FOCUS

2017.11

エネルギー基本計画に関する議論がスタートしました

国の総合資源エネルギー調査会・基本政策分科会において、「エネルギー基本計画」の議論が開始されました。この計画はエネルギー政策基本法に基づき少なくとも3年に1度検討・見直しを行うことが求められているもので、最近の情勢変化や、2030年度のエネルギーミックス実現に向けた電源ごとの課題等を整理し、将来に向けたエネルギー政策の方向性が示される見通しです。

震災以降の情勢変化を踏まえ2030年度に向けた課題を議論

8月9日から検討が開始された基本政策分科会では、東日本大震災から6年間の情勢変化について、原油価格の下落や温室効果ガス削減に向けたパリ協定を巡る動向、拡大する世界のエネルギー・電力市場などの課題が紹介され、現実を見極めながら議論してほしいなどの意見が出されました。
再生可能エネルギーについては、発電価格は低下傾向にあるものの、ドイツなどと比べて依然割高であること。太陽光発電の急激な普及にともなう大幅な出力変動への対応が必要である一方、その対応に必要となる火力電源への投資が、電力自由化の進展により進まないのではといった懸念も示されています。

出典:総合資源エネルギー調査会・基本政策分科会資料より作成

原子力を巡る動きとしては、安全を最優先に新規制基準への対応を行った結果、5基が再稼働し、化石燃料の調達コストや二酸化炭素(CO2)排出量が削減されました。一方、引き続き社会からの信頼回復が最大の課題であるとともに、再稼働や廃炉を進めていくためには、技術や人材の確保が必要であると示されました。
また、30年度目標の進捗状況について、ゼロエミッション電源比率やエネルギー自給率は16年度(推計値)でわずかに改善したものの目標とは依然大きな差があることが示されました。電力コストも燃料価格の下落で足下では改善していますが、今後、原油価格が再び上昇する可能性もあります。加えてFIT※による買取費用は年々増加を続けており、2017年度は2.7兆円に達する見通しであるなど、国のエネルギーミックスでの目標とする30年度の水準(3.7~4.0兆円)に急速に近づいており、さらなる電力コスト増となる懸念が指摘されています。

※FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)再生可能エネルギーで発電した電気の全量を、一定期間、国が定めた固定価格で電力会社が買い取ることを義務付けた制度。

特定の電源・燃料に偏らないバランスのとれた供給構造を

14年に策定された現行計画では、S+3Eの観点から、特定の電源や燃料に過度に依存しないバランスのとれた供給体制を構築する重要性が示されるとともに、原子力発電を「エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と位置付け、原子燃料サイクルについても、引き続き「推進する」ことなどが明確化されています。

一方、2050年を視野に入れた長期的なエネルギーの将来像については、「エネルギー情勢懇談会」において並行して検討が行われています。世界全域で地政学上の緊張関係が高まり、主要国がエネルギー・経済領域の拡大を指向する状況の中で、資源が少なく自給率が極端に低い日本のエネルギー構造をどのように捉え、戦略を構築していくか。さらには、2050年に温室効果ガスを80%削減するパリ協定の目標達成に向けた対応を探る場として、様々な論点が提示されています。

エネルギー政策は国民生活や経済活動の基盤を支える国の根幹をなす政策です。電気事業者としては、日本の実情を踏まえた現実的な議論を期待するとともに、特定の電源に偏らない供給構造を目指すことが重要だと考えています。
とくに3Eのバランスに優れる原子力発電の果たす役割は大きく、安全の確保、技術・人材基盤維持の観点からも、将来にわたって一定規模確保することが必要です。足下での再稼働のみならず、中長期的には新増設・リプレースが自ずと必要になるものと考えています。

出典:エネルギー情勢懇談会資料より作成

低炭素社会の実現に向けて自主的な取り組みを進めています

電気事業に従事する企業42社で構成する電気事業低炭素社会協議会は、 2016年度の二酸化炭素(CO2)排出実績を公表しました。原子力発電所の再稼働などにより、CO2排出量、CO2排出係数とも15年度と比べて改善しました。

原子力の再稼働や高効率火力が寄与

16年度のCO2排出実績(速報値)は、CO2排出量が4.31億トン、CO2排出係数は販売電力量1キロワット時当たり0.516キログラムとなり、前年度実績※との比較でCO2排出量は2.4%、CO2排出係数は2.8%減少しました。
これは、四国電力伊方発電所3号機の再稼働により原子力発電電力量が増加したことに加え、最新鋭の高効率火力発電設備の導入、再生可能エネルギーの活用などに継続的に努めたことによるものです。
協議会では、業界の自主目標として、30年度のCO2排出係数を0.37キログラム程度に抑制することを目指しています。その目標達成のためには、100万kW級の原子力発電所が1年間稼働した場合、約290万トンのCO2削減効果があることからも、原子力発電所の再稼働が必要だと考えます。

電気事業連合会としても引き続き、「安全確保を大前提とした原子力発電の活用」や「再生可能エネルギーの活用」、「火力発電の更なる高効率化と適切な維持管理」などに努めながら、目標達成に向けた取り組みを進めてまいります。

※2015年度実績-CO2排出量:4.41億トン、CO2排出係数:0.531キログラム

出典:電気事業低炭素社会協議会資料より

使用済燃料の貯蔵能力拡大に取り組んでいます

電力9社と日本原子力発電は、2015年に提示された国の「使用済燃料対策に関するアクションプラン」に基づき、「使用済燃料対策推進計画」を策定して、使用済燃料の貯蔵能力の確保・拡大に取り組んでいます。

安全・計画的な対策により使用済燃料を適切に管理

使用済燃料は再処理工場に搬出されるまでの間、各原子力発電所で安全を確保しながら、計画的に貯蔵管理されています。主な貯蔵方法としては、使用済燃料プールで冷却する「湿式貯蔵」と冷やされた使用済燃料をキャスクと呼ばれる安全機能を備えた容器にて貯蔵する「乾式貯蔵」の2種類があります。

湿式貯蔵における貯蔵能力を拡大する具体的な方法としては、収納するラックの材質を交換することで、安全性を確保しつつ間隔を狭めることにより、既存の使用済燃料プールの大きさを変えることなく貯蔵能力を拡大する「リラッキング」があります。
一方で、乾式貯蔵は、施設設置場所の柔軟性、輸送の利便性などに優れています。国内では、日本原子力発電東海第二発電所の敷地内で実績があるほか、青森県むつ市のリサイクル燃料備蓄センター(中間貯蔵施設)で準備が進められています。さらに、昨年12月には、四国電力が伊方発電所の敷地内に、乾式貯蔵施設を設置する検討を進めていくことを表明しています。

事業者としては、貯蔵方式の多様化などに対応する技術検討や理解活動を進めています。引き続き、地域の皆さまのご理解をいただきながら、原子力発電所の内外を問わず中間貯蔵施設や乾式貯蔵施設などの建設・活用を推進し、貯蔵能力拡大に必要な対策を安全かつ計画的に実施してまいります。

日本原子力発電東海第二発電所に設置されている乾式貯蔵施設