FOCUS

2021.05

2050年カーボンニュートラル実現へ
エネルギーの需給両面から脱炭素化

昨年10月に菅義偉首相が宣言した「2050年カーボンニュートラル」。その実現に向けて電力業界が担うべき役割は大きく、エネルギーの需給両面から、業界全体で脱炭素化の実現に取り組んでまいります。

2050年カーボンニュートラルの実現は非常にチャレンジングな目標である一方、人類の将来のために達成しなければならない目標でもあります。政府は菅首相の宣言の後、昨年12月には「経済と環境の好循環」を目指すグリーン成長戦略、今年4月には「2030年度に2013年度比46%削減」という新しい温室効果ガス削減目標を示し、あらゆる政策を総動員してカーボンニュートラルを実現する方針です。

私たち電力業界でも総力を結集してカーボンニュートラル実現に取り組むべく、電気事業連合会では昨年12月に「2050年カーボンニュートラル実現推進委員会」を設置。知恵や経験を結集して具体的な取り組みについて検討し、次の宣言とともに、ロードマップやアクションプランを策定いたしました。

宣 言

わたしたちは、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、「S+3E」の同時達成を前提に、供給側の「電源の脱炭素化」、需要側の最大限の「電化の推進」に取り組み、持てる技術、知恵を結集し、積極的に挑戦していきます。

電源の脱炭素化

カーボンニュートラル実現までには多くの課題や不確実性が存在します。発電においても従来の低炭素化の延長では不十分で、革新技術を創造するイノベーションが不可欠です。

また、エネルギーは国民生活や経済活動の基盤です。脱炭素化を進める中でも、「S+3E」の同時達成を追求するという基本は変わりません。特に、再生可能エネルギーを含むエネルギー資源の分布や災害・事故時のレジリエンス(強靭性)などを考えると、特定の電源に過度に依存しないバランスのとれた電源構成が重要になります。

【再生可能エネルギー】

脱炭素化には再エネの主力電源化が欠かせません。電気事業者として培った技術、経験、ノウハウを活かしながら、再エネの最大限の導入を進めます。また、再エネの導入を成長の機会と捉え、あらゆる発電事業者、他業界のパートナー、国、研究機関などと連携していきます。

【原子力発電】

原子力は現時点で確立されたカーボンフリーの発電技術です。安全性確保を大前提に、将来にわたって原子力を活用していくことがカーボンニュートラルの実現性を高めます。自主的・継続的な安全性向上や業務改善を通じて安心・信頼の醸成に努めるとともに、既設炉を早期再稼働し最大限活用します。また、小型モジュール炉(SMR)をはじめとする次世代炉を視野に入れたリプレース・新増設により、将来にわたる持続的な活用にも取り組みます。

【火力発電】

火力発電は、再エネが主力になった場合でも、調整力、慣性力、同期化力を維持するために必要です。脱炭素化に向け、足下では石炭ガス化複合発電(IGCC)の開発など、高効率化によるCO2排出削減を着実に進めています。さらにその先では、水素やアンモニアといったカーボンフリー燃料、CCUS(CO2回収・利用・貯留)やカーボンリサイクルの実用化を目指す方針です。

カーボンニュートラルの絵姿
2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組み
2050年カーボンニュートラルの実現に向けた電源の脱炭素化、需要側の最大限の電化イメージ

需要側の切り札は「電化」

脱炭素化は、エネルギーをつくる(供給)側とつかう(需要)側の両面で進めてこそ高い効果が得られます。需要側でも省エネの徹底などは引き続き重要ですが、それだけでは不足で、抜本的な変革が必要になります。その最も有望な方法が「電化」です。

エネルギー源として使用されているものには電気、ガス、石油などがありますが、この中でCO2排出量を最も劇的に減らせる可能性があるのが電気です。需要を電化し、脱炭素化した電源からの電気で動かす。これがカーボンニュートラルへの最短の道筋といえます。

ガソリン車から電気自動車へのシフトはその一例です。住宅やオフィス、工場といった分野においても、空調や給湯などの熱利用をはじめ、電化によってCO2排出を減らすことができる需要は少なくありません。

私たちが目指す社会として、IoTやAI、ロボットなどを取り入れた超スマート社会である「Society5.0」が提唱されています。電気はそれらの情報通信基盤を支えるインフラであり、また、細かい制御が可能で需要側の効率や利便性を高めやすいのも電気です。今後ますます社会における電気の重要性は高まると考えられます。

一方で、非常に高温の熱利用など、技術的に電化が難しい分野もあります。そうした分野では、水素などの脱炭素エネルギー利用を促進していくことが重要です。

社会全体で行動を

カーボンニュートラルの実現に向けては生活様式そのものの変革が必要になるため、社会全体で取り組んでいく意識を醸成することが不可欠です。私たちも、経済合理性などの観点も踏まえながら、さまざまな技術のイノベーションに取り組んでいきます。政府には電源の脱炭素化や電化の最大限の推進を強力に推し進める政策的・財政的措置、必要な設備投資や研究開発投資を促進・支援する措置などをお願いしたいと考えています。

中学校社会科向けSDGs教材「SDGs×電気」のご紹介

  • SDGs×電気

    SDGs(持続可能な開発目標)達成への取り組みを支援するため、エネルギー問題をSDGsの視点から学べる副教材「SDGs×電気」を制作しました。

    電気で動くAIロボットが先生役(声:江口拓也さん)、女優の麻木玲那さんが中学生役となり、資料やデータに基づいてエネルギー問題とSDGsの関わりへの理解を深める内容となっています。ぜひ、ご覧ください。

    動画はこちら

    概要編
    SDGsと電気の関係
    https://www.youtube.com/watch?v=9zeRfuIT7VM

    実践編
    SDGsの目標から見た日本の発電
    https://www.youtube.com/watch?v=gIoHOnaaVSc&t=582s

  • 江口拓也さん

    江口拓也さん

  • 麻木玲那さん

    麻木玲那さん

  • SDGsと電気の関係発電別の二酸化炭素排出量

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