FOCUS

2019.08

2020年4月の送配電部門の法的分離に
向け、適切に準備を進めています

電力各社は、2020年4月に送配電部門の法的分離を控えています。法的分離は、一連の電力システム改革の最終段階。国はこの法的分離前のタイミングで、電力システム改革の進捗状況を検証しました。その結果、法的分離の準備は着実に進んでいるとされました。

国の検証内容について

2015年6月に成立した改正電気事業法は、電力システム改革の進捗状況について、①2016年4月の小売全面自由化前、②2020年4月の送配電部門の法的分離前、③法的分離後――の各段階で検証を行うと定めています。検証項目は、▽電気料金の水準▽電力需給の状況▽エネルギー基本計画で掲げた諸施策の実施状況――など。検証結果を踏まえ、必要に応じ改善措置が講じられることになっています。

2019年5月に開かれた総合資源エネルギー調査会(経済産業大臣の諮問機関)の電力・ガス基本政策小委員会では、②の法的分離前の検証結果を公表。法的分離に向けた事業者の準備は着実に進んでいるとし、予定通り2020年4月に法的分離を行う方針が示されました。

今回の検証では、電気料金の水準について、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)の賦課金や原子力発電所の停止に伴う燃料費の増大といった要因の影響を除けば、「低下傾向」にあると指摘(下図青字部分参照)。引き続き、原子力発電所の再稼働などに取り組むとともに、FITの賦課金の抑制に向けた対応を進めるとしました。

電力需給の状況については、2019年度夏も安定供給に最低限必要な予備力が確保できることが示されました。さらに、地域間連系線の増強や(下図参照)、昨年の一連の災害を踏まえたレジリエンス強化など、中長期的な供給確保の取り組みも進めることで、今後も必要な供給予備率を確保できるとの見通しが示されました。

エネルギー基本計画に基づく施策の実施状況については、中長期的な供給力・調整力を確保するための「容量市場」や、電源の環境価値を取引する「非化石価値取引市場」、調整力を広域的に調達運用することで、需給調整の効率化を図る「需給調整市場」の創設など制度整備を着実に進めるとされました。

電力10社における電気料金平均単価の推移(家庭用・産業用の全体平均)

出所:経済産業省資源エネルギー庁 資料「第3弾改正法施行前検証について」を基に作成

中長期的な安定供給に向けて

電力システム改革が進む中で今後も安定供給を維持していくため、私ども電気事業連合会では、発電、送配電、小売など全ての事業者がそれぞれの役割を適切に果たすことが重要だと考えています。電力各社は、法的分離後も安定供給を損なうことがないよう、適切な組織体制の構築などの準備を着実に進めています。その一方で、送配電ネットワークを次世代型のものに転換し、電力レジリエンスの強化や再生可能エネルギーの導入促進、広域的な取引の拡大などを進めるためには、託送料金制度の抜本的な見直しなどによって適切な投資が行える環境を整備していくことが必要です。

さらに、安定供給のため中長期的に必要となる電源を確保・維持していくこともきわめて重要な課題です。事業者の電源に対する投資・維持インセンティブが適正に確保されるよう、慎重に検討いただきたいと考えています。

原子力発電に関しては、安定供給や脱炭素社会を実現する上で重要なベースロード電源であることに変わりはありません。一日も早い再稼働と安定運転を目指し、引き続き、新規制基準適合性審査に全力で対応するとともに、人材育成や技術開発を強化しつつ、安全性や経済性の追求に絶えず挑戦してまいります。また、今後も、2030年のエネルギーミックスの実現等に向けて、国レベルで原子力の事業環境の在り方について検討が進められるものと考えており、競争が進展した環境下においても、事業者の経営判断として、原子力を選択できる状況になることが必要と考えています。国においては、現行のエネルギー基本計画の記載を踏まえた2050年のエネルギー政策の具体的な目標と、それに向けた道筋を描いていただきたいと考えています。

地域関連系線の増強計画

出所:経済産業省資源エネルギー庁 資料「第3弾改正法施行前検証について」を基に作成

  • 電気事業連合会 会長
  • 岩根 茂樹Shigeki Iwane

就任のごあいさつ

このたび電気事業連合会会長を拝命いたしました。原子力発電の信頼回復や早期の再稼働、廃炉、原子燃料サイクル、電力システム改革、地球温暖化対策など、今後も様々な課題が山積する中で、大役を務めることになり、その責任の重さに身の引き締まる思いです。

将来の新増設・リプレースに備える

原子力に関しましては、引き続き、一日も早い再稼働に向けて、新規制基準適合性審査に真摯に対応するとともに、自主的かつ継続的な安全性確保に取り組んでまいります。これらの取り組みについては、社会の皆様にしっかりとご説信頼明し、ご理解を深めていただくことで、信頼回復に努めてまいります。

また、エネルギー基本計画において原子力が実用段階にある脱炭素化の選択肢と位置づけられていることを踏まえ、人材育成や技術開発を強化しつつ、安全性や経済性の追求に絶えず挑戦することで、将来の新増設・リプレースにも備えてまいります。加えて、原子燃料サイクルや廃炉といった原子力事業者共通の課題につきましても、関係事業者間の連携を深め、知恵を出し合いながら取り組んでまいります。

S+3E実現へ積極協力

一方で、中長期的に必要な電源を確保・維持するための新たな市場整備や、送配電ネットワークの次世代化に向けた託送料金制度の見直しの議論が進められておりますが、電源とネットワークのそれぞれにおいて適切な投資が行える環境を早急に整備することが不可欠と考えております。将来にわたり、「S+3E」(安全性を前提としたエネルギーの安定供給、経済効率性、環境への適合)を実現していくためにも、これらの検討には積極的に協力してまいります。

今後、電力各社と力を合わせてこうした諸課題を少しでも解決し、電気事業の発展を通じてわが国の経済や国民生活の向上に貢献できるよう、微力ながら全身全霊で取り組んでまいる所存です。どうぞよろしくお願いいたします。

PROFILE

京大法学部卒、1976年関西電力入社。執行役員・企画室長、常務、副社長を経て、2016年6月から社長を務める。勝野哲前会長(中部電力社長)の後を引き継ぎ、2019年6月14日付で電気事業連合会会長に就任した。