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2025.07

北海道電力泊発電所
安全を最優先に早期再稼働を

①万一の外部電源喪失時、非常用ディーゼル発電機も稼働できない場合に備え配備された代替非常用発電機。この周辺にも火災感知設備を設置する ②新たな防潮堤の設置工事の様子(2025年6月) ③厳冬の中、シビアアクシデント対応チームが取り組む非常用電源と建屋を接続するケーブルの敷設訓練(2024年、北海道電力提供)

泊発電所は北海道唯一の原子力発電所です。一時は道内の電力供給の約4割を支えましたが、2012年5月に3号機(PWR、91万2000kW)が定期検査に入って以降、いずれのユニットも稼働していません。北海道電力は2027年のできるだけ早期の再稼働を目指して、地中の強固な岩盤に新たな防潮堤(高さ海抜19m)を直接設置する安全対策工事などを行っています。

制御保修課総括主任の向中野佑(むかいなかの・たすく)さんは、火災防護についての設工認審査資料作成と、火災防護設備の詳細設計を担当しています。

具体的には、建屋内外の防護すべき設備に対し、火災を早期に感知するために火災感知器をどう設置するか検討します。柱や装置などが火災の感知を遮る可能性が少しでもないか、広大な発電所の設備一つ一つを図面だけでなく、現地で丹念に調べ、設計に反映します。

「泊発電所を新規制基準に適合させるため、該当する文書を何度も読み返し、要求事項をより深く理解するよう努めました」と振り返ります。施工会社は必ずしも新規制基準の要求事項を熟知しているとは限らないことから、「百聞は一見にしかず」の精神で、共に現場を確認するなどして認識の共通化を図ります。

現在、泊発電所では多くの人が携わり各種安全対策工事が並行して進められています。向中野さんは「北海道では次世代半導体工場やデータセンターなどが稼働予定です。電力需要増加への対応と脱炭素実現の両立に泊発電所は重要です。安全最優先で一日も早く再稼働し、北海道、日本の発展に貢献したいです」と意欲を見せます。

(2025年7月18日時点)

※設工認:「設計及び工事の計画の認可」の略。原子力設備の設置、変更、追加工事について技術基準を満たすことを原子力規制委員会が確認し認可する制度

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国の電気・ガス料金補助が再開
「値引き原資」は全てお客さまに充てられます

国による物価上昇対策として、電気・ガス料金への補助が今夏7~9月の使用分を対象に行われます。この制度は電気・ガス料金の上昇によって影響を受ける家計や、価格転嫁が困難な企業の負担を直接的に軽減する措置です。国から交付された補助金を値引き原資として、各小売電気事業者が、国に代行して電気・ガス料金から使用量に応じた値引きを行い、家庭や企業を支援します。

電気については、お客さまが使用された電力量1kWhごとに対し一定額の支援が行われます。一般の家庭で使われる低圧の電気は、7月分と9月分の使用電力量1kWh当たり2.0円、特に暑さが厳しくなる8月分は同2.4円が差し引かれます。

この措置は過去3回(2023年1月~2024年5月使用分、2024年8月~10月使用分、2025年1月~3月使用分)行われてきたものと同様の仕組みで、各小売電気事業者は国から受領した値引き原資を、そのままお客さまの毎月の料金値引きへ反映します。そのため、どの電力会社をお使いのお客さまも、自身での手続きや申し込みは不要となっています。また補助金による値引きに際して、電力会社から個人情報や手数料を求めることはありません。

値引き原資については、全てのお客さまに対する料金値引きの実績が確定した後、国と事業者の間で差額精算を実施し、原資に余剰が出た場合は国庫に返納されます。つまり国から交付された値引き原資は全額がお客さまの料金値引きに充てられることとなり、電力会社が利益を得ることはありません。

電力業界といたしましては、国の支援策に基づいて引き続き適切に協力してまいります。

政府による今夏の電気1kWh当たり支援額
図:支援の仕組み・支援内容