FOCUS2

2023.01

GX実現に向けた基本方針が決定
エネルギー危機への対応を加速

2022年12月の第5回「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」において、GX実現に向けた基本方針が取りまとめられ、2050年カーボンニュートラルの達成と安定的で安価なエネルギー供給につながるエネルギー需給構造の転換を実現するための今後10年を見据えたロードマップが示されました。

GX実行会議は、クリーンエネルギー中心の経済社会システムへの変革に必要な施策を議論するために設置された会議体です。

今回取りまとめられた基本方針は、世界的な脱炭素化の機運の高まりやロシアのウクライナ侵攻を契機としたエネルギー情勢の激変、さらには国内における電力需給ひっ迫やエネルギー価格の高騰を背景に、原子力の持続的な活用を含めたエネルギー安定供給の確保を大前提とした脱炭素の取り組みと、カーボンプライシングの導入・投資促進が大きな柱となっています。

脱炭素効果の高い電源を「最大限活用」

基本方針では、将来にわたってエネルギー安定供給を確保するために、エネルギー危機に耐え得る強靭なエネルギー需給構造への転換が求められるとし、供給サイドにおいては原子力や再生可能エネルギーなど「脱炭素効果の高い電源を最大限活用する」こととされました。

特に原子力は、「安定供給とカーボンニュートラル実現の両立に向け、脱炭素のベースロード電源としての重要な役割を担う」とし、2030年度電源構成に占める原子力比率20~22%の確実な達成に向けて、既設原子力発電所の再稼働を安全最優先で進めることとされました。

加えて、既存の原子力発電所を可能な限り活用するため、運転期間を「原則40年、延長を認める期間は20年」とする骨格は維持しつつ、一定の停止期間について追加的な延長を認めることが示されました。

さらに、将来にわたって持続的に原子力を活用するため、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組むことが示され、まずは廃止決定した炉の次世代革新炉への建て替えを対象とする方針です。

そのほか、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた一つの方策として、地域間連系線を今後10年程度で過去10年と比較して8倍以上の規模の整備に取り組むとともに、北海道からの海底直流送電について2030年度を目指して整備を進めることが示されました。

今回示された方針を踏まえ、我々事業者は、安全を大前提に原子力発電や再生可能エネルギーを最大限活用するとともに、火力発電の脱炭素化、電化の推進など、安定供給確保とカーボンニュートラル実現に向けてあらゆる方策を講じていきます。

脱炭素投資の加速へ

日本の産業競争力強化・経済成長の同時実現に向け、今後10年間で150兆円を超える投資が必要とされ、まずは、国が20兆円規模の「GX経済移行債」(仮称)を創設し、原子力などの非化石エネルギーへの転換、抜本的な省エネの推進等に先行投資支援することで、大規模な脱炭素投資の加速化を図る方針です。

そのための財源として、カーボンプライシング導入の結果として得られる将来の資金を充てることとし、事業者などが削減したCO2排出量を市場で売買できるようにする「排出量取引」を2026年度から本格稼働させるほか、化石燃料の輸入事業者などを対象に取扱量に応じた支払いを求める「炭素に対する賦課金」を2028年度から導入することが示されました。

これらの仕組みについてはこれから具体的な制度設計が行われることになりますが、既存の制度の見直しと合わせた検討が進められる必要があります。とりわけ国民生活への影響はどうなるのかの観点に立ち、経済成長の基盤となるエネルギーの安定供給や社会全体で負担するコストなどへの影響を十分に踏まえた検討が必要です。

今後、基本方針はパブリックコメントを経て、関係法令の改正案が今年の通常国会に提出される予定です。

GXや2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて大きく動き出しましたが、エネルギー政策は国民生活や経済活動の基盤を支える国の根幹であり、安全の確保を大前提としつつ、エネルギーの安定供給・経済効率性・環境への適合の同時達成を目指す「S+3E」の重要性に変わりはありません。

GX実現に向けた基本方針の骨子
三菱重工業が北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力と共同で開発中の次世代革新炉(革新軽水炉「SRZ-1200」三菱重工業提供)

三菱重工業が北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力と共同で開発中の次世代革新炉(革新軽水炉「SRZ-1200」三菱重工業提供)

地層処分の実現に向け取り組みを強化

昨年末の「GX実行会議」では、高レベル放射性廃棄物の最終処分実現に向け、より一層取り組みを強化していく方針も掲げられました。最終処分について多くの皆さまに関心のすそ野を広げていくことを目指した方針の内容を紹介します。

処分地選定の流れは

日本では、使用済み燃料を再処理した後に残る高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の最終処分方法として地層処分を選択しています。地層処分は廃棄物を地表から300m以上の深さにある安定した岩盤に埋めるもので、国内にも実施できる見込みのある場所が存在すると考えられています。

処分地の選定プロセスは3段階の技術的調査を通じて行われます。最初の「文献調査」では地質図や論文などを基に地層処分に不向きな場所でないかを調べます。続く「概要調査」ではボーリング調査などを行い、最後の「精密調査」では地下に調査用の施設を建てて岩盤や地下水の特性などを調べ、処分施設の建設に適した場所を絞り込んでいきます。

各調査を終えて次の段階に進もうという場合には、法律に基づいて都道府県知事や市町村長の意見を確認します。意見に反して次の調査や処分地選定に進むことはありません。

2020年11月からは、地層処分に関する初の文献調査が北海道の寿都すっつ町と神恵内かもえない村で行われています。

NUMO・事業者の活動等も強化

今回国が掲げた方針では、最終処分の実現に向けた国主導での国民理解の促進や自治体等への主体的な働きかけを抜本強化するために、文献調査受け入れ自治体等に対する国を挙げての支援体制の構築、実施主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)の体制強化、国と関係自治体との協議の場の設置、関心地域への国からの段階的な申入れ等の具体化を進めることとされました。また、これを受け、GX実行会議翌日の12月23日に開催された「最終処分関係閣僚会議」でも、最終処分実現へのプロセス加速に向け、これまで以上に国が前面に立った取り組みを進めるとともに、NUMO・事業者の機能・活動をより一層強化していくことが示されており、今後、具体的な取り組み策定に向けた検討が進められる予定です。

私たち原子力発電事業者としても、地域の皆さまとの対話活動等を通じて、全国のできるだけ多くの皆さまのご関心やご理解が深まるよう取り組んでいるところであり、国の検討状況などを踏まえながら、より一層国やNUMOと連携しつつ、文献調査の実施地域の拡大に向けて取り組んでまいります。

  • NUMOでは、全国各地で行われる「対話型全国説明会」の開催や地層処分に関する勉強会・見学会開催などを支援する「学習支援事業」、地層処分展示車「ジオ・ラボ号」のイベント出展などを行っています。実施概要や申し込み方法はNUMO公式ホームページでご確認いただけます。

    NUMO公式ホームページへはこちら
    https://www.numo.or.jp/

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    ジオ・ラボ号出展の様子 提供:NUMO

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