荒木電事連会長定例記者会見発言要旨



(1999年2月19日)






◎ 本日、私から申し上げるのは、2点。 
  一つは、中央環境審議会で検討が進められている「地球温暖化対策に関する基本方針」について。 二つ目は、最近の電力需要について。

○ 昨年10月から、中央環境審議会において「地球温暖化対策に関する基本方針」が審議されている。
 この「基本方針」は、本年4月から施行される「地球温暖化対策推進法」の中で策定が義務づけられているもので、わが国の地球温暖化対策の基本的な道筋を明らかにし、国や地方公共団体、事業者、国民、それぞれが取り組む基本的事項を定めることになっている。
 現在、昨年末から1月にかけて実施されたパブリックコメントや、各地域で行われた「ヒヤリング」などについて集約が行なわれているところであり、来月末頃には答申がまとまるのではないかと思う。
○ お手許の資料1に、基本方針策定に至るこれまでの経緯をまとめてみた。
 わが国では、一昨年のCOP3で、「温室効果ガス排出量を1990年レベルから6%削減する」という目標が決まったことを受けて、昨年6月に、政府の基本方針である「地球温暖化対策推進大綱」が決定され、省エネルギー、新エネルギーと並ぶ、地球温暖化対策の最重要項目として、原子力推進の方針が明確にされた。
 また、電気事業審議会でも、「長期電力需給見通し」の見直しが行われ、COP3の目標を実現するためには、電源のベストミックスの推進、とりわけ2010年度までに新たに約2000万〜2500万kW、設備にして20基程度の原子力発電所の建設が必要であるとの報告がまとめられている。
○ このように、わが国の地球温暖化対策の柱として、原子力に大きな期待と役割が課されているわけだが、現在検討が進められている基本方針案の中には、原子力が果たす役割について、どこにも明確な記載がなされていない。国民的な理解が得られていないということが、大きな理由のようだ。 
○ 確かに、原子力は、使用済み燃料対策や高レベル廃棄物処分など、今後解決していかなければならない、難しい課題を抱えている。しかしながら、資源のない日本において、電気の約3分の1東京電力の場合約4割を原子力で供給していることも事実。
 昨年度に日本の原子力発電所が生み出した電気は、約3,200億kWh。これを原油に換算すると約7,300万kl、わが国の年間原油輸入量(約2億6,749万kl)の約3割(中東の全原油産出量の6.4%)にもなる。
 日本の原子力発電所51基で、それだけの油を節約したことになり、もし、原子力がなかった場合には、日本のCO2排出量(1996年度:3.37億t-C)は、現在より約2割も増加する計算になる。
○ 原子力発電が、エネルギーの安定供給やCO2削減の面でこれほど大きな貢献をしているにも関わらず、今回の基本方針で、きちんとした位置づけがなされないとすれば、大変に残念なことだ。 
○ 今月はじめに経済同友会が「地球温暖化に向けたわれわれの決意」という提言を行った。その中で、「行政は、主体的な立場で原子力発電を推進していくべき」であり、「約20基の原子力発電を新増設するという政府の計画を着実に実行していくためには、行政はあらゆる議論の場を捉えて、その必要性を強調し、国民の理解を深めていくことが重要である」と、国の強いリーダーシップを求めている。
○ 私ども電気事業者も、バックエンド対策をはじめとする課題の解決に向け、また、原子力に対する国民の方々のご理解やご協力がいただけるよう、全力を挙げて取り組んでまいる所存である。
 国としても、原子力推進の方針を国民にわかりやすく、明確に示したうえで、原子力のメリットと課題、双方について国民に十分な情報を提供し、コンセンサスづくりに取り組んでいただくことが重要ではないかと思う。
 そうした観点からも、今回の方針には、ぜひとも原子力の推進を明確に位置づけていただきたいと考えている。

◎ つぎに、最近の電力需要の動きについて。
  本日、1月の販売電力量の速報がまとまったお手許の資料-2の1頁、右上の表をご覧いただきたい。
○ 1月の10社の販売電力量は、電灯電力合計で696億kWh、昨年に比べて▲1.1%となった。 販売電力量合計でマイナスとなったのは、一昨年12月(▲0.6 %)以来、13か月ぶりとなる。
 これは、相変わらずの産業用需要の落ち込みに加えて、昨年に比べて気温が高めとなったことなどから(12月・1月の 10都市平均気温+0.2℃ ・ +0.8℃ 最高気温+0.5℃ ・ +1.1℃)、暖房需要が減少し、これまで堅調であった電灯や業務用電力など生活関連需要についても、それぞれ+0.8%、+2.2%(12月は+5.3%、+4.3%)と低めの伸びになったことによるものと考えられる。
○ 景気との関連が深い、契約電力500kW以上の産業用の大口電力需要についても、1月は ▲ 5.3 %と13か月連続のマイナスとなった。しかも昨年1月にマイナスに転じて以降、最も大きなマイナス幅となっている。
 ちなみに、▲ 5.3 %は、円高不況であった87年2月の ▲5.7%以来約12年ぶりの落ち込みである。 ○ このように、景気は、電力需要から見るかぎり、依然として厳しい状況が続いている。
○ 政府の主な経済指標をみても、厳しい状況を示す数値ばかりだが、今後の電力需要の動きを、期待を込めて注目してまいりたい。  
○ 私からは以上。