FOCUS1

2019.03

ATENAがフォーラム開催
安全性向上への取り組みで議論深める

原子力エネルギー協議会(ATENA)は2月14日、「ATENAフォーラム2019」を東京都内で開催しました。

共通の技術課題を抽出
対策策定し現場へ導入

ATENAの門上英理事長は、組織設立以降の活動状況に関する報告で、「新技術・新知見の積極的な活用」「自然災害など外的事象への備え」「自主的安全性向上を推進する仕組み」など、原子力産業界が共通して取り組む技術課題を抽出し、具体的な対策の検討を進めていると述べ、現時点での主な取り組みとして、業界の自主的な「サイバーセキュリティ対策ガイドライン」を発行する方針を示しました。

このほか、国内外の関係組織との情報交換に向けた基盤づくりへの取り組み状況が紹介されるとともに、今後、これらの活動の連携を活かしつつ、規制当局との対話や社会とのコミュニケーションを図りながら、原子力産業界全体で自律的・効果的に安全性向上の定着に向けて取り組んでいくとしました。

また、原子力事業者を代表して電気事業連合会の勝野哲会長が、ATENAが決定した安全対策を着実に現場に導入・反映していくことにより、「継続的なリスク低減に努め、社会の信頼回復に取り組んでいきたい」と述べました。

パネルディスカッションでは、「重要電源である原子力発電を安全かつ持続的に利用するための成功要因は」をテーマに、国内外の専門家らが意見を交わしました。

パネリストは、原子力技術を国民生活のために有効利用していくとの前提の下、全体最適でいかに安全確保するかについて、ATENAが規制当局と対話し社会に発信していくことの重要性や、安全性向上に関する国際連携の重要性、原子力の価値を日々の生活と関連付けて社会と共有していくことの重要性などを指摘。また、米国では原子力発電所のパフォーマンス改善の取り組みを持続的に進めた結果として稼働率が向上した実績が紹介されました。

原子力発電の安全かつ持続的な活用に向けて国内外の専門家が意見を交わした

原子力発電の安全かつ持続的な活用に向けて国内外の専門家が意見を交わした

海外で主流となっている
原子力発電所の40年超運転

海外電力調査会 調査第一部 研究員 
松井 亮太

2019年1月現在、世界で運転中の原子炉は約450基ある。一般的に軽水炉(PWR、BWR)では、建設時に運転年数として一定の期間、例えば40年を仮定した健全性評価がなされているが、既に欧米などの14か国で80基以上の原子炉が40年超運転をしている。さらに、ウクライナやチェコなどの国でも40年超運転に向けた準備が進められており、40年超運転は世界のトレンドになっている。

運転期間を延長するためには、延長期間においても安全性を確保することが求められる。そのため、原子力事業者は設備の現状を詳細に把握し、長期運転に際しての安全性を評価し、必要に応じて蒸気発生器などの重要機器の取り換え(リプレース)を行う。また、政府や研究機関では運転期間延長に伴う材料経年劣化の研究やリスク評価ツールの開発などが行われている。

運転期間延長の手続きには、「ライセンス更新(LRA:License Renewal Application)」と「定期安全レビュー(PSR:Periodic Safety Review)」の2種類ある。LRAは運転ライセンスが切れる前に事業者がライセンス更新を申請するもので、規制当局が10~20年のライセンス延長を認可する。一方、PSRは10年ごとに原子炉の安全性を事業者が評価することを義務付けるものである。LRAは米国やロシアなどで採用されており、PSRはフランスや英国などで採用されている。日本ではLRAとPSRの両方が義務付けられている。

現在、米国では98基の原子炉が運転中であるが、既に90基で1回目のライセンス更新(60年運転)が認められている。さらに6基で2回目のライセンス更新(80年運転)の審査が行われており、今後も80年運転の申請が増える見込みである。

フランスも多くの原子炉で40年超運転を行う計画である。原子力事業者のフランス電力(EDF)は安全性が確認できる限り既存原子炉を運転し続ける方針を表明している。

このように世界各国で運転期間延長が行われている理由は、既存原子炉をメンテナンス・設備改修して運転期間延長することがエネルギーセキュリティー確保や温暖化防止に寄与すると考えられているためである。今後、40年超運転の動きはさらに活発化すると予想される。

世界の原子炉の運転年数

(出所:IAEA PRIS等より作成)