COVER
PHOTO
2026.01
日本原子力研究開発機構「HTTR」「高温」の強み生かし 次世代炉を未来の選択肢に
①世界でも先端の高温ガス炉研究開発拠点「HTTR(高温工学試験研究炉)」②融点の高いセラミックなどで被覆され放射性物質の閉じ込め性能が高い、粒状の高温ガス炉向け燃料③燃料粒子を焼成した「燃料コンパクト」を、放射線に強く耐熱性が高い六角形の黒鉛ブロックにセットした「燃料体」
世界各国で技術開発が活発化する次世代原子炉。その種類は現在主流の軽水炉を改良した革新軽水炉や、ウラン資源を有効利用できる高速炉などさまざまです。そうした中、日本原子力研究開発機構は高速炉、そして高温ガス炉という新技術に挑んでいます。
茨城県大洗町の同機構大洗原子力工学研究所に設置したHTTR(高温工学試験研究炉)が高温ガス炉研究の拠点です。高温ガス炉は、構成材に耐熱性の高い材料を使用し、核分裂で生じた熱を外に取り出すための冷却材に高温でも安定するヘリウムガスを用いた原子炉で、数百度の高い温度を取り出せることが特徴です。
取り出した高温はガスタービン発電で高い発電効率を得られるほか、水素の安価な製造などへの活用が期待されます。さらに、全ての冷却機能が失われた状態で、制御棒を挿入せずとも原子炉の出力が自然に低下するという固有の安全性を有します。
HTTRは1998年に初臨界した世界をリードする施設でしたが、2011年の東日本大震災を契機に導入された新規制基準への適合に時間を要し、2021年の運転再開まで10年近く稼働できませんでした。一方、中国は2023年に高温ガス炉の商業運転に成功しました。
高温ガス炉プロジェクト推進室の坂場成昭室長は「水をあけられた」と危機感を表します。ただ、950度を取り出せる性能は類例のない日本だけの技術。ライバルがたどりついていない水素製造を「一刻も早く実現し、社会の皆さまに示し脱炭素に貢献を」と意欲を示します。
脱炭素時代のエネルギー供給は単一手段では達成困難です。坂場室長は「高温ガス炉は固有の安全性から工場の近くへの立地が期待でき、水素還元製鉄※や化学プラントとの連携に強みを発揮する」と話します。発電で長年の実績がある軽水炉やその他の炉型とともに、適材適所で原子力が選択される未来を追求します。
※鉄鉱石から鉄を取り出す(還元する)際、コークスの代わりに水素を使用しCO₂排出を削減する製鉄法
