電気の品質保つ揚水発電 北海道電力 京極発電所

vol.15

純揚水式の水力発電所である北海道電力 京極発電所1号機(北海道京極町、20万kW)が2014年10月1日に運転を開始しました。

上部調整池(左上)と京極ダム調整池(右下)

上部調整池(左上)と京極ダム調整池(右下)

京極発電所は、山間部に標高差のある2つの人工池を造成し、上部調整池から下部調整池となる京極ダム調整池までの落差約400mを利用して発電を行います。巨大なすり鉢状の上部調整池は、札幌ドーム約3杯分に相当する440万m3を貯水することができます。電力需要の少ない時間帯に京極ダム調整池から水をくみ上げておき、電力需要の多い時間帯に京極ダム調整池に落として発電します。電気の使用量が増える冬の北海道において安定供給に貢献する貴重な電源です。

京極ダム調整池

京極ダム調整池

また、刻々と変動する電力需要に対し系統の周波数を一定に保つよう柔軟に運転調整ができる可変速揚水発電システムの採用や、周波数が急激に変化した場合に自動的に発電を開始して周波数を調整する緊急起動機能を備えていることも大きな特徴です。太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入量が増えると、天候の変化で著しい供給力の変動が生じますが、そうした変動への対応が可能となり、電力品質の維持に大きく寄与します。

巨大な地下空間にある発電所

巨大な地下空間にある発電所

京極発電所では、土木工事はすでに完了し、2号機および3号機(各20万kW)の電気工事が進められています。地下深く、12万m3もの掘削によって造り出した高さ45.8m、幅24m、長さ141mもの巨大空間である地下発電所で、2号機はポンプ水車や発電電動機などの工事が本格化しており、10月末には発電電動機の心臓部である回転子コイルの吊り込みも完了しました。また、可変速を実現する特殊な電気機器である励磁装置などの設置はも完了しています。今後、ポンプ水車・発電電動機の工事を進め、試運転を経て、2015年12月の運転開始を予定しています。また、3号機については今後の電力需要の動向を見極めながら工事を進め、2024年度以降の運転開始を目指します。

工事が進む2号機のポンプ水車上部

工事が進む2号機のポンプ水車上部

吊り込み前の2号機回転子コイル

吊り込み前の2号機回転子コイル

着工から13年を経て、運転開始を迎えた京極発電所。冬の過酷な豪雪にも負けず、最新の技術と現場の努力や工夫で幾多の課題を克服してきました。京極発電所の活用によって、北海道に張り巡らされた電力系統の周波数や電圧を一定に保つことが可能となり、高品質な電力供給に向け重要な役割を果たしていきます。

※揚水式は、発電所の上部、下部に大きな池(調整池)を持ち、電力需要の少ない時に下部調整池から上部調整池へ水をくみ上げておき、逆に電力需要の多いときに水を落として発電します。このうち純揚水式は、上部調整池へ河川からの自然流入がなく、下部調整池からくみ上げた水だけで発電する方式です。