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放射線はどのようなものですか?また、なぜ放射線があるのですか?
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不安定な原子核が、より安定な原子核になる時に余分なエネルギーを放出します。このエネルギーが放射線です。このような原子核はある割合で自然界にも存在しています。
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私たちの身の周りにも放射線はあるのですか?
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地球には絶え間なく宇宙から放射線(宇宙線)がふりそそぎ、地球上の大気や、岩石・土の鉱物に含まれる放射性物質からも放射線が放出されています。また、私たちが口にする食品や水にも必ず微量の放射性物質が含まれており、放射線が放出されています。こうした放射線を自然放射線と呼び、日本人であれば、年間平均で約2.1mSvの量の放射線を受けています。
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ベクレルとシーベルトの換算はどのように行うのでしょうか?
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ベクレルは放射性物質が放射線を放出する能力を表します。一方シーベルトは人体が放射線で受けた影響の度合いを示す単位です。同じベクレル数であっても、放射性物質ごとに放出されるエネルギーが異なり、体内での挙動も異なることから、人体に与える影響の度合い(シーベルト)が異なります。従って、放射性物質の種類やどこから人体に取り込むかで換算係数が異なります。
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五感で感じることのできない放射線はどのようにして測ることができるのですか?
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放射線と物質の間には、電離作用や蛍光作用などの相互作用が起こります。電離作用は原子中の電子をはじき飛ばす働きで、蛍光作用は放射線が物質に当たる際に光を発する働きです。放射線測定器はこれらの物理的な相互作用を利用することで、放射線を測定ができます。
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生活環境や産業で、放射線(放射性物質)はどのように利用されているのですか?
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人工放射線は医療・工場・農業などさまざまな場面で利用され、わたしたちの生活にとても役立っています。医療では、病院でのX線検査や病気の診断、がん治療など。工業では、半導体加工や厚みの測定・化学分析、非破壊検査、溶接検査など。農業では、品種改良や化学薬剤を使わない害虫駆除、食品の保存などに利用されています。
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放射線は人体にどのような影響があるのですか?
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人間の細胞の中の遺伝子(DNA)に作用し、損傷を与えます。損傷の程度により、異常細胞(がん細胞)が生まれたり、細胞そのものを殺したりすることがあります。一方で細胞には修復機能も備わっており、損傷がそのまま残らす、もとの状態にもどることもあります。同じ線量でも成人と比べると成長過程にある子供のほうが、細胞分裂は活発であるため、放射線に対する感受性が高くなります。
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外部被ばくと内部被ばくの影響の違いは何ですか?
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同じ放射性物質の量(ベクレル、Bq)であれば、体の外部にあるときと内部にあるときで影響が違います。外部被ばくでは人体を透過するガンマ線だけの影響ですが、内部被ばくの場合は、ガンマ線に加えて飛ぶ力の弱いアルファ線やベータ線の影響を受ける場合があるので、それらの影響も考える必要があります。また、臓器により放射性物質の蓄積のしやすさが違います。このようなさまざまな影響を考慮して評価された内部被ばくの実効線量(シーベルト、Sv)が外部被ばくの実効線量と同じであれば、影響の大きさは同じです。
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放射性物質の違いによる人体への影響はあるのですか?
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放射性物質が違うと、放出される放射線の種類、そのエネルギーが異なります。放射性物質の種類によって集積しやすい臓器も異なります。その影響を評価するために、人体への影響の度合いをシーベルト(Sv)という単位で統一された指標に換算しています。
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自然界の放射線と人工の放射線では身体への影響が異なるのでしょうか?
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放射線は自然界に元来から存在する放射性物質(40K、222Rnなど)から放出される自然放射線と、原子炉内などで人為的に生成された放射性物質から放出される人工放射線に分類できます。自然放射線と人工放射線は、放射線の発生源が自然のものか人工なものかによる違いであり、放射線の性質は同じです。従って、シーベルトという単位で比べれば、自然放射線も人工放射線も同じ土俵で評価出来ます。
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放射線による人体への影響はどのようなものですか?影響は蓄積されるのですか?
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放射線はDNAに損傷を与え、異常な細胞(がん細胞)が生じたり、細胞が死んだりします。一度に(まとめて)100~150mSvを超えると発がん率が上昇することがわかっています。また、250mSvを超える大量な被ばくで白血球の減少や脱毛などの現象が認められます。つまり100mSv未満では、放射線による影響(発がんリスク増加)は確認されていません。ゆっくりと(少しずつ)被ばくした場合は、一度に(短時間に)被ばくした場合と比べ影響が小さくなります。これは細胞にはDNAが損傷しても修復する能力が備わっているためです。なお、これまでの疫学的調査からは、放射線による子や孫への遺伝的な影響は確認されていません。
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どれくらい被ばくするとがんになるのですか?
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放射線の影響は染色体内のDNAに損傷を与え、異常な細胞(がん細胞)が生まれ発がんすることがあり、一度に(まとめて)100~150mSvを超えると発がん率が上昇することがわかっています。これは確率的影響と呼ばれています。がんは放射線以外に、化学物質やウィルス、紫外線で発生することが認められており、国立がん研究センターより、生活習慣と放射線によって発がんする相対リスクが報告されています。例えば野菜不足によるリスクは150~200mSvの被ばくによるリスクに相当します。また喫煙や毎日3合以上の飲酒は2,000mSvの被ばくに相当します。
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放射線は微量でも害がありますか?
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放射線防護を検討する国際的な組織「国際放射線防護委員会(ICRP)」では放射線防護・安全の立場から、どんなに少ない放射線でも放射線を受けると影響を生じる可能性があるという非常に慎重な仮定で検討されています。しかし、放射線を受けた量に応じて影響の割合が増加する可能性があるという意味で、実際上影響を考える必要がある放射線の量は、広島・長崎の原爆被爆生存者調査などからはっきりとわかっているように、数百mSvという大きな線量の場合であって、100mSvよりも低い線量を受けた被ばく者には、がんなどの発生について有意な増加は認められていません。