2021.02
厳しい寒さ続き電力需給がひっ迫
安定供給維持へ最大限の取り組み
昨年12月下旬から1月にかけて、全国的に厳しい寒さが続いた中で、電力の需給がひっ迫し、皆さまにご不便とご心配をおかけしたことをお詫び申し上げます。また、電気の効率的な使用にご協力いただいた皆さまはもとより、燃料調達にご協力いただいた関係業界の皆さま、自家発電設備の最大限の運転にご協力いただいた皆さまなど、多くの皆さまに感謝申し上げます。
今回の需給ひっ迫に対し、電力業界では総力を挙げ、最大限の対策を講じて供給力の確保に努めました。今後とも引き続き、安定供給の維持に取り組んでいきます。
昨年末から1月にかけては、数年に一度クラスの強い寒波が連続して日本列島に襲来しました。この間は全国的に平年を大きく下回る気温の日が多く(図1)、幅広い地域で強い降雪も発生しました。
厳しい寒さが長期化する中、暖房などで電気の使用頻度と使用時間が増加し、電力需要が大幅に高まりました。それに対応するため火力発電が高稼働となり、貯蔵されている燃料、特にLNG(液化天然ガス)を急速に消費して、在庫が乏しい状況になりました。その結果、電力の供給力(kW)と供給量(kWh)の両面で不足が発生しました。(→参考:SPECIAL ISSUE「kW(電力)とkWh(電力量)の違いって?」)
具体的には、1月前半の沖縄エリアを除く全国の電力需要量は、昨年度の同期間に比べて約1割増加しました(図2)。また、全国的に供給予備率(供給力の余裕)が1~3%と適正範囲を下回る地域も現れました。

火力フル稼働、電力融通も
電力各社では、対策を総動員して電力供給の確保にあたりました。中心となったのは火力発電所の稼働増です。平常時には運転していない高経年化設備も含め、あらゆる発電所をフル稼働させました。また、自家発電設備を持つ企業に電力供給をお願いしたり、石炭火力設備を重油で運転したりといった緊急的な対策も行いました。
加えて、電力広域的運営推進機関と連携し、電力需給に比較的余裕があるエリアから特にひっ迫しているエリアへの電力融通も実施しました。
今回の需給ひっ迫において、特に供給予備率が全国的に低下した際に稼働していた原子力発電所は全国で3基のみ(※)でした。原子力によるベースの電力供給量が少なかったことも、火力に頼る一因となりました。
※1月8日時点、九州電力玄海原子力発電所3号機(118万kW:営業運転)・川内原子力発電所1号機(89万kW:営業運転)、2号機(89万kW:調整運転)

出典:資源エネルギー庁資料より作成
発電用燃料の在庫が急減
これらの対策と皆さまに電気の効率的な使用にご協力いただいた結果、需給が厳しい中でも電力の安定供給を維持することができました。その一方で、想定以上のペースで火力発電の稼働が続いたため、発電用燃料の在庫が急激に減少しました。
発電用燃料には主にLNG、石炭、石油がありますが、特に在庫が不足したのがLNGです。LNG火力は火力発電の中ではCO2排出量が少なく、出力調整も比較的しやすいといった特徴から、発電設備に占めるLNG火力の割合は近年高まっています。しかしLNGは極低温で保管する必要があり、保管中も徐々に気化していくため、事前に大量調達して長期保管するという運用ができません。また、世界的にLNGの需要が高まっている状況や、長期契約が主流の国際取引慣行の影響で、ほしいときにすぐほしい量のLNGを調達するのは難しくなっています。このため、1月初旬以降に燃料不足が顕在化したLNG火力では、出力低下や停止を余儀なくされました。

4項目の論点を検証
今回の電力需給ひっ迫を踏まえ、経済産業省・資源エネルギー庁で、燃料調達や供給能力確保のあり方などについて検証が進められています。
1月19日に開かれた総合資源エネルギー調査会電力・ガス基本政策小委員会では、今後検証・議論すべき論点として、①燃料調達のあり方を含めた安定的な電力供給量の確保のあり方②供給能力確保のあり方③需給ひっ迫時を含めた広域的な安定供給確保に向けた運用面のあり方④より効率的に安定供給を確保するための電力市場のあり方——の4項目が示されました。
具体的には、今冬の需要予測や燃料調達計画は合理的だったか、もし余力がさらに必要だとすればそのコストはどう手当てすべきかといった点や、カーボンニュートラルと安定供給の両立に向けた電源構成、需給ひっ迫で電力市場の価格が高騰したことへの対応なども議論される見通しです。私ども電気事業者としましても、これらの調査検証に最大限協力してまいります。
豆知識「供給予備率」って?
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気象変動による需要の急増や発電機のトラブルなどに対応するためには、予備の電力供給能力を保有しておく必要があります。この供給能力を「供給予備力」、需要に対する予備力の比率を「供給予備率」といいます。
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各エリアの電力需給の見通しや実績、供給予備率などについては、各電力会社ホームページの「でんき予報」でご覧いただけます。
各社のでんき予報へのリンクはこちら
https://www.occto.or.jp/keitoujouhou/
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東京電力パワーグリッドのでんき予報
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