• 世代・トレンド評論家(インフィニティ代表取締役)
  • 牛窪 恵氏Megumi Ushikubo
VOICE

2018.09

日常の「当たり前」から少し離れて
エネルギーのことを考えてみませんか

「福島で働く人たちを勇気づけてほしい」との依頼を受け、今春、東京電力HD福島第一原子力発電所で講演を行ったという牛窪恵さん。テレビなどで活躍する牛窪さんに、福島のこと、エネルギーのことについてお話を伺いました。

今年3月、福島第一原子力発電所で働く皆さんに、昨今のヒット商品・トレンドや、バブル世代からゆとり世代までの世代に関するお話、さらにエネルギーとの関わりについて講演を行いました。ひとつ例を挙げると、IoTやAIなど今流行っているものはほとんど電気と関係している、SNSなど友人や家族関係のつながりにも電気が介在しているといった内容です。

せっかくの機会でしたので、発電所内の視察もお願いしました。バスで構内を回って印象的だったのは、震災の当日に海抜17mまで津波が押し寄せた痕跡が残っていたことと、対照的に「よくぞここまで」と驚くほど敷地内が整えられていたことです。これまで発電所の中は報道の映像や写真でしか知りませんでしたが、「この場所を何とかしなければ」という社員や協力企業の皆さんの使命感と自負がなければ、到底成し得ない仕事だと感じました。子を持つ女性社員の方々の「福島に活気を取り戻したい」との情熱にも、感銘を受けました。

もちろん、原子力発電を今後どうするかについて賛否はあります。ただ、電気を使って便利な生活を享受している私たちも、福島で働くこうした人たちの存在や、エネルギーの大切さに思いを馳せることが必要ではないでしょうか。

この夏も西日本で豪雨災害がありましたが、大きな災害が起きると、普段は「あることが当たり前」と思っていたエネルギーやライフラインの重要性を再認識します。

最近はアウトドアやキャンプがブームです。学校の防災教育でも、キャンプのサバイバル術が災害時に役に立つということで、キャンプを通して防災技術を身に付けようという自治体もあるようです。先日もテレビの収録でキャンパーの方に火起こしを学びましたが、これがなかなか大変でした。お子さんたちにも、ぜひこうした体験をしてほしいと感じました。

また、一時期キャンドルナイトというイベントが流行しましたが、気候の良い時期に、キャンドルの炎だけで、電気のない夜を過ごしてみるのはどうでしょう。もちろんスマートフォンの電源はオフです。私はよく、「おひとりさま」の時間を大切にして、自分の内面と向き合ってくださいといったお話をします。いったん立ち止まって、私たちの生活を支えているもの、当たり前のように使える電気、エネルギーの大切さについて考えてみてはいかがでしょうか。

PROFILE

東京都生まれ。日本大学芸術学部卒業後、大手出版社入社。フリーライターとして独立後、2001年4月にマーケティング業務を中心に手がける有限会社インフィニティ設立。数多くのテレビ・ラジオ出演のほか、執筆活動、企業との商品開発に取り組む。著書多数で、トレンドを的確に捉えた「おひとりさま(マーケット)」「草食系(男子)」は新語・流行語大賞に最終ノミネート。現在はMBA取得に向け、立教大学大学院在学中。