復興加速のために今だからこそ正しい選択を。

vol.04

グロービス経営大学院 学長
グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー

堀 義人氏

京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了。住友商事(株)を経て、1992年(株)グロービス設立。若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur's Organization 現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選ぶNew Asian Leaders日本代表など歴任。経済同友会幹事。
著書に『創造と変革の志士たちへ』『吾人の任務』など

Web site
http://www.globis.co.jp/

グロービスの堀義人代表は昨年8月、「エネルギー政策」をテーマにソフトバンクグループの孫正義社長と公開討論を行った。
脱原子力を主張する孫社長に対し、堀代表は「電力安定供給論者」として原子力の重要性を訴えた。定期検査中の原子力の再稼働が進まず、経済へのダメージも顕在化している今の状況についてどう考えるか話を聞いた。

約3時間半にもおよんだ激論はインターネット動画でも公開され、大きな話題を呼んだ。

「私は東日本大震災が起こってから『Project KIBOW』(きぼう)という名のプロジェクトを立ち上げ、福島も含め被災地をまわっている。
被災地の方々と意見交換する中で聞いた『友人や親族を亡くしたが、生き残った者として笑われないような生き方をしなければならない』という言葉が強く印象に残っている。たとえ嵐のようにバッシングを受けたとしても『正しいことは正しい』と、きちんとした場で発言するのは自分の責務だと思っている。だからこそ孫社長との討論に挑み、多くの人がネット上で見守る中で原子力の重要性を説いた」

脱原子力を望む声も多い。

「脱原子力を進めれば化石燃料への依存度が高まり、エネルギー安全保障やCO2(二酸化炭素)排出の面で懸念が増す。経済面では電力コストや貿易収支が犠牲になり得る。
日本が蓄積してきた原子力技術の優位性が失われる可能性もある。日本の競争力が失われると巨額の財政赤字を返済していくのが難しくなり、将来世代に借金を残すことになってしまう。失業率の上昇も避けられない」「そもそも、エネルギー政策は、エネルギー安全保障、CO2排出削減、経済性などを含めた総合的な視点から、100年先を見据えて考えるべきもの。
安全保障で言えば『多様化』がカギを握る。石油、石炭、LNG(液化天然ガス)、原子力、再生可能エネルギーなど、できるだけ多様化を図りながらエネルギーを使っていく必要があるが、再生可能エネルギーは安定性やコストに課題がある。電源構成は、原子力が3分の1程度、火力が3分の1から半分くらいで、残りを再生可能エネルギーで賄うという姿が妥当ではないか」

定期検査中の原子力を再稼働できない状況が続いている。

「再稼働が先に延びるほど経済が停滞し、復興が遅れる。政府は発送電分離をはじめ電力自由化の議論を本格化しているが、いまはそんなことを議論している状況ではない。もちろん安全性の確保が大前提であるが原子力の再稼働や、福島第一の事故に伴う賠償の迅速化など、国民にとってリターンが大きい足下の課題の解決に全力をあげるべきだ」