◎ 本日、私から申し上げたいことは2点。一つは、2000年度の電力の技術開発計画について。もう1点は、1999年度の電力需給について。
◎ まず、2000年度の電力の技術開発計画のうち、電力が共同で取り組む主要課題について取りまとめたので、ご報告したい。
○ 3月から小売の部分自由化や火力電源の全面入札がスタートしたが、各電力会社とも、厳しい競争を勝ち抜いていくため、技術開発の面においても、競争力強化やお客さまサービスを広げるための研究開発に、さらに積極的に取り組んでいく計画を立てている。
○ こうした競争力強化などの課題については、各社独自の研究が中心となってくる。
その一方で、
o 電力共通の課題である長期エネルギーセキュリティーの確保や地球温暖化対策など公益的使命を果たすためのもの、
o あるいは革新的技術開発のような、各社共通のニーズが あり、かつ開発に多くの費用や人材、期間を要するもの、
などについては、費用や実施上の効率化を図る観点から、今後とも業界全体で積極的に共同研究を進めていきたいと考えている。
具体的な課題については、お手許の資料-1をご覧いただきたい。
○ 例えば、「エネルギーセキュリティーの確保や地球環境保全のための技術開発」としては、原子燃料サイクル確立に向けたウラン濃縮や再処理、あるいはMOX燃料加工技術の研究開発などを今後とも進めてまいりたいと考えている。 さらには、石炭利用のための技術開発として、高い発電効率(送電端48%)が期待でき、環境特性にも優れている「石炭ガス化複合発電(IGCC)」などの開発にも引き続き力を入れてまいりたいと考えている。
○ また、21世紀に向けた「革新的な技術開発」としては、将来の火力電源の高効率化につながる「溶融炭酸塩型燃料電池」の開発や、機器のコンパクト化や軽量化、電力損失の低減などで大きな効果が期待できる、超電導技術の電力機器への応用についても、長期的な観点から積極的に取り組んでまいりたいと考えている。
○ なお、以上のような電力の共同研究に関する費用としては、今年度247億円を予定しているが、より一層の効率化やコストダウンを図るため、電力中央研究所を積極的に活用するほか、公益的課題や革新的な技術開発については、国の積極的な支援や取り組みを求めていきたいと考えている。 また、実施にあたっては、適宜、技術課題の達成状況や関連技術の動向などを踏まえて中間的な評価を行ない、研究テーマの絞り込みや新規追加など計画を見直し、より効率的な開発投資を心がけたいと考えている。
○ 電力市場での自由化が進展しているアメリカなどでは、電力会社が、技術開発投資そのものを後回しにしたり、短期的に成果が期待されるものばかりを優先させる傾向にあるようだ。 そうした影響は、すぐには見えないが、長期的に見ればいろいろと問題が出てくるのではないかと思う。 私どもは、そうしたことがないよう、競争が進むなかでも、わが国の将来にとって欠かすことのできないエネルギー源の多様化や地球環境保全などの技術開発については、今後も変わることなく使命を果たしてまいりたいと考えている。
◎ つぎに、1999年度の電力需給について申し上げたい。
○ 本日、昨年度の各社の発受電速報の集計がまとまった。 既に皆さんご覧になられたと思うが、昨年度の発受電電力量は、
o 上期を中心に産業用需要の不振などを反映して伸び悩みが見られたものの、下期以降は産業用需要が回復基調に転じたことや、
o 東日本を中心とした夏場の高気温の影響で冷房需要が増加したことなどから、
昨年8月以降今年3月までの伸び率は、8か月連続で対前年プラスとなり、年間を通じてもプラス2.0%(うるう年補正後1.7%)とまずまずの伸びとなった。
○ また、10社合計(合成)の最大電力需要であるが、お手許の資料-2のとおり、昨年の夏もキロワットは伸びず、95年の夏(1億7,113万kW)以来、実に4年間も記録を更新していない。各社別に見ても、昨年夏に更新をしたところは、北海道、東北、北陸の3社のみである。 その一方で、年間電力量すなわちキロワットアワーについては、毎年着実に記録を更新している。 なお、ピークが伸びずに、キロワットアワーが伸びると、設備の有効活用につながり負荷率が改善するが、99年度の年負荷率は98年度に比べて約1%、また最大電力が更新されていないこの4年間で4%向上している。
○ ちなみに、1999年度の販売電力量については、現在集計作業中であり、数字も確定していないが、仮集計の内容を申し上げると、10社の電灯・電力の販売電力量の伸びは2%を上回り、発受電電力量の数字とほぼ一致するものと見込んでいる。
○ 内訳についてみると、電灯などの民生用需要は、東日本を中心とした冷房需要の増加などから、前年に比べ3%程度の比較的堅調な伸びとなる見込みである。
○ また、景気動向と関連の深い産業用の大口電力についても、下期以降、鉄鋼・紙パルプ・電気機械などの主要業種が高い伸びで推移していることなどから、この3月も5%程度の高めの伸びになるものと見込んでおり、昨年8月以来8か月連続で前年実績を上回り、景気回復に向けた動きが続いていると考えられる。 この結果、99年度を通じての大口電力は、上期を中心に産業用需要の不振などを反映した伸び悩みがあったものの、全体としては前年度を1%程度上回るものと見込んでいる。
○ 最後に、供給面からの特徴点として、原子力発電の設備利用率について紹介したい。
○ 99年度の日本原電を含めた設備利用率は80.1%となった。 敦賀2号機や東海第2発電所のトラブルの影響もあり、残念ながら過去最高であった98年度の利用率(84.2%)を4%程度下回ってしまったものの、グラフにあるとおり5年連続で80%を上回る高水準となった。 これは、作業効率の向上などによる定期検査期間の短縮や安全運転への日々の取り組みなど、各社の地道な努力の結果だと思う。
○ 原子力の年間設備利用率が1%向上すると、100万kWの石油火力(利用率50%)を10か月程度運転できる、約90万klもの燃料が節約できる。 その分、CO2の排出量も、電気事業全体の排出量の1%にあたる約300万トン減らすことができ、また100億円以上のコストダウンにもなる。
○ このように、私どもにとって、原子力発電の稼働率向上は大変重要なテーマであり、安全を最優先に、今後とも現在の稼働率をさらに向上できるよう取り組んでまいりたい。
○ 私からは以上。
参考資料
・2000年3月の発受電速報
・1999年度下期の発受電速報
・1999年度の発受電速報