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2026.03

苫小牧エリアCCS事業広がるCCSの可能性 日本、そして世界へ

①CO₂排出源と貯留地が近接する苫小牧エリア(苫小牧港管理組合提供、2025年撮影)②着々と進む試掘作業③試掘井への埋め込みを待つ大量の鋼管

北海道の物流と工業を支える港湾都市・苫小牧市で、CCS(CO₂回収・貯留)の本格実装が進展しています。国が2030年までの事業開始に向けた環境整備を支援する「先進的CCS事業」の一つとして、CO₂を地中へ送り込む圧入井※1の掘削に先立ち、1本目の試掘井※2掘削が進んでいます(2026年2月現在)。

この「苫小牧エリアCCS事業」は石油資源開発(JAPEX)、北海道電力、出光興産が参画。火力発電所や製油所からのCO₂を年間150万~200万トン、計3000万~4000万トンを深さ約1000〜1500mの海底地中に貯留する計画です。

この地にはJAPEXが油・ガス田を持ち、地中構造の知見の蓄えがあります。さらに近隣では同社などが出資する「日本CCS調査株式会社」による計30万トンの貯留実証が2019年までに行われ、実証期間中の2018年に発生した北海道胆振東部地震の際もCO₂の漏出がないことを確認。その後も安定的な貯留が確認されています。そのため同事業の進捗は順調で、全国でもトップランナーといえます。

CCS実現の鍵はコストですが、同事業はCO₂排出源である火力発電所や製油所が貯留地の近隣に位置し、CO₂輸送コストを抑えられることが大きな特長です。一方で、市街地や漁場に近いため地域の理解が必須です。苫小牧は古くからエネルギーをはじめとする産業を誇りとしてきた土地。日本CCS調査の実証段階から行政などとPRを進めており、「地域の皆様のご理解あっての事業であり、CCSが生活や環境に影響しないことについてご説明に努めてきた」と関係者は話します。

試掘井の総延長は4350m。1本目の試掘井掘削は今年6月までに完了させ、7月から2本目の試掘井掘削を開始する見込みで、2026年度末を目標に事業化の判断を行う予定です。貯留地層の存在やCO₂排出源の立地、地域の理解というCCSを行う条件に恵まれた苫小牧で成功例を示し、全国、ひいては海外においても地域の産業と脱炭素に貢献するCCSを広げたい考えです。

※1 圧入井:CO₂を強い圧力で地中へ送り込む井戸
※2 試掘井:CO₂の貯留に適した地層の存在を確認するための井戸