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[EU] EC欧州のSMR産業アライアンス設置へ

2023年11月24日

欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)のK.シムソン・エネルギー問題担当委員は11月7日、EU域内で小型モジュール炉(SMR)の建設を加速し、熟練の労働力を含めた堅固なSMRサプライチェーンを確立するため、「欧州SMR産業アライアンス(European Industrial Alliance on SMRs)」を設置すると発表した。


これはEU域内の原子力産業界や研究機関、原子力規制当局等の要請に基づくもので、エネルギー・ミックスにSMRを加えると決めた加盟国が今後10年以内にSMRを自国で建設し、それぞれの脱炭素化目標達成に活用できるよう、ECは2024年初頭のSMR産業アライアンス設置を目指すとのこと。


シムソン委員のこの発表は、ECがスロバキアの首都ブラチスラバで開催した「欧州原子力フォーラム(ENEF)」の冒頭演説で明らかになった。
同委員はその前日、「欧州におけるSMR協力」の関係イベントでも同様の発言をしており、「欧州が原子力の技術面や産業面でリーダーシップを維持することは重要であり、ECにはSMR産業アライアンスの設置を進める準備ができている」と表明していた。


同委員によると、SMR産業アライアンス設置の背景には、EUが2050年までのCO2排出量実質ゼロ化に向け、次の10年間に野心的な削減目標を達成するには、再生可能エネルギー等のあらゆる低炭素電源が必要になる。
域内では脱炭素化のみならず電力供給の確保など、多くの課題の解決に原子力の果たす役割が改めて注目されており、いくつかの加盟国は従来の大型炉開発の先にあるSMR技術に強い関心を抱いている。
こうした状況から、同委員は「SMR技術を完成させる上でEUが主導的な役割を果たせると確信しているが、それには遅くとも10年以内に最初のSMRを欧州の送電網に接続することを目標に定めねばならない」と指摘した。


また、欧州原子力産業協会(nucleareurope)はSMRについて、CO2を多く排出する産業部門の脱炭素化に有効なほか、雇用を生み出すとともに、EU経済の成長にも資するなど、数多くの恩恵をEU域内にもたらすと強調している。
同協会のY.デバゼイユ事務局長は、「資金調達や安全な設計、建設と運転といった条件の特定などSMRアライアンス設置の前提基盤は、その前身としてECが設置した『欧州SMRプレ・パートナーシップ』が築いたものだ」と指摘。
「ECがこのような重要技術の将来的な活用に全面的な支援を表明したことは非常に喜ばしい」と述べた。


EU域内でSMRの安全で効率的、かつ確実な開発を促すため、同アライアンスは以下の4分野に集中的に取り組む。


・ エネルギー多消費産業が必要とするエネルギー需要量とSMRが提供できる解決策について、市場が積極的に取り組むことを奨励する。
・ SMR開発を財政面で支えるため、開発リスクとリターンをシェアするコスト分担型の協力や個々の開発プロジェクトへの資金援助等を検討する。
・ EUサプライチェーンにおけるSMRの活用レベルを高め、熟練労働力の確保に向けた教育・訓練が強化されるよう、原子力産業界の中で十分な体制を整える。
・ SMR関係の技術革新と研究開発を支援するため、関係プログラムの推進に必要な資源を特定する。


(参照資料:EC欧州原子力産業協会の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

【情報提供:原子力産業新聞

 

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