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2025.09
四国電力西条発電所CO2排出削減と安定供給の両立へ 時代と共に進化を

①稼働中の新1号機で聴診棒を用い異常をチェックする大泉さん ②美しい瀬戸内海に調和する西条発電所(四国電力提供) ③石炭の効率的な燃焼を支える微粉炭機
愛媛県西条市は、西日本最高峰の石鎚山がもたらす豊かな水と歴史のまちです。瀬戸内海に面し造船、機械、化学などの産業が集積。その中で四国電力西条発電所は1965年に運転を開始し、地域の電力安定供給を支え続ける発電所です。
当初は石油を主な燃料としましたが、石油危機を経て燃料の多様化が求められると1980年代に豊富な資源である石炭へ転換。環境との調和がより意識された2005年には事業用発電所では国内初の木質バイオマス混焼を開始しました。
2019年には旧1号機の経年化対策やCO2排出原単位低減のため、リプレースに着手。旧1号機は出力15万6000kWでしたが、2023年6月に営業運転を開始した新1号機は蒸気の温度と圧力を高めた「超々臨界圧」で出力50万kWの設備を採用し、発電効率が大きく向上しました。
火力発電には、再生可能エネルギーの出力変動を補う「調整力」としての期待も高まります。そこで新1号機は出力の調整機能を大幅に強化。出力を定格の15%(7万5000kW)に絞っても安定運転できるようにし、細やかなボイラー制御調整で毎分最大3%の出力変化を可能にしました。
同発電所保修課の大泉寿広さんは、入社4年目でタービンや排水処理設備などの保守計画、工事管理を担当しています。今年3月から行われた初の定期点検では機器を分解し、発見された不具合の修繕方法を検討。機器図面などの技術図書の熟読、メーカーや協力会社との密な調整を経て工期内に全工程を終了し、無事、盛夏の供給力として復帰させることができました。
一層のCO2排出減と循環型社会の構築へ向け、この10月に、地域の下水汚泥を乾燥させ、固形燃料化させた「下水汚泥固形燃料」の混焼を開始する予定です。「四国、そして日本の人々へ安定した電力を供給するため、設備の維持管理に努めます。将来の脱炭素へ向け、環境に優しい発電所づくりに貢献したいです」と語る大泉さんら火力の現場に、期待が掛かります。