FOCUS1

2024.03

能登半島地震で大規模被害
停電復旧は1月中におおむね完了

2024年1月1日に石川県能登地方で発生した令和6年能登半島地震の影響で、北陸電力送配電管内では最大約4万戸の停電が発生。電柱約2160本が傾き、約500本が折れ、さらに約1210カ所で配電線の断線や混線が確認されました(2月1日時点)。特に石川県輪島市や珠洲市などの地域では、土砂崩れや地割れなどによる道路の寸断も復旧作業の障害となり、停電が長期化する事態になりました。

停電復旧に際しては、北陸電力送配電に加え、電力各社(一般送配電事業者、協力会社など)から延べ4754人の応援要員および高圧発電機車や高所作業車といった作業車両を派遣するなど、一丸となって対応に当たりました。

全国の一般送配電事業者10社は、2019年の台風15号・台風19号などにおける停電長期化の検証を踏まえ、相互に災害復旧応援を行うことを定めた「災害時連携計画」を2020年に策定しており、復旧方針などを統一して復旧作業に当たることを明確にしています。

災害時連携計画に基づく各社の応援派遣もあり、1月末までに停電戸数は約2500戸まで減少。土砂崩れなどで立ち入りが困難な箇所、地震・津波・火災によって建物に甚大な被害を受けるなどして早期の復旧が見通せない一部地域を除き、おおむね復旧を完了することができました。依然として停電が継続しているエリアについても、自治体や関係各所と連携しつつ、着実に復旧を進めています。

今回の地震では、北陸電力七尾大田火力発電所などの発電設備でも大きな被害が発生しました(志賀原子力発電所への影響についてはこちら)。

北陸電力では、損傷箇所の復旧を進めるとともに、その他の発電設備や市場からの電力調達を活用し、安定供給に必要な電力の確保に努めています。

我々電気事業者としましては、今後も最大の使命である「電力の安定供給」に全力で取り組んでまいります。

電力各社による応援内容

電力各社による応援内容 ※2月2日までの実績

  • 中国電力グループによる応援

    中国電力グループによる応援 提供:中国電力ネットワーク

  • 四国電力グループによる応援

    四国電力グループによる応援 提供:北陸電力

    東北電力グループによる応援

    東北電力グループによる応援 提供:東北電力ネットワーク

    九電グループによる応援

    九電グループによる応援 提供:九州電力送配電

復旧応援に参加して

築き上げた土台が力に

東京電力パワーグリッド 矢部 雅巳さん

  • 1月3日から1週間ほどの間、輪島市などの停電復旧に携わってきました。私は北陸電力送配電の復旧計画をお伺いした上で、東京電力パワーグリッドおよび協力会社の施工班の配置と各班の作業内容を立案・管理しました。
    地震直後で道路状況が厳しく、目的地の状況がなかなかつかめないという困難にも直面しましたが、北陸電力送配電の復旧方針に関する説明や指示は明確で、混乱なく作業に集中することができました。これも各社間で普段から安全に関する意見交換を行うといった土台があったからです。準備の大切さを胸に刻み、日々の業務に臨んでいきたいと思います。

  • 矢部 雅巳さん

    矢部 雅巳さん

希望のあかりで「恩返し」

東北電力ネットワーク 本田 暁久あきひささん

  • 今回の応援復旧で私は輪島市に派遣され、電柱の建て替えなどあらゆる配電設備の改修作業に当たりました。
    現地では多くの方々が電気の復旧を心待ちにしながら厳しい生活を送っておられましたが、作業を終えるたびに皆さんから感謝の言葉をいただいたことは忘れられません。
    東日本大震災で東北地方は多くの方々に助けて頂きました。今回の復旧に携わった我々は「今こそ、あの時の恩返しを」「少しでも早く希望のあかりを」という思いで、これまで培ってきた全てを作業に注ぎ込みました。被災地のために少しでも力になれたのであれば、嬉しい限りです。

  • 本田 暁久さん

    本田 暁久あきひささん

能登半島地震による志賀原子力発電所への影響について ~ご質問にお答えします~

令和6年能登半島地震により最大震度7(志賀町)を記録しましたが、志賀原子力発電所の止める・冷やす・閉じ込める機能は維持されており、安全性は確保されています。
本記事では、志賀原子力発電所に関する皆さまの疑問・不安にお答えします。

耐震安全性

Q運転中に能登半島地震と同規模の地震が発生した場合でも、発電所の耐震安全性は確保されているのですか。

  • 原子力発電所は、地盤を掘り下げて十分な支持性能を持った揺れにくい強固な岩盤に建設し、運転中の状態を含め、大規模な地震(基準地震動)が発生したとしても、安全機能(「止める」・「冷やす」・「閉じ込める」)を満足できる設計としております。
    また、福島第一原子力発電所の事故後には、自主的に実施した緊急安全対策に加え、新たな規制基準を踏まえ、地震・津波対策の強化や電源及び冷却設備などの多重化など、様々な追加対策を行っており、万が一、運転中に今回と同程度の地震が発生したとしても、発電所の安全性は確保されます。

    なお、一般建築物が建設される地表面に近い表層地盤の方が、原子力発電所が建設されている強固な岩盤よりも地震による揺れが大きく増幅されることから、志賀原子力発電所の岩盤面の揺れの大きさとして設定された現在の基準地震動(600ガル)と、表層地盤の上に設置する一般建築物の揺れの大きさ(ハウスメーカーが耐震実験を行っている約5000ガルなど)を単純に比較することはできません。

  • 一般の建物と原子力発電所での揺れの伝わり方の違い

    日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」をもとに作成

津波

Q「志賀原子力発電所に高さ約3mの津波が襲来した」との情報があるので不安です。

発電所の前面海域(防波堤と物揚場の間)の海底に設置していた波高計のデータを分析した結果、海面が約3m上昇と約1m下降していたことを確認しております。
発電所の敷地は標高11mにあり、さらに高さ4mの防潮堤、防潮壁を構築(標高15m)していることから、水位上昇による施設への影響はありません。また、補機冷却水の取水ポンプの吸込口は標高-6.2mにあることから、水位下降による取水への影響はありません。

志賀原子力発電所における海面の動き

北陸電力ホームページをもとに作成

外部電源

Q「志賀原子力発電所が外部電源の一部を失っている」との情報があるので不安です。

2号機主変圧器が使用できないことなどにより、志賀原子力発電所への外部電源5回線のうち2回線(志賀中能登線2回線)が使用できない状態にありますが、3回線(志賀原子力線2回線、赤住線)が使用可能です(2024年3月12日現在)。
また、福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえた電源の多様化により、従来から設置している非常用ディーゼル発電機に加え、大容量電源車及び高圧電源車も利用できる状態であることから、使用済燃料の冷却機能は維持され、原子力発電所の安全性は確保されております。

避難

Q能登半島地震では道路寸断や家屋倒壊などがあったので、もし、原子力事故があった場合に避難できるのか不安です。

避難計画は、国の防災基本計画などに基づいて各自治体が策定し、実効性向上のため、定期的な訓練などを通じた経験の蓄積や状況の変化に応じた体制の見直し、計画の評価・検証などを踏まえた改訂が行われています。原子力事業者も、住民避難を伴う災害が発生しないよう安全対策を確実に実施するとともに、各自治体の計画の実効性向上のため、訓練に積極的に参加するなど、今後も引き続き、避難計画の実効性向上に最大限協力してまいります。
なお、能登半島地震の被害状況を踏まえて、原子力規制委員会では、避難計画を策定する上での指針となる原子力災害対策指針について、屋内退避の対象範囲及び実施期間といった運用などの見直しが議論されています。

使用済燃料貯蔵プール

Q「志賀原子力発電所の使用済燃料貯蔵プールから放射性物質を含む水が飛散した」との情報があるので不安です。

1号機、2号機の使用済燃料貯蔵プール水が波打ち現象(スロッシング)により床面に飛散しましたが、プールの保有水量に対して微量であり使用済燃料の冷却機能への影響はなく、また発電所外部には漏えいしておりません。

参考|飛散量

●1号機(保有水量125万L)

約95L(プール水位低下量 0.8mm相当)、放射性物質の濃度 約180Bq/L

●2号機(保有水量231万L)

約326L(プール水位低下量 1.3mm相当)、放射性物質の濃度 約14Bq/L

※国内温泉との比較として、三朝温泉は9400Bq/L
出典:放射能と温泉 温泉科学(J. Hot Spring Sci.), 64, 388-401(2015)