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[フィンランド] フィンランドの2社 SMRを活用した地域熱供給で合意

2023年10月19日

フィンランドのヘルシンキ市が保有するエネルギー企業のヘレン(Helen)社は10月3日、同社の供給地域に小型モジュール炉(SMR)で無炭素な熱を供給するため、熱供給用SMRの商業化を目的に設立されたスタートアップ企業のステディ・エナジー(Steady Energy)社と基本合意書を交わした。


フィンランドで発電や熱エネルギーの生産を迅速かつ低コストで脱炭素化するにはSMRが最も有望との認識に基づくもので、両社は原子力で地域熱供給の脱炭素化を図るとともに熱エネルギー価格の変動を安定化、フィンランド全体のエネルギー供給を支えていく。
地域熱供給における化石燃料の利用停止は最も重要な目標であり、ヘレン社はステディ社から熱出力5万kWの熱供給用SMR「LDR-50」を最大10基調達し、2030年までにヘレン社の事業が排出するCO2を実質ゼロ化していく。
同社の地域熱供給ネットワークは全長1,400kmに及び、北欧諸国の中で最長だが、このネットワーク全体の脱酸素化により国家レベルの地球温暖化防止策になるという。


一方のステディ社は、フィンランド国営の「VTT技術研究センター」から今年スピンアウトした直後の企業で、この6月にSMRを活用した地域熱暖房プラントの建設に向けて、約200万ユーロ(約3億1,300万円)の研究開発資金を調達した。
VTTが2020年から開発中の「LDR-50」を複数基備えた熱暖房プラントを2030年までに完成させ、地域熱供給業など様々なエネルギー集約型産業の脱炭素化を目指している。


今回結ばれた基本合意書で、両社は原子力による熱エネルギーの生産に向けて、投資前協定を今後6か月以内に締結できるよう計画を立てる。
フィンランド国内で熱供給用のSMRを建設するには法的措置が必要になるため、この投資前協定を2024年から2027まで有効なものとし、この間に原子力法の改正を推進し、立地許可や設計審査を申請。
建設するSMRプラントの契約価格も固めたいとしている。


ヘレン社のO.シルッカCEOは、「ステディ社との合意に基づいて、原子力による熱エネルギーの生産をフィンランドで開始し、同様の熱エネルギー生産のための基盤を築く」と表明。
この目標に向けて、ステディ社のみならずその他のエネルギー企業や政府機関、政策決定者などとも協力していくと述べた。
ヘレン社はこのほか、2022年11月にSMRなどの新たな原子力発電所建設に向けて、国内の原子力事業者であるフォータム社と協力の可能性を共同で調査すると発表している。


ステディ社のT.ニューマンCEOは、「フィンランドのSMR技術を2020年代中に実行する重要な道筋が付いた」と表明。
化石燃料を燃焼せずに地域熱供給を行えれば、フィンランドのCO2排出量を8%削減することも可能だとした。
また、「当社の目標は新たなクリーン・エネルギーの輸出にも取り組み、世界中の地域熱供給市場に参入することだ」と指摘、原子力による熱供給にはCO2排出量の削減で大きな可能性があると強調した。


(参照資料:ヘレン社ステディ・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

【情報提供:原子力産業新聞

 

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