太田電事連会長定例記者会見発言要旨
(1999年12月17日)



◎ 早いもので、今年も、余すところ2週間となった。 
エネルギー記者会の皆さま方には、6月の会長就任以来、不慣れな点をいろいろ助けていただいた。この場をお借りして、心からお礼を申し上げたい。

◎ 本日は、JCOの事故に加え、昨日になってBNFLのMOX燃料データに関わる不正が判明するなど、大変に厳しい一年であった。本日は今年最後の会見となるので、いろいろあったこの 1年を振り返ってみたいと思う。  

○ 今年の日本は、情報化、グローバル化が世界的規模で進むなかで、銀行の合併や、自動車メーカーの再建計画にみられるように、次の時代に生き残るための厳しいリストラの動きが顕著になってきた。 
 また、国においても、世界的な基準に合った金融、会計、税制等の整備や改正、公的年金改革や介護保険制度創設など効率的な社会保障システムづくり、あるいは行政組織のスリム化など、来るべき時代に備えた改革が進められている。

○ お手許の資料-1に、電気事業を巡るこの1年の動きをまと めてみたが、当然のことながら、こうした時代の流れや改革 の動きは電気事業にとっても例外ではない。 

○ ご承知のとおり、21世紀の電気事業をより効率的で競争的なものにしていこうと始まった国の電気事業審議会は、平成9年7月以来、2年半ものロングラン審議の結果来年の 3月21日から、新規参入者と電力会社、あるいは各電力会社同士で、販売電力量で約3割を占める特別高圧需要家のお客さまを巡り自由な競争がスタートすることになった。 

○ 自由競争という私どもにとって未経験の世界に足を踏み入れるわけで、いろいろと勉強しなければならないこともあるが、各社とも、消極的な守りの姿勢ではなく、競争を前向きにとらえて、お客さまのニーズにあった様々なメニューやサービスの充実、経営体質の強化等にこれまでにもまして取り組んでいく決意だ。

○ 新規参入者と電力会社、あるいは電力会社同士が知恵を出し、競争する。その結果、料金メニューやお客さまサービスが充実していくことは、ぜひとも必要であり大切なことだと考えている。 しかし、その一方で、エネルギー資源に大変乏しいということや、地球温暖化への対応に迫られていることなど、わが国が置かれている状況や基本的課題は、自由化が進んでも何ら変わることはない。

○ 今回の自由化が、様々な議論の末に特別高圧需要家を対象にした、いわゆる部分自由化となったのも、無資源国であるわが国のエネルギー事情や、日本の電気事業の特色、経済性の追求と公益的課題を両立させることの必要性など、日本にとって最も相応しい自由化スタイルを模索した結果である。
 私ども電力各社は、厳しい競争になるものと気持ちを引き締めているが、しかし、どのような競争環境であっても、経済性や効率性の追求と同時に、エネルギーセキュリティーの確保や地球環境問題への対応など、公益的課題の解決にも積極的に取り組んでまいりたいと考えている。

◎ つぎに、原子力を取り巻く状況についてであるが、今年は、今後の原子力の推進に大きな意味を持つ原子力長計の見直し作業が5年ぶりにスタートした。また、総合エネ調の原子力部会において、高レベル廃棄物や解体廃棄物処分の具体策について中間報告がまとめられたり、プルサーマル用のMOX燃料が福島第一原子力発電所、高浜原子力発電所に搬入されるなど、長年の課題の解決に向けた新たな動きが見られた。

○ そうした最中に、日本原電敦賀2号機の冷却水漏れ事故、JCO東海事業所、そして今回のMOX燃料データに関する不正などが相次いで発生した。
 とりわけJCOの事故については、私にとっても、電力業界にとっても今年1年で最も衝撃的な出来事であり、たびたび申し上げているとおり、原子力の平和利用に対する国民の皆さまの信頼をも失いかねない事態であると、大変深刻に受け止めている。

○ 今月9日には、原子力産業界の35の企業や研究機関が集まり「ニュークリア セイフティー ネットワーク」を設立した。検討開始から2か月と大変短い期間で設立することができたが、これも、原子力産業に携わる参加会員の危機感と、二度とこうした事故を起こすわけにはいかないという強い決意の現れだと感じている。
 肝心なのは器を作ることでなく、今後どれだけ実効ある活動を継続していけるかということである。「喉元すぎれば熱さ忘れる」というようなことが絶対にないよう、私どもとしてもNSネットの活動をできる限り支援してまいりたい。

○ また、極めて遺憾なことだが、昨日、関西電力高浜4号機のMOXデータに関するBNFLの不正が判明した。
 本日の社長会で、石川社長より、MOX燃料の使用を取りやめ、徹底した調査や対策を講じる旨お話しがあった。
 他のプルサーマル計画への影響も心配されるが、私ども、電力一丸となって、プルサーマル推進にご理解をいただけるよう、できるかぎりのことをしてまいりたい。

○ 本日昼に、小渕総理と私ども電気事業者との懇談があり、原子力を中心に電気事業全般にわたって意見交換をさせていただいた。 その概要については、先に殿塚専務の方からご報告させていただいた。
 その概要については、先に殿塚専務の方からご報告させていただいたが、席上、小渕総理から「わが国のエネルギーの安定確保や地球環境問題への対応を考えると、徹底した安全確保を前提に、引き続き原子力政策を進めていく重要性に変わりはない」とのお話があった。
 私どもとしても、エネルギー資源に乏しいわが国においては、問題や課題を一つ一つ解決し、何としても原子力発電および原子燃料サイクルを進めて行かねばならないと考えている。

○ 来年には、高レベル放射性廃棄物の処分について新法が制定され、秋頃には事業主体が設立される見通しだ。また、使用済み燃料の中間貯蔵の立地や、六ヶ所再処理工場に関する青森県との本格安全協定締結など課題が山積している。 道のりは大変険しいが、次の世代のためにも、原子力の推進に全力で取り組んでまいりたいと考えている。

◎ 最後に、国内景気について一言申し上げたい。
 今年の日本経済は、昨年からの公共投資や住宅減税など一連の国の対策により、出口がなかなか見いだせなかった景気にも、ようやく回復の兆しが見え始めた。

○ 本日まとまった、11月の販売電力量をご覧いただきたい。 
 景気と関連が深い産業用の大口電力を見ると、1頁の左下のとおり、景気低迷による生産調整の影響から、昨年1月以来今年の7月まで19か月連続で前年割れとなっていたが、8月にプラスに転じて以降、4か月連続で前年実績を上回り、11月は、10社合計で対前年比+3.3 %と上昇幅も拡大している。
 業種別にみても、1頁の右下のとおり、高い伸びとなっている鉄鋼(+4.7%)、電気機械(+5.4%)をはじめ、ほとんどの主要業種で前年実績を上回っており、前年実績を下回った業種の一部にも割れ幅の縮小が見られる。

○ 雇用情勢は依然として厳しく、また個人消費や民間設備投資なども低調であるなど、足腰に不安を残しているが、こうした電力需要の動きからみると、景気は底を脱し、回復の兆しが見えてきたといえる。

○ 来年は、さらに新生経済対策の効果も現れてくるだろうし、現在各企業が行っている厳しいリストラなどの成果も出てくるだろう。ぜひ、個人そして企業が活力と自信を取り戻し、新たな成長に向かって踏み出してもらいたいと願っている。

○ 最後になるが、この年末年始にはY2Kへの対応が控えている。エネルギー記者会の皆さんも、いろいろご対応が大変だと伺っている。 私ども電力各社も、残された時間で、情報連絡体制や待機体制などの再チェック等を行い、万全の体制で臨む所存であるので、よろしくお願いしたい。
 私からは以上。

以上