エネルギーの選択 私たちの基本的な考え

特別号2012 vol.01

「エネルギー・環境に関する選択肢」をもとにした国民的議論が行われています

政府は、東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、わが国のエネルギー政策の見直しを行っています。今年6月には、2030年のエネルギー・環境に関する3つの選択肢(原子力比率:(1)ゼロ、(2)15%、(3)20~25%の各シナリオ)を取りまとめました。
現在、広く国民の皆さまからご意見を募る「国民的議論」が行われており、これを礎として、8月にエネルギー政策の大きな方向を定める革新的エネルギー・環境戦略が決定されます。

歴史に学び、多様なエネルギーを確保

私ども電気事業者は、安全確保を大前提に、安定的で低廉な電力供給を通じて、わが国の経済発展ならびに国民生活水準の維持向上に貢献することが最大の使命と考えています。
エネルギー自給率が4%と極めて低く、原油価格の高騰や化石燃料調達の特定地域への依存など、さまざまなリスクに直面しているわが国においては、安全確保を前提に、エネルギーの安定供給、環境保全、経済性という3つの「E」の同時達成を目指すことが極めて重要です。
わが国は2度のオイルショックの経験から、これまで特定のエネルギーに依存せず、多様なエネルギーをバランスよく組み合わせることで、安定したエネルギー基盤の構築に努めてきました。
将来のエネルギーミックスを考えるにあたっては、再生可能エネルギーを最大限活用することはもちろん、コストや燃料調達の安定性などを踏まえ、火力発電の燃料をバランス良く組み合わせるとともに、安全確保を前提に、原子力発電を今後も一定の割合で活用していくことが大切であると考えています。

  • 出典 : ENERGY BALANCE OF OECD COUNTRIES,2011/ENERGY BALANCE OF NON-OECD COUNTRIES,2011

実現可能性に大きな疑問

今回示された選択肢では、再生可能エネルギーの導入と省エネルギーの推進について、いずれのシナリオも野心的な目標を掲げる現行の「エネルギー基本計画」をさらに上回る想定となっています。
再生可能エネルギーについては、エネルギーセキュリティーや地球温暖化対策の観点から事業者として最大限取り組んでまいりますが、技術的・立地的な導入可能性やコストを踏まえれば実現可能性に大きな疑問を感じます。省エネについても同様です。今回のシナリオでは実質GDPが2割伸びるのに対し電力需要は1割減少しており、省エネが達成できなければ電力不足となる恐れがあります。
また、経済への影響についても、2030年における家庭用の電気料金が現状から最大約2倍に上昇すると試算されるなど、家計・産業への負担が増え、企業の海外移転が進む懸念があります。

  • 出典 : エネルギー・環境会議資料をもとに作成

少なくとも20~25%シナリオが必要

こうした観点から、いずれの選択肢についても、わが国の経済成長および国民生活に与える影響は極めて大きく、解決すべき課題が多いと言わざるをえませんが、今回示された3つの選択肢の中では、安全確保を大前提に、原子力比率で言えば少なくとも「20~25%」シナリオが必要な水準であると考えています。また、選択肢に示された長期見通しには不確実性があり、再生可能エネルギーの導入がどの程度進んだのか、国民負担がどの位になったのかなどを定期的にチェック&レビューし、適切に見直していくことが重要と考えます。
あらゆるエネルギーには長所と短所があり、完璧なエネルギーは存在しません。また、電源は必要な時にすぐ確保できるものではなく、計画から運転まで長い期間を要しますので、この点も考慮しなければなりません。将来に向けて、エネルギーの多様なオプションを残しておくことは、資源の少ないわが国にとって大切なことです。わが国の将来に責任あるエネルギー政策の策定が必要です。

3つのシナリオの比較

  • ※電気代は2人以上世帯の平均。
  • ※電気代とGDPは、4分析機関の試算の上限と下限。この試算結果は、モデルの想定や前提条件により大きく変わりうる。
  • ※自然体ケースの経済成長等のマクロ経済条件は、事務局で設定した慎重シナリオ(2010年代1.1%、2020年代 0.8%の実質GDP成長率)の想定に基づく。
    自然体ケースから各シナリオでの押し下げ額を差し引いたものを、表中に実質GDPの推計値として示している。
  • 出典 :エネルギー・環境会議パンフレットをもとに作成

エネルギー・環境問題は、今を生きる私たちと
将来を担う次の世代にとって重要な課題の一つです。
より多くの方に関心を持っていただき、議論を深める事が大切です。