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[UAE] UAE SMRやマイクロ炉の導入に向け米国ベンダー3社と覚書

2023年12月21日

アラブ首長国連邦(UAE)で原子力発電プログラムを担当する首長国原子力会社(ENEC)は、連邦内での小型モジュール炉(SMR)やマイクロ原子炉の導入に向けて、12月3日から5日にかけて、これらを開発している米国ベンダーのGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社とテラパワー社、およびウェスチングハウス(WH)社の3社と、相次いで協力覚書を締結した。


これらの覚書は、11月30日から12月12日までUAEのドバイで開催されている「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)」の会期中に結ばれた。
ENEC社はその開幕の前日、先進的な原子炉技術を通じて連邦の脱炭素化を加速するという「アドバンス・プログラム(ADVANCE Program)」を始動しており、3件の覚書締結は同プログラムの一環ということになる。


UAEでは現在、連邦初の原子力発電設備となるバラカ発電所(韓国製の140万kW級PWR×4基)の建設が順調に進展中。
連邦原子力規制庁(FANR)は11月17日に同発電所の4号機に運転許可を発給しており、2024年の起動が見込まれている。
ENEC社によると、すでに営業運転を開始した1~3号機はアブダビ首長国におけるクリーン電力の80%以上を賄うなど、UAEの発電部門や重工業などエネルギー多消費産業の脱炭素化は大幅に進んでおり、2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化するというUAEの目標達成に大きく貢献している。


ENEC社は「アドバンス・プログラム」でこのような大型炉の建設経験と国際的な先進的原子炉サプライヤーのネットワークを統合、エネルギー多消費産業の脱炭素化を一層加速して、世界のクリーン・エネルギーへの移行を主導していく方針だ。
同プログラムでは、SMRやマイクロ原子炉など最新の原子力技術を評価し、国内関係者や国際的なパートナーらとともにこれらの原子炉の建設に向けた具体的な道筋を決定付けるとしている。


ENEC社はまず、12月3日にGEH社と協力覚書を締結しており、同社製SMR「BWRX-300」をUAEのみならず、中東地域やアフリカで建設する機会を共同で模索するとした。
「BWRX-300」は電気出力30万kWの軽水炉型SMRで、2014年に原子力規制委員会(NRC)から設計認証を取得した同社製原子炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」の技術や機器を最大限に活用している。
両社は「BWRX-300」のように小型で経済的、かつ柔軟性の高い運転が可能な原子炉で安価なクリーン電力を生産し、エネルギーの持続可能性や脱炭素化を追求する世界の潮流に歩調を合わせていく。
この協力はまた、UAEが米国と進めているクリーン・エネルギーの促進イニシアチブ(U.S.-UAE Partnership for Advancing Clean Energy=PACE)の目標を達成する一助にもなるとのこと。


ENEC社はまた、4日にテラパワー社と協力覚書を締結、署名式にはテラパワー社のビル・ゲイツ会長が同席した。
同社が開発した電気出力34.5万kWのナトリウム冷却高速炉「Natrium」で、送電網の安定化やクリーン・エネルギーへの移行促進に向けた共同評価を行う方針。
「Natrium」は溶融塩を使ったエネルギー貯蔵システムを組み合わせることにより、発電所のピーク時の電気出力を50万kWまで拡大して5時間以上稼働できるなど、コスト面の競争力が高いという。
「BWRX-300」と同じく、「Natrium」を中東地域やアフリカ、南アジア地域でも建設することを目指し、両社が結んだライセンシング契約や「PACE」イニシアチブに基づいて「Natrium」の商業化を世界規模で進めていく。


ENEC社はさらに、5日にWH社と協力覚書を締結しており、同社製のマイクロ原子炉「eVinci」をUAEやその他の国で建設し、CO2排出量実質ゼロ化に貢献する可能性を共同で研究する。
「eVinci」は電気出力が最大0.5万kW、熱出力は1.3万kWで、遠隔地や鉱山等での熱電併給が主な目的だが、エネルギー供給保障や地球温暖化の対策としても解決策になり得るという。
ENEC社はアドバンス・プログラムの牽引役としてSMRやマイクロ原子炉の技術を評価し、今後の建設につなげる考えだ。


ENEC社のM.アル・ハマディCEOは、COP28 に向けたUAEのメッセージとして「原子力はCO2排出量の実質ゼロ化に不可欠のエネルギー源であり、UAEのクリーン・エネルギー化戦略においても中心的役割を担っている」と強調した。


(参照資料:ENEC社の発表資料WH社テラパワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

【情報提供:原子力産業新聞

 

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