は供給責任のあり方について。
  新規参入者が、事故で電力を供給できなくなったり、自分の都合で事業から撤退するような問題も考えられる。
  私ども電力会社が、新規事業者に替わって電気を供給しなければならないとすれば、そのための設備を準備しておくことが必要となり、その結果、余分なコスト負担が発生し、一般のお客さまへの負担となって跳ね返る可能性もある。
  そうした影響がないようなシステム設計を検討していく必要がある。
◎ 3点目は、原子力の位置づけについて。
  競争導入によって、電力会社の将来の需要見通しが不透明となった場合には、開発に多額の資金や長い期間を要する原子力開発が、停滞することも懸念される。
  原子力は、わが国にとって重要な課題であるエネルギーセキュリティー確保や地球環境問題への対応の中核的な役割を担うものである。
  今後の検討では、原子力の推進という基本方針ははっきりとさせたうえで、効率化追求の観点からだけでなく、例えば、原子力の一定運転を確保するなど、原子力の開発や運用に支障を起こさないといった点を十分考慮して、制度設計を行っていただきたいと考えている。
○ 以上、3点ほど専門委員会の議論で踏まえていただきたい点を申し上げた。
○ なお、部分自由化の制度設計のうち、料金制度に関わる事項や、料金に関する情報公開のあり方については、基本政策部会と平行して料金制度部会で検討することとなっている。
  具体的にはこれから詰めていくことになると思うが、検討にあたっては、規制や行政の介入を最小限にとどめ、電力会社が自主性や創意工夫を最大限に発揮して、お客さまサービスの向上や経営の効率化を図るといった観点から議論を進めていただきたいと考えている。                

◎ つぎに、石炭ガス化複合発電=IGCC(Integrated coal Gasfication Combined Cycle)実 証プラントの開発について。
○ 9電力および電源開発と電力中央研究所は、このたび、電力共同プロジェクトとして、 2010年頃の商用化を目指し、石炭ガス化複合発電実証機の研究開発に、来年度から着手することを決定している。これについては国の支援もお願いしているところ。
○ IGCCは、石炭と空気を高温で反応させて可燃性のガスを作り、そのガスで、LNGと同じようにコンバインドサイクル発電を行うシステムで、つぎのような長所がある。
 ・ まず、LNG火力で行っている、ACC(Advanced Combined Cycle、1300℃ 級以上の発電)技術の活用により、石炭発電技術の中で最高の47%程度の熱効率(送電端)が見込まれている。
 ・ 第2に、CO2を2割程度削減できるほか、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、煤 塵なども減らせるなど、環境面で優れている。
 ・ 第3に、現在の石炭火力(微粉炭火力)では利用が難しい種類の石炭(灰の融点が低い亜瀝青炭)を使用できるなど、燃料ソースを拡大できる。
○ 私ども電力会社は、従来から、石炭を中長期的な電源のベストミックス、 LNGに対する価格交渉力を確保するなどの観点から、原子力につぐベース電源として位置づけている。
  しかし、石炭は他の燃料に比べCO2排出量が多く、今後、地球環境問題への対応がより求められていくなかでは、高効率で石炭を利用できる技術開発がぜひとも必要となっている。
○ こうしたことから、私どもは、1986年度から96年度まで、国と共同で商用機の10分の1程度の規模(出力2.5万kW級)のプラントを建設して、パイロット試験を実施してきている。その後2年間をかけて、実証機開発に向けてのフィージビリティスタディや要素試験を行っている。
  そして、今回、研究開発の最終段階として、2004年度までに商用機に近い出力30万 kWのフルシステムの実証機を建設し、2005年度から2007年度まで運転試験を行って、実用段階で求められる性能や、信頼性、耐久性を確認することとした。
  なお、実施にあたっては、2000年度に中間評価を行い、技術的信頼性や経済性など、多方面から評価したいと考えている。
○ 実証機開発の概要については、資料をご覧いただきたい。