異常気象とエネルギー

vol.16

村山 貢司 氏

気象予報士 一般財団法人 気象業務支援センター専任主任技師

村山 貢司 氏

1949年東京生まれ。
72年から日本気象協会。
96年に気象予報士資格を取得。
2003年より現職。
1987年4月から2007年3月まで、NHKの気象解説を担当した。
専門の気象にとどまらず、異常気象と地球環境問題などとのかかわりも含め、分かりやすい解説に定評がある。エネルギー問題にも積極的に発言。
また、花粉症の専門家として精力的に活動する。著書も多数。

近年日本や世界を襲う異常気象は頻繁に発生するだけではなく、その規模が非常に大きくなっている。
2014年は異常気象で明け暮れた一年であったが、過去10年間大きな災害を起こした異常気象は毎年3回から6回ある。
この10年のうちで豪雪によるものが4回もあることは、温暖化による異常気象が単に高温の方に変化しているのではなく、非常に変動が大きくなっていることを示している。

温暖化の原因が主に二酸化炭素の増加であり、世界はいかに排出量を減少させるかという問題で論議を続けている。
しかし、日本では東日本大震災以降は原発の停止、それに伴う火力発電の増加によって温暖化対策は停滞どころか後退しているような状況である。
震災前までの日本の温暖化対策は大雑把に言えば、森林による二酸化炭素の吸収と原子力であった。
長期的には石油や石炭を減らし、原子力と再生可能エネルギーを増加させる方針であったが、事故を契機に全面的な見直しが必要になった。
しかし、原発を廃止か再稼動かだけが議論され、長期的な見通しについて全く議論されていなかった。
再生可能エネルギーの問題も増加させれば原発の問題がすべて解決するかのような風潮が生まれ、再生可能エネルギーをどこまで増加させるべきなのか、そのために周波数や電圧を調整して電力の品質を保つことを含め、送電網をどの程度整備させ、整備に何年必要なのか、といった基本的な問題が取り残されたままである。
原発に関しては、国が厳しい基準を作り、各地の原発はそれを満たすべく努力しているが、その原発も今の法律では運転期間が原則40年とされている。
新たなエネルギー体系を構築していくために残された時間は短いのである。
必要なのは「安全が確認された原子力発電を使用しながら、その中で再生可能エネルギーの適切な増加、エネルギー効率の向上、省エネのさらなる推進」を行うことであろう。

今すぐにやらなければならないのは、老巧化した火力発電を熱効率の高いもの、つまり、二酸化炭素の排出が少ないものに変えていくことで、これは誰にも異論はないであろう。

2015年1月14日寄稿