太田電事連会長定例記者会見発言要旨

(1999年7月23日)



◎ 本日は、電事連会長就任後はじめての会見であると同時に、中部電力社長としての会見でもある。 どうかよろしくお願いしたい。

◎ まず電事連会長として、最近の電力需要の動きと、この夏の電力需給の見通しについて申し上げたい。
○ お手許にお配りした資料-1の1頁目、「電力需要実績速報」の右上の表をご覧いただきたい。
○ 6月の10社の販売電力量は、電灯・電力合計で623億 kWhとなり、前年に比べ1.2%の増となった。
○ これを用途別に見ると、生活関連需要では、6月の上旬・中旬の気温が前年に比べて高かったことによる冷房需要の増加などから、家庭用の電灯、オフィスビルなどの業務用電力ともに、それぞれ対前年比2.6%の増、2.3%の増とプラスの伸びとなっている。
○一方、景気と関連の深い産業用の「大口電力」については、▲0.7% とマイナス幅は減少しているものの、景気低迷による生産調整の影響が依然続いており、昨年1月から18か月連続でマイナスの伸びとなっている。喜べない記録だが、18か月連続のマイナスは、過去最も長かった第1次オイルショックの時(1974年6月〜 1975年11月)と並ぶ、1位タイの長さである。
○しかし、変化の兆しも見えつつあるようだ。業種別にみると、「セメント」や「繊維」が、依然大幅に前年を割り込んでいるものの、全ての業種でマイナス幅が縮小しており、一部の業種では前年並みの水準まで回復してきている。 また、各社別でも、2頁目をご覧いただきたいが、北海道電力、四国電力を除く各社でマイナス幅が縮小しており、東京電力(100.00%)をはじめ数社でほぼ前年並みの水準となっている。
○月例経済報告等を見ても、雇用や所得環境などには改善の兆しが見られないし、民間設備投資の落ち込みも続いているなど、確たることを申し上げられる状況にはないが、電力需要の動きから察するに、景気は依然厳しい状況ながらも、一部に明るい兆しも見え始めているようである。

◎ こうした状況のなかで、これから一年を通じて電気が最も多く使われる夏本番を迎えることになる。
○ 皆さんご承知のとおり、夏の電力需要を左右する最大の要因は気温であるが、気象庁の7〜9月の長期予報によれば、今年は暑い夏になる可能性が高いとのことだ。
○ お手許の資料-2をご覧いただきたい。私ども電力10社は、この夏の最大電力、いわゆるピーク需要の見通しを1億7,664万kWと想定している。
○ 実は、10社の最大電力は、猛暑であった1995年度に、過去最高の 1億7,113万kW を記録して以来、この3年間記録を更新していない。2年以上更新しなかったことは、初めてであり、オイルショックの際にも経験がない。
○しかしながら、資料の2頁のグラフにあるとおり、記録を更新していないこの3年間(96〜98冷凍年度)だけでも、ルームエアコンは2,200万台も売れており、さらに今年度も680万台程度の出荷が見込まれている。こうしたことからも、先ほど申し上げたとおり、全国的に通常の暑さとなった場合には、過去最高であった95年度の記録を550万kW程度上回る可能性は十分にあると考えている。
○一方、こうした夏の需要に対する供給力については、資料の2頁右の表をご覧いただきたい。火力を中心に電源設備の増強が進むとともに、今年から新たに約100万kWのIPPが順調に運転を開始しており、供給力は昨年夏よりもさらに400万kW程度増加し、夏場を通して12%程度の予備率を確保できる見通しである。
○また、こうした供給力の増強とあわせて、需要面から電力ピークのシフトやカットを行うDSM=デマンド・サイド・マネジメントについても、積極的に取り組んでいる。
○いくつか例をあげると、資料の3頁の右をご覧いただきたいが、料金制度によるDSMのひとつとして「需給調整 契約」がある。 これによるピークシフト効果は、全国で約950万kWにもなっており、昨年の夏よりもさらに約45万kW増えている。
○このほか、「エコ・ベンダー」や「エコ・アイス」とい った蓄熱型のシステムや機器の普及にも積極的に取り組んでいる。
○ ピークシフトができる飲料用の自動販売機「エコ・ベンダー」は、1995年に導入を開始して以来、電力各社が奨励金を出して製造・普及を後押ししたことなどにより、わずか5年足らずで全国で約68万台も普及した。 これは、全国にある飲料用の自動販売機、約209万台の3割に相当し、ピークシフト量も1台あたりは小さいものの、全体で34万kWにも達する。
○ また、氷蓄熱式空調システム「エコ・アイス」も、徐々に数が増えており、今年4月末までの設置軒数は、全国で約4,200軒、ピークシフト効果も約25万kWとなっている。
○こうしたDSMによるピーク需要のシフトやカットは、電力供給設備の増加の抑制や効率的な運用につながり、長期的には供給コストの低減に役立つことから、今後とも一層の普及拡大に努めてまいりたいと考えている。

◎つぎに、中部電力社長として、現在、中部地域で進められている主要プロジェクトについてご紹介したい。
○ご承知のとおり、中部地域は、製造業を中心に「モノづくり」の拠点として発展を遂げているが、21世紀に向けてさらなる発展を目指すために、ベンチャーの育成や新たな産業の創出が課題となってきている。加えて、中部地域を国際的な文化や人材の交流拠点の機能を併せ持った地域にする必要がある。
○こうした地域づくりを進めていくためのきっかけとして現在、2005年に開催予定の「愛知万博」と、「中部国際空港」の2大プロジェクトの準備が精力的に進められている。
○ 両プロジェクトに対する地元の期待は非常に大きいものがあり、中部電力としても、これらが是非とも成功するよう、できる限りのお手伝いをさせていただきたいと考えている。
○ せっかくの機会なので、各プロジェクトの進捗等について簡単にご説明させていただきたい。 まず、愛知万博については、平成9年の誘致決定以来、環境と調和した21世紀にふさわしいイベントとするべく、各界からコンセプトやアイデアを募って会場の構想等について検討を行ってきた。
○ こうしたなか、マスコミ等でも取り上げられ、ご存じの方もおられると思うが、今年5月に、会場予定地となっている愛知県瀬戸市の、通称「海上(かいしょ)の森」で、「オオタカ」の巣が確認され、その保護と会場建設とをめぐって、議論が起こった。
○ 結局、愛知県が国とも協議した結果、計画の一部変更と分散開催の方針が表明され、オオタカと共存しながら会場 を建設することとなった。 地元のマスコミの方々の関心も高かったし、「自然との共生」をコンセプトに掲げている万博であるだけに、私も、最良の判断だったと、ホッと胸をなでおろしている。
○ 今後、分散開催に向けて、計画の見直作業が本格化すると思うが、建設費や会場間の観客輸送、あるいは電力供給などの課題についても、知恵を出し合い、解決してまいりたいと考えている。
○ 今回のオオタカ問題では、愛知万博を全国に知らしめる ことになった。 国際博を成功させるためには、全国的な盛り上がりがぜひとも必要である。私も機会あるごとにPRさせていただこうと思っている。皆さん方にも、ぜひご協力をよろしくお願いしたい。

◎ 次に、中部国際空港についてであるが、昨年5月に事業主体である「中部国際空港株式会社」が設立され、利便性・経済性に優れた24時間運用可能なハブ空港を実現すべく全力で取り組んでいる。○ 目標である2005年に開港するためには、今年度中の着工が不可欠であり、最大の課題である漁業補償交渉も正念場を迎えている。 現在、神田愛知県知事が直接交渉にあたられており、これによって事態が前進し、何とか年度中の着工にこぎつけることができることを期待している。
○ また新空港へのアクセスについては、愛知県常滑市と空港島を結ぶ連絡鉄道の事業主体となる第三セクター「中部国際空港連絡鉄道株式会社」がこの6月に設立され、当社も出資という形で参画している。先輩格である成田、羽田、関西などの例をみても、良い空港の条件として、便利なアクセスが欠かすことができないわけで、開港に向けて大きな弾みがついたと思っている。

◎ 最後に、日本にとって重要なプロジェクトのひとつである「首都機能移転」について、一言申し上げたい。
○ 中部地域における移転候補地としては、まず、愛知・岐阜・静岡の3県にまたがる「東海地域」がある。具体的には、「岐阜東濃地域」、「西三河北部地域」、「東三河南部地域」、「静岡県西部地域」の4つがある。 もう一つは、「三重・畿央地域」で、具体的には、三重県・滋賀県・京都府・奈良県の4府県にまたがる「畿央高原地域」と「三重鈴鹿山麓地域」がある。
○ 今年秋(11月)の移転先候補地の選定に向け、国会等移転審議会の検討作業も佳境を迎えている。こうしたなか、この7月8日には経団連と全国の8つの経済連合会が、国会や政府に対し移転事業を着実に進めるよう求めた「共同宣言」を採択した。
○ こうした問題は、ともすれば各候補地域の誘致合戦に陥りがちであるが、首都機能移転を日本全体の問題として捉え、国民的議論の盛り上がりの契機となるという意味で、全国の経済団体が歩調を合わせた今回の取り組みは、たいへん有意義だと思う。 ぜひ今後は、首都機能移転の意義や必要性といった根本からの議論が深まることを期待している。 
○ 私からは以上。